時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

千島問題によせて

2008年08月26日 | 政治問題
先日、グルジアの紛争についての記事を書いたところ、読者より、千島問題を含めて示唆にとんだコメントをいただいたので、今日は、以前から一度まとめて書いておきたかった千島問題について少し書いておこう。
ソ連は、ヤルタ会談において、対日参戦とひきかえに千島のソ連引き渡しを米、英と密約し、これに基づいて、千島を不法に占領した。一方、戦後に、日本が米国などと結んだサンフランシスコ講和条約の第2条C項により、日本が千島の領有権の放棄を宣言していることもこの読者の指摘のとおりである。
ここで問題は2つある。
1つは、ソ連による千島占領は、戦勝国とはいえ、不法な占領であることに間違いはないということである。いかなる理由によるものであるにせよ、日露間で締結された1875年の「樺太・千島交換条約」に反する不法行為に他ならない。この行為は、戦後処理を定めたカイロ宣言の「領土不拡大」の原則にも反するものであり、その宣言の完全な履行を明記したポツダム宣言にも反する行為であることは疑いようがない。要するに、ソ連の行為は国際的にはまったく根拠のない暴挙にすぎない。
もう1つは、日本がサンフランシスコ講和条約によって、千島列島を放棄していることで、ソ連による千島の占領体制を容認していることである。だからといって、編集長は、ロシアが千島に居座っていることをけっして容認するものではない。
政府は、このサンフランシスコ講和条約で千島の領有権を放棄しながら、その一方で「北方領土」返還を声高に叫ぶというとんでもない恥ずべき愚を冒している。しかも、歯舞、色丹、択捉、国後の4島は、「千島列島」にあらずという詭弁を弄しているのだから、国際的にも認められるわけがない。
ちなみに、日本政府が返還を求めている「北方4島」のうち、歯舞、色丹は、もともと北海道の一部であり、「樺太・千島交換条約」には含まれていない地域である。ソ連は、ドサクサ紛れに、千島ばかりでなく北海道の一部までを占領したというのが、歴史の事実である。
まずは、この歯舞、色丹の返還をロシアに求め、次いで、千島の放棄を定めているサンフランシスコ講和条約を破棄し、新たな平和条約を締結するとともに、択捉、国後の2島にとどまらず、千島全島の全面返還を求め、日露の国境を明記したロシアとの平和条約を締結するという道筋をとるべきであろう。
ソ連の崩壊まで、米ソ2大覇権主義国の存在によって、世界の平和がずいぶんと脅かされてきたが、その後、アジアやアフリカ、中南米でも紛争を平和的に解決しようという大きな流れが生まれている。
地勢的、歴史的、あるいは宗教的、報復的などのさまざまな理由によって、他国への侵略が行われてきたが、いかなる理由があろうと、隣国との間に定めた国境を侵す行為は許されない。平和的な話し合いのテーブルにつくこと、これ以外に解決の道は存在しない。