経営戦略のいろんな本に登場する「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」(PPM)について本家の理論をもう少し知りたくて読んだ。
あらためて読むと、PPMは事業展開で限られた資源配分を決定するときに事業バランスどう考えるかについて優れていると思う。何を切り捨てるかを決めるためだけではなく、成長性とシェアの2軸で事業を評価し、その企業の資源配分を決めるためのものだ。
cash cow(金のなる木)、star(花形に近い意味)、problem child(問題児)、dog(負け犬)に区分すると、今後の収益見通しやその企業の強みと弱み、コアコンピテンスなどが見えてくる。その上で事業バランスを考え、投資の配分を決める。この本ではdogとされている事業についても、短期の収益性だけを見るのではなく、時間軸や他の事業との相乗効果などを含めた総合的な評価の必要性も書かれている。ただしこのフレームワークが有効なのは、あくまでシェアを競うことが重要な業種であって、多数乱立業界やニッチ企業には成長性とシェアの2軸での分析には限界があることも指摘している。BCGは40年以上のコンサルティングを通じて、このフレームワーク=戦略コンセプトを磨いていったのだろう。
cash cowばかりの事業では将来の成長が見込めないし、starにどこまで資源を投入するのかの判断も必要だ。problem childの先行きをどう読むか、dogは撤退かproblem childになる可能性はないのかなど考える資料をPPMが提供してくれる。
ミノルタのカメラ事業の変遷が事例に出ているが、当時dogともいえるカメラ事業をα7000で再生させたのは、dogだからといって切りにくく、逆にじっくり育てて成功することも日本企業ではあることを解説している。しかし、ミノルタは、その後コンパクトカメラのデジタル化に乗り遅れ、結局カメラ部門をソニーに売却することになった。PPMは静的でなく、将来の時間軸でも動的に捉えるべきだろう。
サントリーのビール部門が、プレミアモルツと金麦の成長で部門設立後初めて黒字になったというニュースが最近あった。これなども単にdogだからといって切るのが得策かどうかを考えさせらる典型だろう。ただし、今後の展開はわからないが。
この本では、日本企業が競争優位を築くためのポイントとして、価値創造の仕組み、儲けの仕組みとなる事業構造のあり方、競争要因の明確化とその持続、の3点を挙げている。そしてこれらを解決するためのツールとして、「バリューマネジメント」「セグメントワン」「デコンストラクション」「PPM」「エクスペリアンス・カーブ」「タイムベース競争」の6つの戦略コンセプトを提示している。
タイムベース競争で、意思決定に割く時間の問題として「会議」の問題が正面から取り上げられているのは面白い。
生産現場ではオペレーションの問題として、どの工程を短縮できるか、時間短縮するのに何がボトルネックになっているかを考える。しかし、ホワイトカラー労働ではそれがつかみにくい。
そのため、日本の会議の「根回し」について、どうして必要なのかを分析し、根回しの工数は<深さ>と<数>の掛け算であるので、深さと数をコントロールすることが大事であると解説している。<深さ>にはさらに「詳細度」「絞り込み度」「口止め度」の要素があるという。「口止め度」などは日本特有の意思決定についてのフレームなのだろう。
会議の機能として報告する会議なのか、議論する会議なのか、決定する会議なのかによって、出席者の顔ぶれ、議題のあげ方、資料のつくり方、あるいは時間のとり方を的確にコントロールすべきとも指摘している。意思決定には「GO」「NOT GO」「NOT NOW」しかない。「NOT NOW」は保留ではなく決定の延期ということを明確にする必要があるとも言っている。
「無駄な会議」が多いという意見はよく聞く。しかし、会議をこんな風にコントロールすると本当にホワイトカラーが行う工程の時間が短縮できるように思う。実際にはそのための準備時間とのトレードオフになると思うが、習慣化すればこれも経験曲線の効果があるのかもしれない。
「根回し」を風土だからとか企業文化だからというような理由付けより、意思決定のためにどのような障害と機会があり、どのような課題設定をするかが大事なのだろう。
あらためて読むと、PPMは事業展開で限られた資源配分を決定するときに事業バランスどう考えるかについて優れていると思う。何を切り捨てるかを決めるためだけではなく、成長性とシェアの2軸で事業を評価し、その企業の資源配分を決めるためのものだ。
cash cow(金のなる木)、star(花形に近い意味)、problem child(問題児)、dog(負け犬)に区分すると、今後の収益見通しやその企業の強みと弱み、コアコンピテンスなどが見えてくる。その上で事業バランスを考え、投資の配分を決める。この本ではdogとされている事業についても、短期の収益性だけを見るのではなく、時間軸や他の事業との相乗効果などを含めた総合的な評価の必要性も書かれている。ただしこのフレームワークが有効なのは、あくまでシェアを競うことが重要な業種であって、多数乱立業界やニッチ企業には成長性とシェアの2軸での分析には限界があることも指摘している。BCGは40年以上のコンサルティングを通じて、このフレームワーク=戦略コンセプトを磨いていったのだろう。
cash cowばかりの事業では将来の成長が見込めないし、starにどこまで資源を投入するのかの判断も必要だ。problem childの先行きをどう読むか、dogは撤退かproblem childになる可能性はないのかなど考える資料をPPMが提供してくれる。
ミノルタのカメラ事業の変遷が事例に出ているが、当時dogともいえるカメラ事業をα7000で再生させたのは、dogだからといって切りにくく、逆にじっくり育てて成功することも日本企業ではあることを解説している。しかし、ミノルタは、その後コンパクトカメラのデジタル化に乗り遅れ、結局カメラ部門をソニーに売却することになった。PPMは静的でなく、将来の時間軸でも動的に捉えるべきだろう。
サントリーのビール部門が、プレミアモルツと金麦の成長で部門設立後初めて黒字になったというニュースが最近あった。これなども単にdogだからといって切るのが得策かどうかを考えさせらる典型だろう。ただし、今後の展開はわからないが。
この本では、日本企業が競争優位を築くためのポイントとして、価値創造の仕組み、儲けの仕組みとなる事業構造のあり方、競争要因の明確化とその持続、の3点を挙げている。そしてこれらを解決するためのツールとして、「バリューマネジメント」「セグメントワン」「デコンストラクション」「PPM」「エクスペリアンス・カーブ」「タイムベース競争」の6つの戦略コンセプトを提示している。
タイムベース競争で、意思決定に割く時間の問題として「会議」の問題が正面から取り上げられているのは面白い。
生産現場ではオペレーションの問題として、どの工程を短縮できるか、時間短縮するのに何がボトルネックになっているかを考える。しかし、ホワイトカラー労働ではそれがつかみにくい。
そのため、日本の会議の「根回し」について、どうして必要なのかを分析し、根回しの工数は<深さ>と<数>の掛け算であるので、深さと数をコントロールすることが大事であると解説している。<深さ>にはさらに「詳細度」「絞り込み度」「口止め度」の要素があるという。「口止め度」などは日本特有の意思決定についてのフレームなのだろう。
会議の機能として報告する会議なのか、議論する会議なのか、決定する会議なのかによって、出席者の顔ぶれ、議題のあげ方、資料のつくり方、あるいは時間のとり方を的確にコントロールすべきとも指摘している。意思決定には「GO」「NOT GO」「NOT NOW」しかない。「NOT NOW」は保留ではなく決定の延期ということを明確にする必要があるとも言っている。
「無駄な会議」が多いという意見はよく聞く。しかし、会議をこんな風にコントロールすると本当にホワイトカラーが行う工程の時間が短縮できるように思う。実際にはそのための準備時間とのトレードオフになると思うが、習慣化すればこれも経験曲線の効果があるのかもしれない。
「根回し」を風土だからとか企業文化だからというような理由付けより、意思決定のためにどのような障害と機会があり、どのような課題設定をするかが大事なのだろう。