岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

六ヶ所村から風船飛ばし事故が起きたら(2) / 6月18日東奥日報「弥生跡地」観察会取材記事(15)

2010-07-06 05:02:48 | Weblog
(今日の写真は、八甲田山周辺の衛星写真である。青い部分が海または湖沼である。上部が夏泊半島の突き出た陸奥湾、下部に見えるのは十和田湖、右端上部が鷹架沼、右端上部下が小川原湖だ。右端上部から小川原湖までが大体六ヶ所村となる。
 「ヤマセ(山背)」と呼ばれる東風に載せて飛ばした「風船」がどのような軌跡を辿って飛ぶのかこの写真で是非イメージしてほしいものである。
 夏泊半島の根っこから十和田湖までが延びているのが標高1585mの大岳を主峰とする八甲田山群である。これが、「ヤマセ」を遮り、津軽地方の農作物を守り、津軽地方の人々の命を守ってきたのである。「八甲田山地は津軽地方を『凶作と餓死』から救ってきた」のである。
 「東風」を私たちは「ヤマセ」ということがある。平安時代は「東風」を「こち」と呼んだ。「東風(こち)吹かばにおいおこせよ梅の花主なしとて春な忘れそ」という歌があるが、青森県を含む三陸海岸に吹き込む「東風」はそんなに生やさしいものではない。)

◇◇六ヶ所村から風船飛ばし・再処理事故が起きたら「放射能」はヤマセに乗って?(2)◇◇

(承前)…4日の「風船飛ばし」には、弘大の学生が10名参加した。教官や元教官もかなりの数で参加した。
 「ヤマセ」に載せて「風船を飛ばす」ということなのに、学生の中には「ヤマセ」のことを理解していない者もいた。
 私はこれまでの市民講座や学習会に参加して、六ヶ所村の核燃施設で何か起きたり、通常排出されている「放射性物質」が「ヤマセ」に乗って、この津軽地方にまき散らされたら、どうなるのか。そして、そのことによって起こる「リンゴ農家」に対する「風評被害」はどうなるのか、そのようなことにもとり組んだ方がいいと主張、提案していた。
 そのように主張していた者にとって、今回の企画は嬉しいものだったし、何を措いても参加しなければいけないものでもあった。

 ところで、「ヤマセ」とは何なのだろう。これについて少し解説を加えたい。

 「山背(やませ)」とは、夏(7~8月)に東北の太平洋側に吹き付ける冷たく湿った東風のことを言う。
 東北地方は、「山背の影響」で江戸時代から、たびたび冷害にみまわれ、その都度「飢饉」が起きていた。2003年の大冷害も記憶に新しいところである。
 「山背」の原因はオホーツク海高気圧にある。オホーツク海は冬は流氷で覆われる。夏でも10℃以下ととても冷たい海域だ。オホーツク海高気圧は、その海の上で育つ高気圧なのでとても冷たい空気を持っている。その高気圧から吹き出す風が東北地方に「山背」をもたらすのだ。だから、「山背」が吹くと気温が低くなるのである。この寒冷な高気圧から吹き出す風は、三陸沖の太平洋上をわたって吹き込むので、「湿り」を補給して、どんよりとした曇り空になる。
 2003年には、この「山背」が1ヶ月以上続いて冷夏となった。仙台の東北管区気象台の発表によると「平年の7月下旬は梅雨明けの頃で最高気温も30℃近くまで上がるのだが、この年は最高気温が20℃に届かない日が続いた」そうである。
 「山背」の時の雲の高さは、1500mくらいなので、それ以上の標高を持つ「山や山脈」を越えることが出来ない。東北地方のほぼ中央を縦断している脊梁山脈である「奥羽山脈」を越すことが出来ない。そのため、山形県や秋田県では「山背」の影響を受けにくく「晴れている」ことが多い。
 気温も太平洋側に比べると、「日照」時間が長く、高いのである。津軽地方もこれに当たり、八戸や三沢、十和田市などとは比較にならないほどの「好天」となる。
 「山背」は毎年発生している。ただ、それが長期間にわたるか、オホーツク海高気圧が持つ「寒気」の度合い強弱、雲の発生頻度とその厚さ、日照時間の長短、日照の強弱などによって、「農作物の生育への影響」には違いが出てくる。
 長期にわたって山背が続いた場合、最悪の状態だと、その地域の農作物がまったく「稔らない」という壊滅的な結果になる。それは歴史が「飢饉」という形で、如実に証左してくれていることである。
 「山背」は一度、発生すると、短いものでも1週間程度は続くことがある。なお、広辞苑によると「山背」のことを「凶作風、餓死風」としてある。(明日に続く)

◇◇ 6月18日付東奥日報紙 「弥生跡地」観察会同行取材記事掲載(15) ◇◇

(承前)…「4. スキー場、ゴンドラ、リフト、ゲレンデの改変」は、紛れもない「自然破壊」である。
一説によると「硫安」は「融雪」を抑制するために使用するという。スキー場なのだから「融雪を抑えてできるだけゲレンデコンデションを確保するために使うのだろう」と考えたら、場違い感は消えた。
しかし、これは肥料でもある。化学物質でもある。これを使えば当然あるがままの自然は「改変」される。何という自然に配慮しない身勝手な生態系の破壊行為であろう。
仮に融雪防止剤として散布したのでなく、肥料として使ったとすれば、「近くにワラ等を貼った植物の植え付け跡がある」はずであるが、それらを確認することは出来なかった。 硫安は、通常、酸性土壌でも十分に育つイネ科を中心に、初期生育を旺盛にするために使われる。
 やはり、融雪防止剤として散布した残りをそのまま置いたというのが真相であろう。

 私は「鰺ヶ沢スキー場」に次の質問状を送った。だが、回答はなかった。

①もし、融雪防止剤として使用したのでないとすれば何の植物の初期生育を盛んにして、生態系を大きく変えようとしたのか。

②土壌の酸性が強くなり自然繁殖する植物が限られてしまうので、無使用区域のペーハー(pH)と比較調査して、若干の中和措置も必要ではないか。そのような措置は講じたか。

③中和措置の場合も安易に石灰等をまくと表土の石膏化も危惧されるから専門家に相談などしたのか。

(参考)
 「みちのく野生生物調査会」が提出した「鰺ケ沢スキー場拡張等計画に係る自然環境影響調査<生物関係>報告書(概要)」(いわゆるアセスメント)の「使用開始後の問題の特記・注目すべき事項」には「コースからの流水・土石流失等は、コース周辺の生態系に大きな影響を与えることになる。」「融雪を遅らせるための塩・薬剤等の散布は、植生のみならず生息する動物にも大きな影響を与えることになる。」とあり、『流水や土石流失を引き起こすと予想される改変』や『融雪防止剤の使用』を言外に「しないように」と指導しているのである。スキー場はその指導を守っていないのだ。
 このような指導を遵守するという前提のもとに「拡張ゲレンデ」工事は許可されたはずなのである。(明日に続く)

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