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お気楽ビジネス・モード

ビジネスライフを楽しくする知恵や方法を紹介する

稲盛和夫 『稲盛和夫の経営塾』日経ビジネス人文庫

2008-06-22 18:45:48 | マネジメント・ガバナンス
盛和塾という経営塾は、1980年に稲盛和夫氏の講演を聴いた若手経営者たちが始めた会で今や1600名を超える会員がいるらしい。
確かに経営者としてのこの人の話を聴くと魅了されると思う。この本でも経営者の質問に答える形で稲盛氏が成功や失敗から学んだ興味深い話が書かれている。
目標管理制度を導入して年俸制にしたが、景気の動向で目標がずれ、給与も連動しないことをどうしたらよいかという質問には、「インテリが陥りがちなワナにはまっている」とバッサリ。すばらしい業績には栄誉と賞賛を与え、報償とで大差をつけないことがよいのだと教える。これは京セラの経営そのものだが、根底に人間は金銭だけではモチベートできないという哲学がある。
そのほかにも午後5時で帰らせている社員に残業をさせるべきかという質問には、全員参加経営にすることや、プロの給与体系を考えることと共に、「コンパを開け!」などのアドバイスが面白い。

藤田田『勝てば官軍―成功の法則』

2008-01-07 22:34:23 | マネジメント・ガバナンス
ソフトバンクの孫社長が少年の頃、藤田社長にアドバイスを求めてに来て、藤田社長が留学先でコンピュータを勉強することを勧めた話は有名。日本マクドナルドの前社長は東大卒だがとても泥臭い。輸入ハンドバッグなどで生計を立てていた藤田社長はマクドナルドの将来性を見込んで日本での展開を始めた。でも日本のやり方にこだわった藤田社長のやり方も日本で成功する秘訣だっのだろう。新宿にバーガーキングが再上陸したが、とてもアメリカのようにマクドナルドと張り合えるようにはならないだろう。藤田田はマクドナルドのような生産が機械化され、きれいな商品イメージの企業には似つかわしくない。でもあの勘や泥臭さがなければ生き残れなかったのだろう。

伊藤岩広『セイコーエプソン物語―内陸工業史研究ノート 』

2008-01-07 21:59:03 | マネジメント・ガバナンス
セイコーがどうして、セイコー、セイコークロック、セイコーインスツゥルメンツ、セイコーエプソンに分かれているかが初めて分かり、そのメリットとデメリットも理解できた。でもひとつになれないのだろうなあ。クォーク革命の世界に与えた衝撃や東京オリンピックに賭けたセイコー意気込みもスゴイ。また東京オリンピック効果はもっとスゴイ。プリンタ技術もこのとき記録を出力するために開発されたものなのだ。時計とプリンタは結びついている。ただ、シェーバーをセイコーが作る理由は理解できなかった。

千野信浩『できる会社の社是・社訓』

2007-11-07 21:17:09 | マネジメント・ガバナンス
企業理念、社是、社訓、行動指針、ミッションステイトメントなど会社にはいろんな行動規範となるべき言葉が作られている。これらは必ずしも会社によっては系統だって使われているわけではないようだ。この本では社是・社訓をその会社の歴史から納得感のあるものが拾われている。日本電産の社訓には「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」というのがある。学歴関係なしの大声試験、早飯試験、マラソン試験などを行う永守社長らしい社訓だ。友好的買収で23社を傘下に収めたのもこの社訓と常識破りの発想からだろう。そのほか、ダスキンの社是には一燈園の思想が反映されているらしい。というのもダスキンは一燈園の教えに感銘を受け、一時は一燈園の幹部にまでなった社長が起こした会社だからだ。白洋舎はキリスト教の布教のために作られたから聖書の教えが社是になっているとか、社是・社訓と社史の関係は面白い。楽天は「スピード、スピード、スピード」というのが社訓にあるらしい。いかにも今風だ。

A.T.カーニー『勝利する企業合併―合併後の統合を成功に導く7つの法則 』

2007-08-22 23:18:23 | マネジメント・ガバナンス
企業合併には規模拡大型、バリューチェーン型、同心円型、水平型など様々な形態がある。いずれの形態でももっとも失敗しやすいのは両方の企業が、合併の目的に明確な理念を持っていないことだそうだ。なんとなく合併という案件の約半分は失敗しているという調査もある。合併も企業変革のひとつの方法だが、ジョン・コッターの改革プロセスと似通っている。ビジョンと戦略、リーダーシップの定着、相乗効果と企業成長、初期成果、企業文化の変革、あらゆる手段によるコミュニケーション、リスクマネジメント。それぞれのステップを着実に達成していくことが企業合併を変革の契機とする成功のカギなのだ。

御手洗冨士夫『強いニッポン』

2007-05-12 23:19:14 | マネジメント・ガバナンス
安倍政権下の経済財政諮問会議の方向性を知りたくて読んだ。御手洗、丹羽氏の経済界の二人の委員と学者委員の八代尚宏氏の動向を注目すべきだろう。この本はその委員の一人、経団連会長でもある御手洗氏が、日本を強くするための方策を述べている。技術力を向上させて、最高の技術水準の製品を外国でなく日本でつくることが必要であるとか、若いうちから社会経験をさせてニートなどを生まないようにするべきだとか、少子化のもとでの労働対策として女性が働きやすい職場にすることなど現在の政府の政策とほとんど齟齬のないことが書かれている。ちょっと注目すべきは国立大学についてだ。この問題は経済財政諮問会議と教育再生会議で意見がずれている。国立大学へもっと財政支援すべきという教育再生会議と減らすべきという経済財政諮問会議。御手洗氏は現在の国立大学が多すぎると言っている。もっと資源を特定分野に集中させるべきだとも言っている。出身の九州の例では、九州大学のキャンパスを九州のそれぞれの県に配置するイメージで九州にある国立大学すべてを再編するアイデアなどが出されている。基礎工学に強いところとか情報工学に強いところなど「選択と集中」を基本にすれば財政は整理できるということだろう。このあたりが教育再生会議と対立する根っこかもしれない。キャノンの経営については「変身は前進」という考え方が興味深かった。キャノンはパソコンや液晶パネルなどからいくつかの分野から撤退し、選択と集中を実行した。それも社員の解雇なしにやったことがすごい。松下電器の中村前社長との対談で、キャノンは構造改革をずっと前から進めていたので、松下のように大量解雇をしなくて済んだということが指摘されていた。御手洗氏はキャノンUSAで20年以上学んだことを日本で実践したようだ。これは松下の中村前社長と通じるところがある。

堀義人『人生の座標軸』

2007-05-03 08:16:26 | マネジメント・ガバナンス
グロービス・グループの代表が何を考えているのかが知りたくてこの本を読んだ。起業家だが、物事に対する姿勢が傲慢でなく、誠実で前向きな人という印象だ。4人の男の子の子育ての話や、友人の外国人投資家の勧めで結婚10周年に妻にダイヤを贈って、妻が子どもたちの前で涙するエピソードなどが最初にちりばめられていると、とても悪い人には思えない。起業家といえば、夜な夜な合コンをしてお持ち帰りしたり、高級マンションでパーティーするのが相場のように思われているが、この人の楽しみはそういうところにはないようだ。趣味は水泳でマスターズ大会に出ることと大局的な見方を育てるための囲碁。日本の山の中にアジアからフルタイムの学生が来れる大学院を作るのが目下の夢らしい。住友商事からハーバードビジネススクール(HBS)に留学し、ビジネススクールが作りたくて30歳で起業する。三軒茶屋のアパートの一室でビジネス塾を始めてから12年後に麹町の新築ビルに250坪のフロアを5つ借りるまでに発展した。経済特区で開設した文部科学省認可のグロービス経営大学院も順調だ。ベンチャーキャピタル、出版、企業研修、人材バンクなどどれもある程度成功している。成功の要因は何だろうか。堀氏のビジョンを描くことに卓越したリーダーシップもあるだろう。しかし堀氏自身がこの本のなかで書いている組織論に秘訣があったように思う。勝つ組織=個の爆発×崇高なビジョン・理念・基本戦略の確立と浸透×規律の精神、という考え方だ。まず個性や個人のエネルギーを最大化する。そして崇高なビジョン・理念・基本戦略の確立と浸透に努め、それが個人の理念と共鳴していれば動機づけさえ必要なくなる。しかし組織にある程度の秩序は必要という。普通の会社が進める組織形成はこの順序の逆だと思う。一見時代錯誤に思える毎年の社員旅行や年末パーティーという行事を行うのもグロービスが個性・ビジョン・規律を重視する会社だからだろう。社員旅行は2時間のビジョンを語るミーティングだけ社員が集まる義務があるというところもグロービスらしい。堀氏はアジアや世界の起業家だけでなく韓国の大統領やヨルダンの国王に会ったり、世界に目を向けて活動して、視野がグローバルだ。これもグロービスを夢のある会社ではなく、夢を実現する会社にしている所以だろう。

江副浩正『リクルートのDNA』

2007-05-02 23:24:01 | マネジメント・ガバナンス
江副氏が東京大学の学生のころに大学新聞の広告取りを事業化したのがリクルートの始まりという話は有名だ。卒業後、年収が下がるのと自由が欲しかったので、そのまま東京大学新聞の広告取りを続けた。やがて3人の社員で他大学の新聞の広告取りも仕事にして、暇な時はスキーや温泉旅行に出掛けられるくらい儲かったらしい。森ビルが今ほど大きくない時期に、森ビル第一号の屋上のプレハブの一角を借りたので、森ビルとリクルートは創業地が同じという。その後、あの有名な学生用無料就職情報誌「企業への招待(のちのリクルートブック)」の創刊のために、金策したが融資が得られず、芝信用金庫というところから50万円借りて創刊第一号ができたこと。その恩で江副氏の現役時代は、営業報告書で取引金融機関の筆頭にしていたことは泣かせる。創刊号をむさぼり読み、誤植を2箇所見つけたが、枕元に置いて寝たという話などはこの起業家の原点という気がする。ドラッカーの本を読んでプロフィットセンター(PC)の方法をいち早く導入したこと、ウィーナーのサイバネティクスの考えを取り入れて、フィードバックはがきなどあらゆるところへ顧客からのフィードバックのしくみを取り入れたことなど江副氏の知的な経営者としての才能を感じる。読売新聞が住宅案内を創刊し、強力なライバルとなったときも、編集だけでなく代理店を通さない広告の直販、取次店を通さない雑誌の直販というリクルートのビジネスモデルのほうが勝利した。例のリクルート事件については、日頃から朝日新聞などマスコミの反感を買っていたこと、政治家との付き合いに距離を置いていなかったこと、自由な社内報がマスコミの餌食になったことなどが控えめに語られるくらいだ。リクルートを救ったのはダイエーの中内会長なのは間違いないが、復活させたリクルートのDNAは江副氏がリクルート流の雑誌ビジネスモデルを確立していたこと、PCセンター方式やフィードバックにより自律的に学び働く組織にしていたことが大きいだろう。オンライン事業や通信事業での失敗も率直に語っている。苦労して事業化したスキー場リゾート施設の売却も自分なら思い入れがあってできなかったが、河野社長の当時の判断は正しいと述べている。リクルートの成功と失敗を深く考えさせられる本である。

『迷いと決断』出井伸之(新潮新書)

2007-01-03 11:40:39 | マネジメント・ガバナンス
面白いので一気に読んだ。出井社長の10年を振り返ると、前半の賞賛と後半のバッシングが対照的だった。出井氏の著書『非連続の時代』や『ONとOFF』は面白かったが、今から思えば2000年代前半の最も評価が高かった頃の本だ。余裕の時期はすべてが成功要因に思えるのだ。この本を読むとソニーのような大企業のトップを10年も務めることがどれだけ大変なことかよくわかる。出井氏の入社した頃はベンチャー企業だったかもしれないが、いまやアメリカでもエレクトロニクスとエンターテイメント企業としてトップブランドである。この大企業を維持するのも大変だが、新たな路線を引くことはもっと大変だったのだろう。ハリウッド進出による垂直統合と規模拡大、その半面である負債の大きさ、改革に対する創業第一世代の影響力の大きさなど、ソニーが今後乗り越えなければならないことが多いと思える。今から思えば、業績が伸びていた2000年頃にもっと事業の選択と集中を行い、さらなる組織改革の基軸を出し、それをなんとしてでも実行すべきだったのだろう。それも旧勢力に阻まれたようだ。そう思うと松下の中村社長の改革のスピードと引き際の良さがすごいことに思える。

吉越浩一郎『革命社長』(日本実業出版社)『2分以内で仕事は決断しなさい』(かんき出版)

2005-08-17 18:40:18 | マネジメント・ガバナンス
トリンプ日本支社の吉越社長はすごい。18年間で売上は5倍、従業員は120名のままなのに残業がほとんどゼロに近い。時間をごまかしているわけではないようだ。150万円かけて自動的にオフィスの電灯が消える設備も入れた。秘密は社長が主催し、かつ演出する早朝会議と毎日2時間のがんばるタイムの設定にあるようだ。会社で一番働く人のようだ。判断は2分以内で行うことによってスピードをあげている。採用試験もSPIと独自開発した職人の芸を盗む技術。教育は販売員以外は行わない。自分で育つのが基本だからだそうだ。これができるのは、ロジカルシンキングを社内共通の考え方にしているせいだろう。