岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

ヤチハンノキの果実 / 「生物多様性」の考える前に「生物多様文化性」を…(3)

2010-10-08 04:56:03 | Weblog
 (今日の写真は、カバノキ科ハンノキ属の落葉樹「ヤチハンノキ(谷地榛の木)」である。実は、「ヤチハンノキ」全体を写したくて撮ったものではなく、所々に見える「果実」の大きさに惹かれて写したものである。1ヶ月ほど前の写真である。
 「ヤチハンノキ」は原野の湿地にの多い落葉樹で、大きいものは高さが20mにもなるそうだが、これは7mほどであったから「若木」であろう。見て分かるとおり、葉は卵状長楕円形だ。長さは5~13cmで、鋸歯を持ち互生している。
 原野に雪が残る3月下旬から4月上旬に、枝先に花穂をつける。雄花は褐紫色の尻尾状で長さが4~8cm、枝先に下垂する。同じ枝の下側に、長さが約3~4mmで、紅紫色の雌花を控えめにつける。
 花は花粉を風に運んでもらう「風媒花」で、雄花の花穂は日を追って下に伸びて、黄色い花粉を飛ばし始める。
 この「ヤチハンノキ」の生えていたところは百沢・岳間の「環状線」途中から300mほど下った辺りである。上部が「スノーモービル」の走行用の敷地になっており、伐採されて更地同様の様相を呈し、ススキが繁茂している。
 どこからか、流れる水音が聞こえてきた。生い茂る草木によって遮られて「流れ」そのものは見えないが、近くに「沢」があるらしい。ひょっとすると「溜め池」状の「水溜まり」もあるかもしれない。
 「ハンノキ」類の学名は「水辺に栄える」というラテン語からきているそうだ。これは水に強く水辺に自生する樹木であることを示している。原野で「ハンノキ」の見られる場所は、水辺や湿原であることが多い。近くを探してみたが、「ミズナラ」は見つからなかった。水位の低い場所に育つ「ミズナラ」は「すみ分け」をしているのだろう。
 また、「ハンノキ」類は、根に根粒菌が共生していて、空気中の窒素を地中に固定することが出来る。そのため、「荒れ地や湿地を肥沃な大地に改良するパイオニア」と呼ばれている。後50年も経てば、この辺りも「ミズナラ」の林に変わるかも知れない。
 それにしても、何という大きさだろう。この「ヤチハンノキ」の果実たちは…。)

◇◇「マツタケ(松茸)」の持つ生物文化多様性(3)◇◇

(承前)…
 「生物文化多様性」から「マツタケ」をとらえると、次のようなことを挙げることが出来るだろう。
 …独特の香り、ずっしりとした歯ごたえ、「旬の一時しか味わえない」という希少価値などから「キノコの王様」、「秋の味覚の王様」と呼ばれることだろう。これは「食文化」の一側面である。「食文化」の事実としての「調理や調味法」には次ぎようなものがある。 香りと歯ごたえを最大限に生かした、炭火で焼く「奉書焼き」、エビやギンナンなどと一緒に煮出しダシ汁で加熱する「土瓶蒸し」、その他、「松茸ごはん」、「釜飯」などである。「マツタケ」が沢山あれば、「すき焼きに薄切りの松茸をたっぷりと入れる」という贅沢な食べ方もある。
 さて、会長から頂いた「我が家のマツタケ」はどのような「生物多様文化性」を辿ったであろうか。それは、「マツタケご飯」であった。家族3人が1回にたべる「」には1本で十分であった。残りの1本はどうなるか、「ベターハーフ」になることを期待したいものである。…

 林野庁の資料によると、「マツタケ」の国内生産量(採取出荷量)は、私が生まれた1941年には、12000トンと記録されているそうだ。これが、最盛期であったと記されている。 だが、その後減少し続け1998年には247トン、99年は147トン、2001年はわずか、79トンであったといわれている。
 そして、最近では市場流通量のほとんどが輸入品で占められ、中でも韓国や北朝鮮、中国(特に吉林省・雲南省・四川省)からの輸入が多い。加えて、北米からは別種の「マツタケ」までが輸入されているそうだ。
 だが、それらを含めて日本の「マツタケ」に似た「形ち・食味・香り」を持つキノコを、市場では一括して「マツタケ」として扱わうのだそうだ。
 人工栽培は出来ないが、「マツタケ」の香り成分である「マツタケオール」や「イソマツタケオール」の合成に成功している。永谷園という食品メーカーが「松茸のお吸い物」として発売している商品がある。これは、「香り合成物質」を使い、入っているキノコも「シイタケ」という、全く本物の「マツタケ」とは縁もゆかりもないものである。
 このように、「生物多様性」が変化すると「生物多様文化性」もまた変化するのである。

 最近「マツタケ」ではないが、モエギタケ科クリタケ属の「クリタケ」と「ニガクリタケ」のことが話題になっている。「クリタケ」は食用になる「ナメコ」に似た食感のあるキノコだ。食用になる野生のキノコとしては有名であるが、問題なのは「毒キノコ」の「」ニガクリタケ」なのである。
 「クリタケ」と「ニガクリタケ」を比べると、見た目には「ニガクリタケ」の方が全体的に黄色い感じがするし、口に含むと苦い味がするのである。ちょっとだけ「ニガクリタケ」を口に含んでも「中毒」するということはない。
 このように「苦みと色で見分ける」のだが、よく初心者が間違って採取して、知人に配って連鎖中毒を起こすキノコである。ところが、最近は自称「プロのキノコ採り」であるとする人たちが「ニガクリタケ」を「クリタケ」として、販売店に持ち込む例が増えているのである。
 これは「生物多様性」から「生物多様文化性」へという「プロセス」に異変が起こっている証拠ではないだろうか。つまり、文化の伝承がうまくいかなくなっているということである。
 それは、祖父や祖母と孫が、あるいは親と子が一緒になって「キノコ」採りをしなくなったことを意味するのだろう。

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