
サム・ウォルトンが創設したウォルマートの出店戦略は今も変わっていないらしい。
(1)競合相手のいない田舎町に出店する
(2)利益よりも客数の確保
(3)広告費をかけずに上手にPRをする
(4)クリティカル・マス早期達成を目指す
その天才サム・ウォルトンは1992年に亡くなっている。しかし、ウォルマートはその後の成長がめざましかった。1990年1525店舗が2002年には4414店舗になり、売り上げは258億ドルから2198億ドルにもなっている。
この成功要因の一つは消費動向を捉えるITへの投資である。データウェアハウスと呼ばれるデータベースは国防総省並みの容量らしい。
サム・ウォルトンの自伝を読むとサムはITへの投資をためらっていたが、それでも通信衛星打ち上げを了承している。サム亡き後、ITへの投資に反対する者はいなかったのかもしれない。
もう一つが物流システムだろう。ハブ・アンド・スポーク、クロス・ドッキング方式などいかに商品切れを無くし、在庫を減らすかを考えて、テクノロジーの進化とともにシステムを発展させている。
これらはサム・ウォルトンを引き継いだCEOデビッド・グラスの功績が大きいらしい。この本でもデビッド・グラスは『中興の祖』と位置づけられている。
これほど大きくなったウォルマートだが、従業員を掌握するのにも力を入れている。
この本では4つの従業員掌握術が紹介されている。
(1)従業員を大切にしているという精神を形で見せる
→ 従業員をアソシエートと呼び、年次報告書などで一番大事だと強調する
(2)会社の利益や売り上げに貢献すれば昇進のチャンスがある
→ パートタイマーから店長への登用など日本のスーパーも模倣している
(3)会社が成功して株価が上がれば自分の金銭的な成功につながる
→ 給与を抑え、ストックオプションを与えている
(4)共同体の雰囲気をつくる
→ お祭り騒ぎやイベントで熱狂させる
ディスカウントストアから、会員制クラブ、スーパーセンターなど業態の変化にあわせてウォルマートは成長してきた。
しかし、エンロン事件後、ストックオプションに頼る報酬制も問題視され、EDLPを支える低コスト・低価格販売も途上国の労働コストの上昇で低価格のPB商品の生産が危うくなっている。
国際戦略については、ドイツで失敗し、その教訓をイギリスとカナダで生かして成功した。アジアへは日本だけでなく、韓国、中国にも進出している。ドイツでの失敗はサプライヤーの把握、現地安売店との熾烈な価格競争、労働組合対策などであった。
西友の「KY=価格(K)、安い(Y)で行こう」は、日本版EDLP(EveryDay, LowPrice)戦略なのだろう。
アメリカでの発展と異なり、すでに成熟市場である先進国日本でウォルマートが成功するにはいくつものハードルがあるように思う。