
グローバル(G)とローカル(L)はそれぞれ違う経済原理で動いている。それを理解して経済政策を立てないと何の効果もない。
特にグローバル経済を中心に成長戦略を立てていると、ローカル経済には利益が回らないという主張だ。
リーマンショック頃からトリクルダウンというグローバル企業の利益がローカル企業に回るという減少は起きなくなった。
グローバル企業は製造業中心であるが、ローカル企業はサービス業中心である。サービス業の供給者は消費者の近くにいなければならず、労働集約的である。
グローバル企業は世界で競争している。そのためには、法人税の引き下げとか雇用のダイバーシティが必要である。
それに対して、ローカル企業は世界企業ほど競争がなく、中小企業が多い。賃金が低く、慢性的な人手不足に悩まされている。
しかし、淘汰が起きにくいのでゾンビ企業が残っている。
そのために最低賃金の引き上げとゾンビ企業が退場しやすい制度改革を著者は提案している。
これでローカル企業の人手不足は減少し、経済効率の良い企業が地域で再生する可能性がある、というのが著者の主張だ。
さて、G型、L型という分け方や経済原理の説明は説得力がある。
著者が産業再生機構COOを経験し、今、東北でみちのりホールディングスという交通関係の企業の再生に関わっているので浮ついた経済学の理論説明ではない。
G型、L型と分けるとすっきりすることが多い。
供給者と消費者がどこにいるのか、世界を市場の対象とすることで経済効果が上がる企業とそうでない企業。
教育産業もローカル産業なのだということをハーバード大学を例にして言っている。
ただ、教育産業はすべてローカル産業かというとそうでもないのかもしれない。
テンプル大学などが典型だろう。しかし、グローバル化の効果を上げていないのも事実だ。
著者はこのG型、L型で、いろんな産業の整理を行っている。
日本の大学もG型、L型で分けて教育内容を整理せよと言っている。
しかし、このG型、L型の間にある大学もある。
自らをL型と規定したくないだろう。
分類化してしまうことで競争力を失うという判断があるからだろう。
文部科学省の類型化より単純なこの分類で大学が整理されるとは思えない。
処方箋はあるが、それを実行できないのは経営者が冷静な判断をできないからか、
それとも消費者がグローバル化に憧れる幻想をもっているからなのか。