岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

今日の写真はシソ科イヌゴマ属の多年草「イヌゴマ (犬胡麻)」 / チョロギの話し

2010-10-04 04:48:35 | Weblog
 (今日の写真はシソ科イヌゴマ属の多年草「イヌゴマ (犬胡麻)」だ。
先ずはこの名前のことから考えてみよう。「イヌツゲ」というモチノキ科モチノキ属の常緑低木がある。この名の由来は、葉が「櫛」を作る「柘植(つげ)」に似ていることによる。「イヌツゲ」の「イヌ」というのは「劣る・下等」という意味だ。つまり、「ツゲに似ているが材としては『柘植』に劣る、用を足さない」ということだ。
 「イヌゴマ」も同じ用法で、「イヌ」は犬ではなく「否」の「イヌ」ということで「役にたたない」という意味と「種子」が小さな胡麻に似ていることによっている。

 「イヌゴマ」は北海道、本州、四国、九州に分布する。かなり湿ったところが好きらしく、日当たりのいい湿った草地などに群生している。人々から極めて「雑草」扱いされる花で、「歩み」を止めて、眺めたり愛でたりする者は殆どいない。たまに、奇特な人がいて、茎に触れたりすると四角い茎に生えている「棘」に戦き、その場限りで遠のき、二度と顧みられることはない。

 そのような「人目に触れることの少ない」花であるから、少し詳しく説明しようと思う。
 花期は7月から8月にかけてであるが、9月に入っても咲いているものもある。
茎先の穂状花序に、長さ約1.5cmの淡紅色で6個~10個程度の花を数段輪生状につける。花冠は上唇と下唇からなる唇形で、上唇はかぶと状、下唇は3裂し、紅紫色の斑紋がある。
 雄しべの花糸は薄紫で先端側はかなり濃い。前に見える雄しべの方が先きに熟するようで傷むのも早いようだ。
 雌しべは雄しべより後ろにあるため、雄しべが寄り添って立っている頃にはあまり見えない。前側の雄しべが少し傷んできた頃に雌しべが前に少し倒れてきて柱頭が目立つようになっている。柱頭は白く、2つに小さく割れる。萼はきれいな星型で整っている。
 徐々に花序間が間延びするが、各花序内で同時に咲いているものは8割程度になっていることが多い。花の色は「赤紫」が基本だが「渋い赤紫」から「明るい赤紫」、「淡い赤紫」と変異が多種である。
 茎の高さは40cmから70cmだ。茎は四角で、稜状に棘状の下向きに伏した毛がまばらに生えている。節部分は濃い紫褐色に染まり、白い毛が多い。質は丈夫で、直立しているが、節間が8cm程度と結構長いので、全体的に「ひょろっ」とした感じがする。
 葉はかなり丈夫で、対生し細くほぼ等幅の硬い葉は横に突き出している。狭披針形から線状楕円形で、葉縁には鋸歯がある。基部は心形で中部までは短いもののはっきりした葉柄がある。裏面の主脈上は棘状になった硬めの毛が生える。
 「イヌゴマ」には変異が多いとされている。「茎、葉、萼、花冠の毛が少ないタイプ」、「茎、葉、萼、花冠に毛が目立つタイプ」、「葉の縁にも毛が目立つタイプ」、「茎、萼が赤くなるタイプ」などがそれである。
 また、「全体に粗い毛が目立つ種をエゾイヌゴマ」として区別しているのである。岩木山では、本種の他に「エゾイヌゴマ(蝦夷犬胡麻)」を確認しているが、「シラゲイヌゴマ(白毛犬胡麻)」の確認はまだである。)

◇◇ チョロギの話し ◇◇

 「イヌゴマ」の別名を「チョロギダマシ」という。これは、「役に立たないチョロギ」という意味である。「役に立たない胡麻」とか「役に立たない草石蚕(チョロギ)」などと、ここまで言われたら人間だった怒るに違いない。
詳しく言うと「花の姿かたちが正月のおせち料理に使われるチョロギに似ているが、塊根がチョロギのようには食べられないのでチョロギダマシとも呼ばれる」ということである。

「チョロギ(草石蚕)」とはシソ科カッコウソウ属の多年草である。中国原産で、茎長が約60cm。茎は四角で、全株に粗毛を生じ、夏から秋にかけて紅紫色の唇形花を総状に開く。 晩夏に地下に生ずる塊茎は食用で、正月のお節料理に用いるのだ。この「塊茎・根茎」
は、巻貝のような独特の形をしている。この塊茎を梅酢に漬けておくと美しい紅色を呈する。これを正月の重詰の彩りに用いるのである。もちろん食べられる。
 「チョロギ」は「チョロギダマシ」と違って、人々から結構親しまれているようで、俳句の世界にも、しばしば登場する。
・紅ちよろぎ箸にはさめば君美し (山口青邨)
・めでたさはちよろぎの紅の縒(よぢ)れかな (梅村すみを)
…などがそれである。
 漢字表記「草石蚕」は、その形がトビケラ類の幼虫の石蚕(いさご)の腹を思わせることからだと言われている。そう言われれば似ていないこともない。音読みで、「丁呂木」「丁梠木」などと書かれたりもする。
 祝い事の際に食べる場合には、縁起をかついで「長老木」「長老喜」「長老貴」「千代呂木」などと書かれることもあるらしい。だが、元来は中国語の「朝露葱」を日本語読みにしたものであろう。

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