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お気楽ビジネス・モード

ビジネスライフを楽しくする知恵や方法を紹介する

前田正子『保育園問題 - 待機児童、保育士不足、建設反対運動』 中公新書

2018-11-24 13:20:29 | 教育
潜在保育士は75万人くらいいるらしい。厚労省が2013年に行った調査で、「就業しない理由」の上位は、

47.5% 賃金が希望と合わない
43.1% 他職種への興味
40.1% 責任の重さ・事故への不安
39.1% 健康体力の不安
37.0% 休暇が少ない・休暇が取りにくい
26.5% 就業時間が希望と合わない
24.9% ブランクがあることへの不安
22.3% 業務に対する社会的評価が低い
19.6% 保護者との関係が難しい
・・・
5.8% 教育・研修体制への不満
・・・
とか。
アンケートでは教育・研修とかの理由は低いが、最近の保育園では、保育実技や発達障害児への特別支援、保護者対応など学ばないと対処できない問題も多い。
この調査は潜在保育士が対象だが、現役保育士でも似たような結果になるのだろう。
現役保育士の場合、代替要員がいないので研修に行けないという事情もある。
責任の重さ・事故が上位にあるのは、最近死亡事故が話題になったり、アレルギー対応の問題が報道されたりするからだろう。

給与アップと研修受講義務を合わせた「保育士等キャリアアップ研修」を厚生労働省が認めた施設できることになった。
でも、この研修は対面授業しか厚生労働省が認めていないようだ。
これって、時代遅れみたいだと思うけどね。
スマホで受講できれば保育士にもプラスでしょ。
でも、教室授業も受けたいんだろうね。

嶋崎 政男『学校崩壊と理不尽クレーム』集英社新書

2015-01-05 00:21:08 | 教育
2008年に出版された本。
モンスターペアレント関連の本は2007年頃から集中的に出版されている。
ちょうどそのころモンスターペアレントという言葉が流行ったんだろう。
クレーマーの三種の神器は議員・弁護士・マスコミらしい。

この本では学校で起きるクレーマー事例と対応方法について解説されている。
また理不尽クレームを引き起こす親の問題にも触れられている。
親が子どもに接する態度には、
(1)溺愛・偏愛型
(2)放任・拒否型
(3)過干渉・過支配型
(4)バランス型
というように分けられるらしい。
どの親も子どもに接する時に「うーんと甘えさせるけど、甘やかせない」というバランス型の態度なら、学校に対する理不尽クレームは起きないようだ。
子どもの虚言にも対応できるし、必要以上に学校で起きたことに介入しない。教師にも攻撃的にはならない。
しかし、すべての親がこのバランス型で子育てをしているかというと、なかなか難しいんだろう。

著者は、理不尽クレームが起きるのをコップを倒すと水がこぼれることに例えて、未然防止が必要だという。
そのためには、日頃から先生は教育熱心さを失わず、先生と生徒との人間関係、生徒同士の人間関係を深化させ、保護者との信頼関係を築かないといけない。

攻撃型のクレーマーが登場した時、真面目な先生は、リーガルマインドがない場合が多く、カウンセリングマインドを発揮して相手の要求を飲んでしまいがちだそうだ。
理不尽な要求にはダメなことはダメという態度も必要だ。
以下のようなことを注意すべき事としてあげられている。

(1)相手の指定した場所には行かず、学校の応接室で対応する
(2)相手より多いメンバーで臨む
(3)曖昧な部分は聞き返して確認する
(4)即答できないことはその旨はっきり述べる
(5)謝罪文など書類の作成には応じない
(6)脅迫、暴行などがあった場合にはすぐに警察に連絡する
(7)学校全体で組織的に対応する
(8)すべて記録に残す

学校に現れるクレームは企業にも役所にも共通することらしい。
これは法整備などで消費者意識が高まったこと、ストレスを発散させたい人々が多くいること、心を病んだ人が増えたことなどが要因とか。
この本が出版された2008年より今はもっとひどい状況になっていると思う。

デジタルコンテンツ協議会『eラーニング』米田出版

2010-08-21 22:46:37 | 教育
2年前の本である。
池上通信機、フォトロン、ユーザーズという企業と一橋学院、畿央大学の関係した事例が紹介されている。
この事例がeラーニングのスタンダードといえるかどうかは疑問ではある。
本書でも述べられているが、日本のフルオンライン大学は八洲学園大学とサイバー大学だけだ。アメリカや韓国のように広がらないのは文部行政の規制が強いという事情もある。

この本ではeラーニングの通学制大学院での利用など参考になるところもある。
営業担当者が学校との成功の秘訣を書いているのもおもしろい。
eラーニング業者の営業が相手を調べてから交渉に臨むべしなどというのは、他の営業と変わらないのだろう。ただ、交渉相手が大学の先生の場合、eラーニングに関する論文を書いていて、その共同研究者が競合他社だったりすることがあるらしい。こちらよりはるかに高度な知識をもっている相手に対してどう営業するのか。これなどは医師を相手にするMRの仕事と質的には変わらないのかもしれない。

eラーニング業者の類型と選び方も参考になる。
eラーニングビジネスの事業者は4種類に分類できる。
○システム事業者
○コンテンツ事業者
○サービス事業者
○コンサルティング事業者
この融合業者もいるのでどの部分をどういう業者が担当するかも大学側が検討することになる。

最後に座談会でeラーニングで成功する秘訣について語っている。
何の計画もなしに出来るだけ安く導入したいというやり方は成功しないらしい。無料のLMSで立ち上げても、面倒を見る教員がひとりだけになって、その仕事も負担になってやがて消滅する。
成功するためには長期のビジョンがあって、予算がない場合も今回はこの部分だけを実施するというのが同じ無料LMSを使っても成功するケースらしい。そのため、全学部で実施というのではなく、学部や学科で目的をもって導入するケースが長続きするし、教育効果にも反映するらしい。
最後にセカンドライフの可能性について語られているが、2年経った今、思ったほど普及しなかった。
技術の見極めも大切だ。

鈴木克明『教材設計マニュアル』北大路書房

2010-05-13 01:11:13 | 教育
独学を支援する教材作りのための本。

(1)教材をイメージする
(2)教材作りをイメージする
(3)出入口を明確にする教材の構造を見極める
(4)テストを作成する教え方の作戦を立てる
(5)教材を作成する
(6)形成的評価を実施する
(7)教材を改善する

というプロセスに沿って、ケースとして『釣り入門』という教材をつくる面白い構成である。

この本は教材作りの本だが、クリティカルシンキングの考え方とフレームワークがよく似ている。

ロジックツリー、プロセスチャートなどのフレームワークは、教材を構造化して考えることや教材の作成・評価・改善をプロセスで考えることにそのまま応用できるのだ。

クリシンっていろんなところで結構役立つ。

この本は入門書なので深みに欠けるが、考え方は企業研修などの設計でも役立ちそうに思う。

本間 勇人『名門中学の作り方』 学習研究社

2010-04-06 23:06:51 | 教育
日能研でカリキュラム・評価開発を担当していた著者による「名門中学」と呼ばれている学校のレポート。
白梅学園清修、桐光学園、海城、湘南白百合学園、八雲学園、芝浦工大柏などの事例から、「開く力」「横断する力」「創造的コミュニケーションする力」「世界標準の知を探求する力」「共学校化する力」「結びつける力」が必要十分条件だと結論づけている。
2008年に首都圏中学校受験における受験率は20%を超えた。もともと文部科学省のゆとり教育政策に不安をもった親が私立中学への選択に向かったのがこの現象を生んだ。この熱狂は首都圏に特有のものらしいが、名古屋、大阪、京都などにも飛び火する兆候はあった。しかし、リーマンショック以降の景気後退によってその勢いは停滞気味である。ゆとり教育も今年から見直しで、教科書が分厚くなる。
この本は週刊誌の記事としてはおもしろいかもしれない。ただ、実際に中学校をつくる上ではあまり役に立たないように思える。

日能研進学情報室『中高一貫校』宝島社新書

2008-08-24 21:48:41 | 教育
2001年に『私立中高一貫校しかない!』を書いた著者が7年後に書いた本。今回、著者の名前は表に出ていないが、実際は井上修氏が書いたそうだ。7年前の予測通り「ゆとり教育」による授業時間数減少が、「超」教育階層社会の到来を生み、私立の中高一貫校ブームに拍車がかかった。しかし、当時と違うのは公教育が学習指導要領の改訂と併行して中高一貫校を設置し始めたことである。東京ではすでに8校ある。千葉、埼玉、京都などにも設置されている。昔のような進学校にならないという枠もはずされている。
優秀な中高一貫校も昔ながらの職人方教員で教育力を支えているところからシラバスの作成、外国語教育の重視、海外研修、理科教育に力を入れているところ、図書館が大学並みのところと様々になっている。
中高一貫校には大学附属系が多いが、宗教(キリスト教、仏教)系、実業系に加えて、ニューウェーブと呼ばれる強い教学理念の元に新しく設置するところもある。渋谷教育学園幕張などが典型だろう。
よい中高一貫校の見分け方は、説明会や学園祭などの行事で知ることが一番らしい。経営側と教職員が円滑にコミュニケーションとれていないところは入試や学校運営でも不安があるという。
その他、各地の動向(例えば、近畿圏での有力大学による囲い込みの進行)なども解説されていて面白い。

井上修『私立中高一貫校しかない!』宝島社新書

2008-08-24 21:46:04 | 教育
この本は2001年に出版されたものだが、今の中高一貫校ブームを先取りしている。
2002年から始まる学習指導要領での「ゆとり教育」による授業時間数減少が、「超」教育階層社会の到来を生み、私立の中高一貫校の人気に拍車をかけるという予測は見事に当たった。この頃の私立受験率は東京では20%に達していたが、首都圏全体では13.7%だった。今は東京で30%に達し、首都圏全体では20%を越えている。
教育コストは私立中高一貫から国立大学に進学できるなら、公立の中高から私立大学に行くのとそんなに変わらない。東大、京大に行かせるのなら中高から私立に行かせた方が早道ということ。
この頃、公立の中高一貫校について、まだ不透明だったが、7年間で進学校としての公立中高一貫校が設置されている。当時とは事情が少し変わっているように思うが、ゆとり教育の政策が私学だけでなく公立の中高一貫も促進したということだろう。

バトラー後藤裕子『日本の小学校英語を考える―アジアの視点からの検証と提言』

2008-08-13 17:20:10 | 教育
2010年から始まる小学校英語を考える上で、とても役に立つ本。
韓国や台湾などのアジアの状況もよく理解できる。小学校英語の導入を英語教育にとって前進と考えるなら、韓国や台湾などは日本よりずっと進んでいる。ではどうして日本で小学校英語教育が導入できなかったかというと、言語帝国主義に反対という勢力が強いだけの問題ではない。外国語を教える臨界期の問題、小学校で英語を教えることの効果が立証されていない問題や導入にあたっての教員に関する予算の問題などがあるようだ。この本はいくつかの論点を考える上で、豊富なデータや事実がよく整理されており、この種の出版物の中では群を抜いて参考になる。

小学校英語指導者認定協議会編『どうなる小学校英語―「必修化」のゆくえ』アルク

2008-08-13 17:18:08 | 教育
小学校英語指導者認定協議会と文部科学省という小学校英語教育の導入を推進する立場の人々によるシンポジウムや講演などが収録されている。
総合学習の時間に英語が教えられるようになってから、自治体などが民間の団体や塾に頼ってきた実態もよくわかる。文部科学省がこの問題について慎重な態度をとっているのは意外だった。大学関係者では上智大学の吉田研作教授のコメントが載っているくらいだが、もう少し研究者の関与が必要ではないかと思う。

鳥飼玖美子『危うし!小学校英語』文春新書

2008-08-13 17:16:18 | 教育
有名な通訳家による小学校英語教育論。文部科学省の政策に反対する立場の人だが、要するに小学校で英語を教えるのは早すぎること、中学校でもっと英語の時間を増やすことが主張。理由は、日本の私立小学校で英語を教えているところでも中学校から始めることが有効であることが立証されていないことや英語を教える教員数が絶対的に足りないことなどだ。
中学校から英語を始めて一流の英語の使い手になっている自分自身や國弘正雄、村松増美氏を例に出して、中学校からで英語は大丈夫とする論はどうなのだろう。むしろ例外的に夢中で勉強して使えるようになった事例でしかないように思う。
けれどこういう有名人が言うことの世論への影響は案外大きいのかもしれない。