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お気楽ビジネス・モード

ビジネスライフを楽しくする知恵や方法を紹介する

今野浩一郎『人事管理入門』日経文庫

2010-06-30 20:27:52 | 人材マネジメント
誰もが人事管理の基本的な知識をもてば、会議でも共通の基盤を持つことができる。自社の何が問題か、戦略との整合性、他社との強みと弱みなどが建設的に議論できると思う。

そういう意味でこの本は1時間くらいで読めて、基本的な要素はすべて入っている。もちろん190ページに満たない本なので解説が不十分な項目もある。

基本的に押さえられる知識はこのようなもの。

・基本的な枠組みとしての社員区分と社員格付け
・社員格付けにおける職務遂行能力の分析と分類による職能資格制度の作り方
・人事配置・異動政策の留意点
・人事評価における能力評価、情意評価、成績評価の考え方とその方法
・給与と評価の報酬への反映方法
・教育訓練、人材育成の考え方とその方法

人事制度をどのように設計するかは、その企業が戦略目標を達成するために、従業員にどのように働いてもらいたいのかが基本となるだろう。

企業理念が確固たるもので浸透力も強く、従業員にとって職位や報酬などまったく関係ないという組織ではフラットな構造で、みんな同一賃金でも従業員は気持ちよく働くのかもしれない。しかしそんな組織は現実にはない。

その企業がどういう方向性をもっており、どのような能力や成果が期待されるのか、そのために公平な評価はどのようなもので、報酬をどう分配するのが最も適切なのか。昇進・昇格のしくみはどう設定すべきか。そのために人材マネジメントがあり、人事制度がある。

しかし、「人が人を評価するのに客観性などない」「どういう制度も万人にとって公平なものはない」という主張が強くなると人事制度の改革は難しくなり、小手先の不満の解消にしかならない。客観性や万人という100%基準でall or nothingで考えるのではなく、より100%に近づけるにはどういう方法があるのかを考えるのが適当だろう。

すべての人は自分の経験の上に、今の自分がある。過去を全否定する人はいないだろう。どうしても自分の成功体験や失敗体験、自分の人生の価値観にとらわれる。みんなが自分は何にとらわれ、相手は何にとらわれているのかを自覚して議論する。

人が人を考えるときに、そういうふうに冷静になれるかも組織改革において大きな要素だろう。

佐々木俊尚『2011年 新聞・テレビ消滅』文春新書

2010-06-28 23:57:23 | 将来予測
マーケットとしてのマスの消滅と従来型のメディアによる情報流通の独占が崩れること(メディアのプラットフォーム化)によって、新聞・テレビが消滅するというのが著者の主張だ。

メディアのプラットフォーム化とはこういうことだ。
グーグルの及川卓也氏によるとメディア機能は「コンテンツ」「コンテナ」「コンベア」の3つに分けられ、そのあり方が変化している。

新聞で言うとこういう変化。

コンテンツ 新聞記事  → 新聞記事
コンテナ  新聞紙面  → ヤフーニュース、検索エンジン、だれかのブログ
コンベア  販売店   → インターネット

テレビではこうなる。

コンテンツ 番組           → 番組
コンテナ  テレビ          → ユーチューブ、ニコニコ動画
コンベア  地上波、衛星放送、CATV  → インターネット

確かに著者の言うように、技術の進歩だけによって新聞やテレビのような現在のメディアが滅びるわけではない。電子メディアの新興によって、アメリカの新聞社は講読部数、広告収入が減少し、いくつかの会社が倒産に追い込まれている。
しかし日本ではR25のように紙のメディアが人気の出ることもある。これは技術の進歩のほかにマーケットの変化をどう捉えるかによるのだ。
消費者がメディアに求めるニーズの多様化によって、総合雑誌のようなマスとしてマーケットを捉える編集の仕方では売れなくなっている。R25のように世代によるセグメンテーションを行い、その対象にライフスタイルを提案するというアプローチをとり、媒体をR25世代にだけ必要な情報を提供するフリーペーパーというポジショニングをとるかによって成功している。マーケットの捉え方とマーケティングの問題もあるのだ。

新聞はメディアにおける重要度が昔に比べて下がっている。新聞の宅配が有料なのに対してネットは無料、その上グーグルなど検索サイトができたことにより、ユーザーは記事に直接アクセスするようになった。新聞が紙面を編集して、社会的な重要度を決めるという行為自体が貴重でなくなっているのだ。

それでも日本の新聞はしぶとく生き残っている。
それは全国的に整備された宅配体制と新聞紙という持ち運びやすく他の用途にも使える素材の特性が愛されているからかもしれない。
もし新聞がアマゾンのキンドルではなく、紙のように薄い媒体になって、iPadのように指でスライドしてページを繰ったり、文字を拡大できるようになればどうだろう。おそらく宅配の方が便利だという人はいなくなるだろう。これまで宅配に関わっていた人件費や設備費が節減できるので、購読料も安くできる。弁当を包んだり、ゴミをくるんだりするする紙は、おそらくホームセンターで安く売り出され、ヒット商品になるだろう。

それに比べてテレビがまだまだ残りそうなのは電波免許で保護されている要因が大きい。NHK以外は「電波は無料」という意識が抜けないのも要因だろう。スカパーなどのCSが普及しない理由もそこにある。しかし、「あるある大辞典」事件以来、電波免許がテレビの質を低下させる歯止めにはなっていないことは世間の人はわかり始めている。
莫大な制作費は大手広告代理店とテレビ局に大方が渡り、制作会社には1割程度しか入らない。番組づくりが、どの局も似たような企画で同じタレントを使い、短時間で荒っぽく作らないといけない悪循環に陥っているのも無理はない。

しかし、セット・トップ・ボックス(STB)という番組コンテンツのコントロールする機器が開発されており、これがテレビのプラットフォームを崩すかもしれないらしい。


著者の話はいつもわかりやすいが、なんか信じられない雰囲気もある。

しかし、ちょっと昔、著者が言っていたようにグーグルが本当に世界を変えてしまった。

今度の話も本当かもしれない。

マッキンゼー・アンド・カンパニー『企業価値評価』ダイヤモンド社

2010-06-27 17:24:10 | 財務・会計
第3版を読んだが、今では2分冊になっているようだ。
ファイナンスの本は概して分厚い。

この本はマッキンゼー・アンド・カンパニーによる企業価値評価を詳細に解説した本。

事業価値=予測期間におけるCFの現在価値の和+予測期間以降のCFの現在価値の和(継続価値)

継続価値=NOPLAT×(1-g/ROIC)/(WACC-g)

NOPLAT=みなし税引後営業利益。各期ごとのCFを予測する期間のよく期のものを用いる
ROIC=新規投資に対するリターンの向上分
g=NOPLATの永続的な成長率
WACC=加重平均資本コスト


WACC法だけでなくAPV法の解説もある。

フリーリスクレートをどうして10年国債のレートにすべきかや陥りやすい誤りも丁寧に説明してある。

βLとβUの算出方法の解説もある

βU=βL/(1+(1-Tc)×B/S)

βL=現在の資本構成下のβ
Tc=限界税率
B/S=時価ベースの負債比率
βU=有利子負債がない場合のβ(ビジネスリスクを表す)

企業価値は、Σ(n期間のFCF/(1+WACC)のn乗)である。

どういう事業を行ってFCFを生むのか、そのための資金調達でいかに資本コストを下げるのか、単純だけれど難しい作業だ。

つくづくCFOって大変だと思う。

戸田覚『すごい人のすごい企画書』PHP新書

2010-06-26 23:56:24 | 仕事術
人に企画書の書き方を教えるためにいろいろ本を探しているがよい本がない。

相手に企画書を印象付けるために、やたらと飾ったり、奇をてらった見出しをつけることを勧めるものなどもある。広告代理店がつくる企画書ならそれもよいのかもしれない。しかし社内の企画書や自治体に出す企画書はまた違う作り方があると思う。

この本は企画書を「説明型」か「インパクト型」に分けて、これらの有効性をキラーインフォメーションのインパクト、相手の関心、内容の難しさ、裏づけ情報の4つの視点でどちらを使うべきかを解説している。またプレゼンが終わるまで企画書は渡さないことを勧めている。資料を配るとプレゼンに集中してもらえないからという理由だ。そういう場合もあるが、違う場合もあると思う。資料に書き込みたい人がいる場合は別だろう。

この手の本は自分の経験談で構成されている場合が多い。

広告代理店経験者が書いた本は見栄えやインパクトに主眼を置くし、フリーライターが書いた本はこの本のようにキラーインフォメーションなどで編集者の心をどう揺さぶるかが主眼となる傾向があるようだ。

企画書を書く方法を教える上ではあまり参考にならない本だ。

ノマディック『今さら聞けないツイッターの使い方が面白いほどわかる本』中経文庫

2010-06-06 18:47:36 | デジタル・ツール
タイトル通りのtwitterの解説本。
買うほどの本ではないが、ホントに「今さら聞けない」のでtwitterを使うときの参考に買った。
twilogの存在はこの本で知った。
twitter関連の便利なソフトウエアから、携帯電話やiPhoneでのtwitterの使い方まで解説してある。どこかの雑誌が特集しそうな内容だ。

twitterで世界が変わる。
というような新聞や雑誌の見出しをよく見かける。
これを技術や社会、個人の生活レベルで考えるとどうなのだう。

まず、技術レベルではコミュニケーションの方法そのものが変わるというより、ブログというホームページ作成ツールに、より利用ハードルの低いツールが加わったということだろうか。しかし、このハードルを低くするためにいろいろ施してある工夫に驚く。
まず140字という制限。この制限は自由を奪うように見えて、「つぶやき」でも発信できるという自由を与えている。
フォロー、やフォロアー、リツイート、ハシュタグなどこの世界独特のお友達感覚や情報の鮮度などを感じる方法が考えられている。

社会レベルでは、twitterが新たなコミュニケーションツールとなり、インターネット上の情報のやりとりが増え、経済効果も高めるかもしれない。
しかしこれが出来たことによりブログやSNSの利用者が減るというカニバリゼーションも考えなければならない。

個人レベルでは、twitterというミニブログがメディアに加わることで、インターネットや携帯電話で情報発信し受け取る企業や個人が増えているのは確かだろう。先日、竹中平蔵氏もtwitterを始めた。
個人の生活時間では、ブログ利用からtwitter利用へシフトされているし、ブログを作ったことのない人までtwitterなら毎日情報発信している。

つぶやきをビジネスに変えるという意味では世界を変えているのかもしれない。

では、つぶやきではなく「ためいき」をビジネスに変えることもできるのだろうか。
とても暗い世界ができあがるかもしれない。

http://twitter.com/okirakuadachi

ブリーリー他『コーポレート・ファイナンス〈下〉』日経BP社

2010-06-06 12:33:44 | 財務・会計
最終章の第35章に結論としてファイナンス理論における最も重要な7つの考え方が書かれている。

①純現在価値
プロジェクトの価値を評価するときに、そのプロジェクトが将来生み出すキャッシュフローを資本の機会費用、すなわちプロジェクトと同じ程度のリスクを持つ証券が提供する期待収益率で割り引くことによってNPVを計算する。

②資本資産価格モデル
モデルの魅力はリスクのある投資に求められる収益率について具体的に考える方法を与えてくれる。
投資に係る分散不可能なリスク、あるいは市場リスクは経済におけるすべての資産の総価値の変化によってその投資の価値がどのくらい影響されるのかの程度によって測ることができる。これがβ(ベータ)である。人々が気にかけるリスクはそれを取り除くことが出来ないリスク、分散不可能なリスクである。
このため資産に求められる収益率はベータの大きさとともに大きくなる。

③効率的な資本市場
証券の価格は利用可能な情報を正確に反映し、新しい情報が入ってくれば直ちにこれに反応する。その類型には程度によって3つある。ウィーク・フォーム、セミストロング・フォーム、ストロング・フォーム。

④価値の加法性と価値保存の法則
全体の価値は各部分の価値の合計に等しい。二つの企業をいっしょにしてもそれだけでは価値を増すことは出来ない。価値保存の法則。

⑤資本構成の理論
資本構成によって企業の資産から生み出される全体のキャッシュフローが代わると言うことでない限り、企業の価値は資本構成から独立である。MM理論。

⑥オプション理論
ファイナンスの世界では、オプションとは現在取り決められる一定の条件で将来取引できる機会を意味する。
単純なコールオプションの値を求めるために開発されたブラックショールズ式。

⑦エージェンシー理論
経営者、従業員、株主、社債保有者には利益相反があり得、その問題に対処するために企業は様々な行動をとっている

また、10の未解決問題も書かれている。

①プロジェクトのリスクと現在価値を決めるものは何か
②リスクとリターンの他に欠けているものは何か
③効率市場理論の例外と考えられる事例はどのくらい重要か
④経営陣はオフバランスの負債か
⑤新しい証券や新しい市場の成功をどのくらい説明できているのか
⑥利益還元政策論争はどこまで解決できるか
⑦企業が負うべきリスクは何か
⑧流動性の価値とは何か
⑨合併ブームをどのくらい説明できるのか
⑩金融構造の国際的な違いをどのくらい説明できているのか

コーポレートファイナンスは難しい。

これは高等数学の理解が難しいという問題もあるが、意思決定に関わる要素の多さ、条件設定で考慮すべき項目の多さ、数値を導くための工程の多さに起因しているように思う。
それらの一つが違っても結果の数値が異なる。
条件設定をいくつかしてそれらを見比べて、妥当な数値を導くという地道な作業も必要だ。

理論や数式のいくつかは、毎日使わないと忘れてしまう知識だと思う。