岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

「岩木山に自生するたった1本のアオモリトドマツ」(3)

2010-09-14 04:14:40 | Weblog
 (今日の写真は、昭和43(1968)年12月発行の「岩木山」(品川弥千江著)に掲載されている「アオモリトドマツ」で、本数は確かに3本である。
 この写真には樹高や幹の太さ、樹齢等の記載は全くない。何か、比較になるものが、写っていると、それを基準に「樹高や幹の太さ」は類推は可能だが、これだと大きいのか小さいものなのかの判別は難しい。しかし、印象として、「樹高」はかなりありそうである。
 微かな記憶の底にあるものは、この写真のものに似ている。記憶が曖昧だから、この写真が逆に「曖昧さ」を補強して「このようだった」と思い込ませているのかも知れない。40数年前のことである。人の記憶は薄れ、忘却の彼方へと消えていくのが常だろう。だからこれは「しようがない」ことでもある。

 昨日「3本だった『アオモリトドマツ』は1本だけになってしまっているのだ」と書いた。だが、書いた後で、この写真をよく見ると、私には疑念が湧いてきた。
 一昨日と昨日に掲載した写真の「アオモリトドマツ」は確かに「1本」だけになっている。だが、これは「今日の写真」のものとは、「別物」なのではないかという「疑念」である。
 「ターミナル」の近くで「津軽岩木スカイライン」自動車道路を敷設中に発見されたという事実をもう少し厳密に捉えてみよう。場所は標高が1200mから1250mであろう。偶々、森林を重機で開削している時に、発見されたのが「3本」だったのだ。
 「植栽」されたにせよ、自生していないとされていたものが「自生」していたにせよ、この尾根の標高が1200mから1250mの範囲を、他に「アオモリトドマツ」が生えているのか、いないのかは当然調査されるべきことではあっただろう。だが、私はその「調査」のことは聞いたことがない。
 「植栽」または「自生」であったにせよ、私は、今日の写真の他にも「生えていた」のではないかと推量している。
 そして、この「推量」が「今日の写真」と「一昨日と昨日に掲載した写真」の「アオモリトドマツ」とは、「別物」ではないかという疑念を生じさせているのである。
 しかし、「たった1本」の「アオモリトドマツ」の脇に折れたものの幹が立ったままで、少し離れたところには倒伏仰臥している朽ち果てた「アオモリトドマツ」が存在している。それらを合計すると「3本」になるのである。
 ところで、提案である。それは、「この尾根の標高が1200mから1250mの範囲を調査する」ということだ。「アオモリトドマツ」探しをするのである。「ターミナル駐車場」を起点に台形型に区切られた縦100m、横200mほどの範囲でいいと思う。
 この「アオモリトドマツ探し」で、他に幾本かが発見されると「たった1本」という未来につながらない「悲観」は解消されるだろう。)

◇◇「岩木山に自生するたった1本のアオモリトドマツ」(3)◇◇

 「津軽岩木スカイライン」では、現在ターミナルの管理棟を新築している。今までのものは経年変化から、耐久年数を越えてしまい別な場所に新築建て替えをするというのである。
 「岩木山に自生するたった1本のアオモリトドマツ」は実はこのことと深い関係があるのである。
 聞くところによると、その費用は管理運営主体である「株式会社岩木スカイライン」、弘前市、他にはっきりしないが「国」か「県」であるという。
 「設備の立て替え・新築」という場合は、一般的には「個人」であれば、その「個人」が、「法人」であれば、その「法人」が全額自弁するのが当然である。
 だが、今回の「立て替え・新築」費用は3者で賄うというのだ。「どうしてこうなるの」とある市議会議員に訊ねたら「東北新幹線青森まで開通効果ですよ」との答えだ。
 納得がいかないので、さらに「詳しく教えて下さいよ」というと…
「弘前市も他の自治体も、新幹線全線開通を観光行政の起爆剤にしようと予算を盛っているのです。岩木山は弘前市の観光の目玉ですから、スカイライン株式会社の設備改修にも予算がつきました」というのである。なるほど、うまく出来ているものである。
 私は常々、自然を損なわない形での登山道の整備を訴えてきた。日赤岩木山パトロール隊は「手弁当」で登山道の整備に取り組んでいる。それにかかる資材購入は隊費からの持ち出しであるという。
 また、「岩木山観光」にはハードウェア的な対処でなく、ソフトウエア的な対処としての「人員の養成」を主張してきた。やって来る観光客を入れる「容れ物」ではなく、「観光客や登山客に直接対峙する質の高いガイド」の養成である。
 少なくとも、「登山客を引き連れて先頭に立って歩くだけのガイド」ではなく、通年登山、オールラウンド登山の出来る登山のプロ、自然(植生、地質、地形、気象)のプロ、歴史のプロを養成するために金を使うべきだと言ってきた。
 だが、これらの方向への「動き」は皆無であるにもかかわらず、いわゆる「箱物」には簡単に金を出すのである。
 8月30日には管理棟の基礎工事をやっていた。何と、「たった1本しか残っていないアオモリトドマツ」の直ぐ傍が工事現場なのである。「アオモリトドマツ」の現況を視認したいと思い、入っていこうとしたら、「侵入禁止のロープと柵」に囲われて入っていけないのである。そこで、「侵入禁止のロープと柵」から南よりの藪に少し降りて「アオモリトドマツ」の生えている辺りを窺ったところ、基礎工事で出た残土や使われなかった資材の一部などは、捨てられていないことが分かった。まずはこれで一安心である。
 そこで、9月7日に行われた幹事会で「スカイラインターミナル管理棟新築工事」とそれに関わる「アオモリトドマツ」の調査を提案したのだ。その結果、9月10日に、私と阿部会長、それに斉藤幹事の3人で出かけたのである。
 その日は、先ず、「スカイラインゲート」に立ち寄って管理者の梅村さんに会った。そして、「アオモリトドマツ」の調査に行くので、「侵入禁止のロープと柵」の中に入ることの許可を得た。梅村さん曰く、「気になっていたのですが、どれが『アオモリトドマツ』なのかよく分からないので、そのままの状態で工事が始まってしまいました」と。
 「スカイラインターミナル」に着いたら、「スカイライン」の係員が、工事現場まで案内をしてくれて、さらに工事現場の監督者が出迎えてくれた。
 わずか10日間で、すでに、管理棟の鉄骨骨組みは出来ていて「建物」の様相を見せていた。私たち3人は、その現場内を通り、目的の「アオモリトドマツ」にたどり着いたのである。現場での調査はこれまで報告したとおりである。
 これからは、建物の裏側になるので、これからは「人目」につきにくいことになろう。だが、直ぐ傍のミネヤナギに赤布を3本つけておいたので、それを頼りに探すと発見はたやすいはずである。
 なお、この日も、ずっと、「右腰、右腹部、右側胸部」に疼痛があり、時には激痛が走っていた。