岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

今日の写真は「クロウスゴ」/ 果実探しの山行(5)/「余録:『65年後』の昔と今」に思う(24)

2010-09-10 04:25:22 | Weblog
 (今日の写真は、ツツジ科スノキ属の落葉低木「クロウスゴ(黒臼子)」の果実だ。8月30日に撮影したものだ。これに似たものに「クロマメノキ(黒豆の木)」があるが、「クロマメノキ」は岩木山には自生していない。似ていると言えば「オオバスノキ」の果実だが、こちらは、「下垂」してついているので、見分けが簡単だ。

 本州の中部地方以北から北海道に分布していて、亜高山帯の林縁や高山の低木帯、または湿原に生え、樹高は50~150cmほどになる。
 6月の初め頃から、出たばかりの葉腋に、花の直径5mmくらいの淡い緑色か淡い紅紫色の花を下向きに垂れ提げて咲かせる。合弁花で、花冠はやや扁平な壺形をしている。花冠の先は浅く5つに裂け、裂片の先は外側に反り返るのが特徴である。
 雪渓や雪田の近くでは溶けた雪の上に梢を出すやいなや葉と同時展開で花を咲かせる。そのスピードは速い。葉が出てきたなと思って2、3日後に出かけてみると、すでに花がついているという具合なのである。驚いてしまう。
 葉は広楕円形か広い卵形で互生し、葉柄はなく全縁で鋸歯はなく裏面は白っぽい。樹皮は灰黒褐色だが、若枝は赤褐色である。
 岩木山には「クロウスゴ」の仲間として「マルバウスゴ」もある。)

◇◇ 果実探しの山行(5)◇◇

(承前)…Yさんの観察記その2

※ダイモンジソウ 大文字草
大の字のような白い花びら。繊細な花のわりに葉が大きかった。
マルバキンレイカ 円葉金鈴花
茎頂に黄色い花を密生していた。
ミヤマハンショウヅルの種   深山半鐘蔓
細長い綿毛が渦巻くように丸い形をして風に揺れていた。今度はぜひ花を見てみたい。※キンポーゲ科の特徴的種子2種の内の1種。
ベニテングダケ 紅天狗茸
赤い大きな傘が登山道のあちこちに頭をもたげていた。
※タケシマランの実 竹縞蘭
つやのある赤い実は心を和ませます。
ホツツジ 穂躑躅
茎頂に穂状に小さい白い花を咲かせていた。

メモ
できないと思い込んでいた岩木山登頂を無事果たすことが出来てとても嬉しかったです。しかも鳥海山、岩木山、巌鬼山の山稜を散策でき、岩木山に生えているいろいろな植物を、(教えていただいて)名前と体で認識できて、この上ない心の満足感を味わいました。昨年までは想像すらしていなかったことで、翌日以降の体のあちこちの筋肉痛やこわばりも、心持早く回復した気さえします。
それにしてもツツジ科の植物が多かった。大葉酢の木、苔桃等のツツジ科スノキ属の木の実をようやく味わえて満足でした。天然の木の実は甘過ぎず、心の潤いも与えてくれる天からの贈り物です。大事にしたい。
実を見ると花を見たくなり、花を見ると実も見たくなりますが、植物には植物の生き方があるので、あせらずにまたの機会を楽しみに待つことにしよう。ということは、いつも花とか実とかの状態ではないから、その時々の植物の生育過程も楽しめれば、楽しみも増すということでしょうか。

 ※を付したものについて若干解説を加えよう。
※ダイモンジソウ :赤倉登山道でダイモンジソウに出会ったのは初めての体験だった。赤倉沢沿いでは、多く見かけるものであるが、割合、乾燥している尾根や稜線では「ない」のかなあと思っていた私には驚きであった。
※キンポーゲ科の特徴的種子2種の内の1種。
 ミヤマハンショウヅルは園芸種「クレマチス(鉄線)」の仲間である。この仲間の種子は、綿毛となり、風で種子を飛ばす。だが、同じキンポーゲ科のなかでも、キツネノボタンやキンポーゲなどの種子は小さな「イガグリ」状または「金平糖」状になる。
※タケシマランの実
 岩木山にはオオバタケシマランも自生している。こちらの果実は楕円形で長い。

◇◇ 毎日新聞2010年8月15日付電子版 「余録:『65年後』の昔と今」に思う(24) ◇◇

 (承前)…法学者小林直樹が、その当時の「帝国軍」のことを「人間らしさ奪う軍の『孤島…追憶の風景』「朝日新聞」2010年9月1日付」と呼んだ。
 …復員したのは45年10月末。しばらく長野の自宅で哲学や法律の書物を読んで過ごし、学生生活に戻ったのは暮れごろでした。
 物質的には貧しかったのに、精神的には上向きな時代でした。プラトンやカントの哲学が戦争を洗い流してくれた。南原繁、尾高朝雄といった諸先生の法哲学講義を聴く前と後
では、頭の重さが違うようにも感じました。

 理性に欠けた軍事支配が、つくづく忌まわしく思われました。金沢を中心とする軍隊生活は私にとって、三木清がいう「基礎経験」。その後の憲法研究でも、軍隊を再来させないという思想が根底にありました。
 民主主義と平和主義の現憲法を支持し、戦前を志向する改憲論に反対し続けてきました。生存権、自由権を守るために憲法を現実とのかかわりの中でとらえるべきだ、とも強調しました。

 軍隊は闘争の道具で、組織的に人殺しの訓練をする場所です。それは、人間らしい生き方に目をつぶることです。しかも、国民を守る意思も能力も持たないのに、軍は国の根幹だと主張していました。一般に、国家を支配する人々は大方、それがいかに愚かしいかを知りながらも、軍事力が必須だとして強化を続けてきている。
 それはパラドックスを地でいく構図です。人間は多面的で矛盾を抱えた存在ですね。こうした人間をとらえるには、法律だけでは足りない。現代の学問は細分化して、総合的な認識力を弱めている。だから、あらゆる角度から人間を眺めるべきだと思って、総合人間学を提唱しています。
 今、人類の未来は明るくない。特に核兵器や地球環境問題が、暗くて重い枷になっています。矛盾の中でいや応なく揺れる人間が、戦争や破壊に向かうのを、くいとどめたい一念です。…(明日に続く)