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お気楽ビジネス・モード

ビジネスライフを楽しくする知恵や方法を紹介する

良品計画『無印良品の業務標準化委員会』誠文堂新光社

2019-12-22 23:05:10 | 組織・組織行動
良品計画では、2007年に業務標準化委員会を立ち上げた。この委員会では、業務の「共有化、マニュアル化、見える化」と「強い現場力」をつくるんだとか。
オフィスをリノベーションした話が面白い。
木を使ったオフィス、働きたくなるオフィスづくりは、さすが無印良品という感じ。フリーアドレスの導入では、社員にアンケートを取り、部署ごとにどういうPCや電話が必要か、入室権限などのセキュリティレベルをどう設定するかを細かく決めたらしい。
「わが社にあるのは思想と人。それと店舗だけです」と金井会長は言っている。
消費社会、ブランド信仰のアンチテーゼとして生まれた「無印良品」というブランド。
このブランドを育てるのはなかなか難しそう。

ジョン・P・コッタ―『実行する組織―――大企業がベンチャーのスピードで動く』 ダイヤモンド社

2018-11-11 05:23:15 | 組織・組織行動
コッターってまだ元気なんだなあ。
この本では、変化のスピードが速く、不確実性の高い環境で、大組織が競争に勝つための解決策として、「デュアル・システム」という考えを提唱している。企業変革の8段階目のことでもあるそうだ。
企業が発展すると、だんだん「ピラミッド型組織」が確立するが、どうしても効率性、経済性を目指すので分業が確立し、階層もでき官僚主義的になる。起業当時は創業者の周りのコア人材がいて、そこに「ネットワーク型組織」ができ、そこがやがて階層化すると、企業の発展とともに企業当初の熱が失われ活気がなくなる。
そこでそれを補うこのデュアル・システムが必要になるのだが、業績を上げているアップルやグーグルは自然とそういうシステムが機能しているという。

デュアル・システムの成功のカギとして、①社内のさまざまな部門からたくさんのチェンジ・エージェントを動員する、②「命じられてやる」のではなく「やりたい」気持ちを引き出す、③理性だけでなく感情にも訴える、④リーダーを増やす、⑤階層組織とネットワーク組織の連携を深める、という「5つの原則」とか。
さらに、ネットワーク組織が戦略的に重要なイニシアチブを加速させるために、(1)危機感を高める、(2)コア・グループを作る、(3)ビジョンを掲げ、イニシアチブを決める、(4)志願者を増やす、(5)障害物を取り除く、(6)早めに成果を上げて祝う、(7)加速を維持する、(8)変革を体質化する、という「8つのアクセラレータ」を挙げている。

このデュアル・システム、たとえば中国の官僚組織と共産党の関係か?
共産党も官僚組織なのでちょっと違うが、共産党がネットワークになっている感じだろう。
官僚組織とは別に、社長のビジョンが浸透し、そのために働こうとする人たちがあちこちにいるってところか。
ネットワーク組織はクロスファンクショナルなプロジェクトなどとはまた違うという。
そして、やる仕事は階層組織と重ならないこと。
このコアグループの活動に5~10%の社員が参加すれば成功するってのがコッターの経験とか。
常に環境変化と危機感を共有するイベントと、ビジョン浸透のしくみ、階層組織とは違う活動組織をつくればいいような気もする。

冨山和彦『挫折力』PHPビジネス新書

2012-09-23 10:14:16 | 組織・組織行動
産業再生機構のCOOを務めた冨山和彦氏が書いた本。
挫折を経験することは悪いことではない。むしろ、それを乗り越えれば打たれ強いリーダーになることができる。挫折を経験しない優等生リーダーは、有事にとまどい、力を発揮できない。
悩むのはヒマだから。全身全霊で取り組めば悩む暇も無い。
そんなことが書いてある。
東大卒、在学中に司法試験合格、スタンフォードのMBA。経歴だけ見ると挫折とは無縁のように思っていたが、司法試験は3回目の合格。BCGでは会社事情で1年で転職、その他、携帯電話の販売店という未開拓事業の立ち上げなどで人間関係のドロドロも経験する。
スタンフォードに行ってMBAで学ぶ「競争戦略」「マーケティング」「組織マネジメント」は実践で役に立たないと思ったとも言っている。
様々なことに挑戦し、失敗を経験し、挫折を分析することで次の戦いに行かせる、挫折をしてみると自分という人間が見えてくる、とも書かれている。
理論ではなく体験に基づく話なので説得力がある。

山岸俊男『社会的ジレンマ』ちくま新書

2010-10-11 13:56:33 | 組織・組織行動
社会心理学者による囚人のジレンマの様々な実験結果から、社会的ジレンマをどう解決できるのかを問う意欲的なテーマの本。

著者は社会的ジレンマを次のように定義している。

①一人ひとりの人間が協力行動か非協力行動のどちらかを取る。
②そして、一人ひとりの人間にとっては、協力行動よりも非協力行動を取る方が、望ましい結果を得ることが出来る。
③しかし、全員が自分にとって個人的に有利な非協力行動を取ると、全員が協力行動を取った場合よりも、誰にとっても望ましくない結果が生まれてしまう。逆に言えば、全員が自分個人にとっては不利な協力行動を取れば、全員が非協力行動を取っている場合よりも、誰にとっても望ましい結果が生まれる。

囚人のジレンマ実験を何回か繰り返すときに、最も得をする行動は「応報戦略」というもの。相手に協力的な行動または非協力的な行動をとり続けるより、相手が行動したことを後追いでまねをしてほうが、結局得をする。

しかし、かしこい合理主義ばかりが得をするわけではない。

たとえば、囚人のジレンマの応用実験をゲーム理論を理解している研究者と感情で動く学生を被験者にしてみると、結果として学生のほうが得をするという結果が出たらしい。最初の被験者の行動結果を次の被験者に知らせてから、どう行動するかを判断させたのだ。そのことから、損得勘定で合理主義的に動く者より、「みんなが協力するなら自分も協力する」というような一見非合理主義に見える行動が実は得をするという結果になった。

山岸氏はこれを「みんなが」状況と呼んでいる。

いじめについての研究で、みんなの半分以上がいじめに抵抗するなら、自分も抵抗するという実験結果もあるそうだ。「みんなが」状況というのは、「寄らば大樹の陰」的に思えるが、実は世の中をよくするかしこい適応なのだそうだ。

また、感情は非合理主義的な行動と捉えられているが、感情的な行動が得をする場合があることも示している。詳しくは、著者が訳したロバート・フランク『オデッセウスの鎖 適応プログラムとしての感情』を読めとのこと。

ピーターズ&ウォータマン『エクセレントカンパニー』講談社文庫

2010-07-31 16:57:48 | 組織・組織行動
マッキンゼーの7Sの出典は何だったかなあ、と思って調べると『エクセレントカンパニー』だった。
久しぶりに手にすると下巻は日焼けして読みづらくなっていた。
7Sについては上巻に解説がある。

「ひとに対する配慮なくしてよい機構などというものは考えられないし、逆もまた真なのである。・・・組織づくりを知的に考えようとすれば、互いに切り離せない関係にある少なくとも7つの変数を同時に包含して扱っていかざるをえないことである」

その7項目として以下が上げられ、覚えやすいように7つのsで始まる単語に落とし込んだのが7Sなのである。

①機構(structure)
②戦略(strategy)
③ひと(staff)
④経営の型(style)
⑤体系と手順(systems)
⑥指標となる理念および企業文化と言うべき共通の価値観(shared value)
⑦現有する(または望ましい)企業の強さ、あるいは技術)(skills)

「組織としては、ハードウエア:戦略(strategy)と機構(structure)ばかりでなく、ソフトウエア:経営スタイル(style)、制度(systems)、ひと(staff)、共通の価値観(shared value)も同様に大切であるという考え方をはっきり打ち出していくうえで、こうしたフレームワークが大きな助けとなった」

しかし、組織を変えていく上で、ソフトなSに対する対応が重要であることはわかっていたが、具体的な設計手順が不足していた。そのため、マッキンゼーでは「革新的な企業とは、新製品を出して大きく売上げを伸ばしていく能力に優れているばかりでなく、周囲のあらゆる変化に器用に対応していく能力に秀でた企業」と定義して、その具体的な方策と特徴を調べた。
つまり超優良企業=エクセレントカンパニーとは4Sにも優れた企業なのである。

エクセレントカンパニーの8つの基本的特徴

①行動の重視
②顧客に密着する
③自主性と企業家精神
④ひとを通じての生産性向上
⑤価値観に基づく実践
⑥基軸から離れない
⑦単純な組織・小さな本社
⑧厳しさと緩やかさの両面を同時に持つ

この本が出版されたのは1980年代半ばということもあり、日本企業が優秀事例としてたびたび出てくる。
日本とドイツがアメリカより成功したのは、アメリカにはビジネススクールがあるが、日本とドイツにはないから現場から工夫したのだ、というような記述さえある。MBAに対する批判は当時からあったのだと感心する。

出版から20年以上経って、事例などで、はてな?と思うところもある。しかし、7Sというフレームワークが今も生きており、ソフトSに対する注目は以前より高まっているように思う。

訳者が大前研一であり、この本にもマッキンゼーの日本支社長として登場する。
大前研一の第一線での活躍期間も長い。

ジョン・コッター『企業変革の核心』日経BP社

2010-07-19 22:32:42 | 組織・組織行動
 『企業変革力』『企業変革ノート』ではコッターの企業変革における8段階のプロセスが展開されていた。
 この本はその第一段階の「危機感を生み出す」プロセスに焦点を当てて書かれている。コッターによるとこの第一段階が最も重要なのだそうだ。

「危機感は放っておいて生まれるものではなく生み出すものであり、火を燃やし続けるためには、いつも気をつけていて必要に応じて薪を足さなければいけない」

 すべては危機感から始まる。

 コッターは本当によく訳のわかった研究者だと思う。
 細かいことだが、プレゼンについて、資料を入念に準備し、五感に訴えることを勧める。その一方で、「たどたどしい話しぶりは、人間味を添えてむしろ好ましい。・・・多少の言い間違いは、“自分の言葉で話している”という感じを与え、立て板に水のうさん臭さがない」とも言っている。

 危機感の敵は「スケジュールのいっぱい詰まった手帳だ」という指摘も面白い。どうでもいいことに忙殺されていたら、本当の危機感は生まれない。

「変革を実践するのに一流大学のMBAなどいらない。必要なのは自分の職場をつねに進化させたいという強い意志。あとは小さな思いつきと、それを実行に移す行動力があればよい」

 危機をサクセスストーリーにという章にそのプロセスが書かれている。

 1.予想外の危機に直面する
 2.パニックに陥らず、ダメージコントロールにも走らずに対応する。
 3.この事態を部下がどう受け止めるかを考える
 4.部下の反応を見越して計画を練る
 5.危機による痛手を和らげる措置は講じない
 6.危機感を行動で示す
 7.この危機を乗り越えられるという前向きのメッセージを発信する
 8.周囲の危機意識を高める
 9.従来はtげいこうにあってできなかったことが出来るようになる
 10.変革が結果に結びつく

 変革否定論者に対応する攻略法も面白い。

①邪魔者を邪魔立てする 変革とは無縁の、でも忙しい部署に移す 
②追い払う 正面から賛否を聞き、否定なら解雇する
③周囲から圧力をかける 
この攻略法で、『カモメになったペンギン』の読書会をして、あの人は「ノーノーだ」とみんなに思わせるやり方を紹介している。こういうのは遊び心があって面白いかもしれない。

これはコッターの書いた絵本を売るための巧妙なマーケティング戦略なのだろうか。

E.H.シャイン『企業文化 生き残りの指針』白桃書房

2010-07-11 10:41:40 | 組織・組織行動
シャインの有名な本だけあって、貴重なことが多く書かれている。
訳者の金井教授の解説によれば、シャインの本にしては事例が多いとのこと。たしかにDECやチバガイギー社などの実際のケースがいくつか登場している。


以下、抜粋ノート。

文化はわれわれ個々人および集団としての行動、認識方法、思考パターン、価値観を決定する強力ではあるが潜在的でしばしば意識されることのない一連の力である。組織の文化的要素が経営の戦略、目標、業務方針を決定する。組織を効率よく、効果的なものに変えていこうとするなら文化が組織の誕生以来果たす役割を理解しなければならない。
文化の本質を操っているのは、学習され共有された暗黙の仮定である。
組織の仕組みを変えようとしてきたのであれば、現状の文化によってどのように助けられたか、あるいは妨げられたかを知らねばならない。文化的な仮定の中にうまくいかなくなった仮定が見つかれば、どうやってそれを変えていくか考えなければならない。


企業文化のアセスメントは、アンケート手法より、同僚を集めて(新参者を含めるのもよい)、組織が成功を続けるために問題となりそうな分野に関して話し合うことが有効。
・事業にまつわる問題を定義する
・文化の概念を復習する
・文物を特定する
・組織の価値観を特定する
・価値観を文物と比較する
・他のグループにも同じことを繰り返す
・共有されている仮定をアセスメントする


変容のモデル
・第一段階 解凍-変化の動機付けを行う 現状否認
・第二段階 古い概念に取って代わる新しい概念および新たな意味を学習する
・第三段階 新しい概念と意味の内面化 自己の概念のアイデンティティへの取り込み


チェンジ・リーダーおよびチェンジ・エージェントの特徴
・信頼性
・明白なビジョン
・ビジョンをはっきりと表明する能力

アセスメント・プロセスにおいて最も重要な点の一つは、将来の事業慣行を既存の文化の主題と結びつける方が、文化を変えようとするよりもはるかに容易である。効果的な組織であればこのやり方で、変化することのない少数の中心的価値観や仮定のまわりに自分たちの慣行を進化させていくことができる。

以下、感想。

シャインの企業文化へのアプローチは集団心理を対象としたより分析的なアプローチのように思える。
企業文化を分析して、生体のとしての組織のアイデンティティを失わないように、変えるべき大事なところをより効果的に変えるという内科的療法に向いているように思う。
コッターの8段階の組織変革の方法の提示とは少しアプローチの仕方が違う。どちらかといえばコッターは外科的療法なのか。

どういう方法がよいかは組織の状態と課題の質によるのだろう。

しかし、シャインのいうように企業文化を軽視すると目的とした変革が頓挫してしまったり、M&Aがうまくいかなかったりする。内外の事例をみると、これは後で気づくことが多いように思う。そのためにもシャインのアプローチは有効なのかもしれない。

田尾雅夫『組織の心理学』有斐閣

2009-09-24 00:30:53 | 組織・組織行動
組織行動という分野はフレームワークでちょこちょこ考えるのには向いていないのかもしれない。何よりも感情をもって動く生物を対象にするのできまった枠組みでは考えにくいのだろう。
でも『組織の心理学』にはフレームワークが満載だ。

この本は同志社のビジネススクールで田尾教授がテキストとして使っているらしい。事例の少ないコンパクトな理論書だが、組織を官僚制と対極にあるオープンシステムとして捉え、閉じたものではなく開かれたものとして、枠組みでくくるよりも例外や個別性を重視しているように思う。

田尾氏自身が述べているようにこの本はこれまでの理論的集大成として授業用にまとめられているので具体的なケースが一切なく、理論が凝縮して展開されている。読むだけでは少しわかりにくい本ともいえる。
本の中で参加の心理学を組織論に展開したリッカートの連結ピンモデルが紹介されている。部長や課長というのを連結ピンモデルで考えると、上と下の組織に挟まれ、かわいそうに見える管理職も実は情報流通と参加意識のピンとして重要な役割を果たしているのがよくわかる。

ステファン・P. ロビンス『組織行動のマネジメント』ダイヤモンド社

2009-09-23 23:54:34 | 組織・組織行動
欧米のビジネススクールのOBH(組織行動)の授業で最も多く使われているらしい。
テキストなので重要でまっとうなことばかりが書かれている。いちいち頷くことが多い。

とくにコンフリクトの定義もなるほどと思う。昔はコンフリクト(組織内の人と人との軋轢や摩擦)があること自体が問題だとされた。とくに官僚制組織では。それがオープンシステムになるにつれて、コンフリクトは自然な現象であり、コンフリクトは許容すべきという「人間関係的見解」になり、現在ではコンフリクトが集団を活性化し、自己批判的、創造的にするとして、コンフリクトを奨励すべきだという「相互作用的見解」に変わってきているという。
この見解によるとコンフリクトは4つの段階のプロセスがある。
第一段階:潜在的対立、第二段階:認知と個人化、第三段階:行動、第四段階:結果。
生産的な結果になるか、非生産的な結果になるかはそのプロセスでどのようにコンフリクトをコントロールするかによる。

インテルなど革新的な技術で勝負しているところが「建設的な対立」を企業風土として大事にしているのを聞いていたが、通常の組織でもコンフリクトは集団業績の向上のために奨励すべきとのこと。
そう考えると日々のコンフリクトに悩むのも楽に思える。

金井壽宏『組織変革のビジョン』

2007-03-18 20:23:19 | 組織・組織行動
1920年代に経営環境の変化を受けてデュポンが事業部制を採用する研究を行ったチャンドラーの『組織は戦略に従う』。ミシガン大学のノール・ティシーが提唱したぬるま湯を熱していくと脱出できずにゆであがってしまう「ゆでガエル」理論。組織でのサバイバル不安感を高め、学習不安感を下げることが変革につながるというシャインのSA>LA理論。小さなルーチンワークの計画が大きな計画を駆逐するというマクラウドの「計画のグレシャム法則」。この本はこういう組織論に関する貴重な理論を織り混ぜながらビジネスパーソンが読みやすいように書かれている。しかし金井教授はちょっと他人の引用が多すぎるのが気になる。これは権威に弱いのか、持論に自信がないのか、それとも研究者に特有の書き方なのか。