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お気楽ビジネス・モード

ビジネスライフを楽しくする知恵や方法を紹介する

永野良佑『これだけは知っておきたい「金融」の基本と常識』フォレスト出版

2015-02-08 22:56:23 | 財務・会計
金融業界の新入社員かあら中堅社員までこの一冊で十分!と表紙に書いてある。
この本は金融商品のさわりをカタログのように並べて書かれている。
本は図と見開き2ページなので実質的には半分のページ数の本だろう。情報については、入門書としてはこんな者なのだと思うが、実際に金融業界の社員が役に立つのは、例えば何かの投資信託のカタログのほうだろう。
しかし、素人にとっては知らないことを知るだけでも役に立つ本だ。

久保田博幸『債券と国債のしくみがわかる本』 技術評論社

2015-02-07 22:44:14 | 財務・会計
国債の利回りと価格が反対に動く理由から日銀が国債や手形をオペレーションによって供給量を調整する方法などわかりやすく解説されている。日銀は金利調整で公定歩合を使わなくなった理由もわかる。
国債を通じて金融や経済を知るには良い本だ。
これを読むと国債についてさえ知らないことが多いことに気づく。

著者は、「牛さん熊さんブログ」という金融政策に関するブログをまで書いている。


大学行政管理学会財務研究グループ『これならわかる!学校会計』学校経理研究会

2015-02-01 23:21:19 | 財務・会計
2015年4月から学校法人会計基準が変わるので、これまでの会計書が続々と改訂されている。
監査法人の公認会計士が書いているものが多い中で、この本は私立学校の職員が書いている数少ない本だ。
監査することが目的ではなくて、経理事務をするのが目的のためか、実務的な無駄が少ない。入門書としては本当によくできている。
学校法人会計に関する問題点も示されている。概念フレームワークの確立ってことが課題らしい。でもこれは難しいだろう。
補助金を受けるための資金収支計算書が、活動区分資金収支計算書を追加して、キャッシュフロー計算書に近くなった。消費収支計算書は事業活動収支計算書という損益計算書の並びに近くなったが、基本金の概念はそのまま残った。こういう会計の概念をつくるのは経営原理を考えなくてはいけない。収支バランスが大事で、損益ではない、でもある程度の利益は必要、という概念をどう考えるか。
執筆陣は大学行政管理学会の財務の担当者のメンバー。学校財務のプロフェッショナルの人たちなんだろう。

清稜監査法人『新・学校法人会計基準ハンドブック』清文社

2015-01-12 21:54:18 | 財務・会計

学校会計基準が4月から変わる。
それにあわせて一番早く出版されたのがこの本だろう。
もともと学校会計基準は補助金を受けるために、資金がどのように使われるかを国に報告するのが目的だった。そのために、企業会計とは異なる形式になっていた。資金収支計算書はその目的のためには優れたものだったのだろう。
経営状況を知るために、損益計算書に近い消費収支計算書もあるが、学校は永続的に続くことが条件だということで「基本金」という特殊な会計概念も取り入れられている。
私立学校法、私立学校侵攻助成法という二つの法律から求められる目的が異なるため、二つの収支計算書を持つことになった。
しかし、経営状況を知る目的や利害関係者への説明責任から消費収支計算書はよりわかりやすさを求められるようになった。
企業会計ではキャッシュフロー計算書が当たり前になったが、資金収支計算書をそれに似せるようにした。
この流れが今回の会計基準の様式変更になったのだろう。
資金収支計算書の名称はそのままだが、キャッシュフロー計算書に近い活動区分資金収支計算書を作成することになった。
消費収支計算書は、事業活動収支計算書という名称に変わり、並びも損益計算書に近くなった。
この本の出版の後、続々と新・学校会計基準に対応した本が出されている。
改訂版を含め、まだまだ出版は続くだろう。

この本の良いところは財務分析についての解説があるところだ。
企業会計の分析と似た安全性の分析、効率性の分析、資金安定性の分析が解説されている。
学校法人会計におけるFCF(フリーキャッシュフロー)についての解説もあってなかなかおもしろい。
ただ出版が早すぎたこともあって、分析指標の取り方が私立大学連盟の案と少し異なっている。
ここは要注意だろう。

マッキンゼー・アンド・カンパニー『企業価値評価』ダイヤモンド社

2010-06-27 17:24:10 | 財務・会計
第3版を読んだが、今では2分冊になっているようだ。
ファイナンスの本は概して分厚い。

この本はマッキンゼー・アンド・カンパニーによる企業価値評価を詳細に解説した本。

事業価値=予測期間におけるCFの現在価値の和+予測期間以降のCFの現在価値の和(継続価値)

継続価値=NOPLAT×(1-g/ROIC)/(WACC-g)

NOPLAT=みなし税引後営業利益。各期ごとのCFを予測する期間のよく期のものを用いる
ROIC=新規投資に対するリターンの向上分
g=NOPLATの永続的な成長率
WACC=加重平均資本コスト


WACC法だけでなくAPV法の解説もある。

フリーリスクレートをどうして10年国債のレートにすべきかや陥りやすい誤りも丁寧に説明してある。

βLとβUの算出方法の解説もある

βU=βL/(1+(1-Tc)×B/S)

βL=現在の資本構成下のβ
Tc=限界税率
B/S=時価ベースの負債比率
βU=有利子負債がない場合のβ(ビジネスリスクを表す)

企業価値は、Σ(n期間のFCF/(1+WACC)のn乗)である。

どういう事業を行ってFCFを生むのか、そのための資金調達でいかに資本コストを下げるのか、単純だけれど難しい作業だ。

つくづくCFOって大変だと思う。

ブリーリー他『コーポレート・ファイナンス〈下〉』日経BP社

2010-06-06 12:33:44 | 財務・会計
最終章の第35章に結論としてファイナンス理論における最も重要な7つの考え方が書かれている。

①純現在価値
プロジェクトの価値を評価するときに、そのプロジェクトが将来生み出すキャッシュフローを資本の機会費用、すなわちプロジェクトと同じ程度のリスクを持つ証券が提供する期待収益率で割り引くことによってNPVを計算する。

②資本資産価格モデル
モデルの魅力はリスクのある投資に求められる収益率について具体的に考える方法を与えてくれる。
投資に係る分散不可能なリスク、あるいは市場リスクは経済におけるすべての資産の総価値の変化によってその投資の価値がどのくらい影響されるのかの程度によって測ることができる。これがβ(ベータ)である。人々が気にかけるリスクはそれを取り除くことが出来ないリスク、分散不可能なリスクである。
このため資産に求められる収益率はベータの大きさとともに大きくなる。

③効率的な資本市場
証券の価格は利用可能な情報を正確に反映し、新しい情報が入ってくれば直ちにこれに反応する。その類型には程度によって3つある。ウィーク・フォーム、セミストロング・フォーム、ストロング・フォーム。

④価値の加法性と価値保存の法則
全体の価値は各部分の価値の合計に等しい。二つの企業をいっしょにしてもそれだけでは価値を増すことは出来ない。価値保存の法則。

⑤資本構成の理論
資本構成によって企業の資産から生み出される全体のキャッシュフローが代わると言うことでない限り、企業の価値は資本構成から独立である。MM理論。

⑥オプション理論
ファイナンスの世界では、オプションとは現在取り決められる一定の条件で将来取引できる機会を意味する。
単純なコールオプションの値を求めるために開発されたブラックショールズ式。

⑦エージェンシー理論
経営者、従業員、株主、社債保有者には利益相反があり得、その問題に対処するために企業は様々な行動をとっている

また、10の未解決問題も書かれている。

①プロジェクトのリスクと現在価値を決めるものは何か
②リスクとリターンの他に欠けているものは何か
③効率市場理論の例外と考えられる事例はどのくらい重要か
④経営陣はオフバランスの負債か
⑤新しい証券や新しい市場の成功をどのくらい説明できているのか
⑥利益還元政策論争はどこまで解決できるか
⑦企業が負うべきリスクは何か
⑧流動性の価値とは何か
⑨合併ブームをどのくらい説明できるのか
⑩金融構造の国際的な違いをどのくらい説明できているのか

コーポレートファイナンスは難しい。

これは高等数学の理解が難しいという問題もあるが、意思決定に関わる要素の多さ、条件設定で考慮すべき項目の多さ、数値を導くための工程の多さに起因しているように思う。
それらの一つが違っても結果の数値が異なる。
条件設定をいくつかしてそれらを見比べて、妥当な数値を導くという地道な作業も必要だ。

理論や数式のいくつかは、毎日使わないと忘れてしまう知識だと思う。

ステファン・ロス他『コーポレート・ファイナンスの原理』金融財政事情研究会

2010-05-23 15:57:23 | 財務・会計
1300ページを超えるとにかく分厚い本である。それに高価なので第6版をアマゾンの古書で買った。今は第8版が出版されているようだ。

日本語訳もところどころわかりづらい。専門用語の知識が不足しているせいもあるのだろう。読んで理解するというより、読んだそばから忘れ、ただページを繰っているだけという感じもする。

リチャード・ブリーリーの『コーポレートファイナンス』は世界のビジネススクールでファイナンスのテキストに最も多く採用されているらしいが、この本もかなり有名な本のようだ。しかし前書きにはMBAの入門クラスまたは学部のファイナンスのテキストとしてふさわしいと書かれている。

さすがに分厚い本だけあって、コーポレート・ファイナンスのほとんどのテーマが網羅され、事例も多い。

例えば配当政策について。
モジリアニ・ミラー理論(MM理論)によれば配当政策と企業価値は無関係という理論が紹介された後、しかし、実際には・・・・と、配当課税とキャピタルゲイン課税の問題、投資家へのシグナリング効果、有力なNPVプロジェクトの有無、株価への影響などが論じられている。最後にアップルの事例が展開され、結局、配当政策に黄金律はない、というような結論だ。

デリバティブの章では、優先株を扱う事例で、ヨーロピアン・コール・オプションとしてブラック・ショールズ式の応用なども論じられている。
ブラックショールズ式はワラント債のオプション部分の計算にも必須なのでファイナンスの世界ではホッチキスかセロテープくらい当たり前の道具なのだろう。

ファイナンス理論は数式が多く、経営学の中では最も科学っぽい体裁である。
実際ノーベル賞を受賞した学者の理論もいっぱいでてくる。けれどそういう理論の多くは、実際の現場ではなく、完全市場など様々なノイズを取り除いた実験室の経済社会を想定して作られているものが多い。まあ、そうでないと数式なんかは適用できないとは思うが。

DCF法で企業価値を計算するときも、将来のFCFの条件設定で、減価償却額をどういう方法で算定するか、運転資本における売掛金をどう見積もるかなど恣意的な要素が多い。客観的と言うより希望などが入る余地が多い。経営全般が、投資家や顧客の心理で動いたり、経営者の好みや信条が反映される面も多いように思う。

日常的にファイナンス実務に携わっていない者にとって、基本的な理論を理解するには『道具としてのファイナンス』を繰り返し読むことが必要だ。そうでないとこういう本の原理的な部分が理解できない。理論をもとに実際の場面での応用をあれこれ考える。当てはまらない場合も多いと思うが、そういう積み重ねで理論と応用力が身に付くのだろう。

森生明『MBAバリュエーション』日経BP社

2010-05-01 20:02:30 | 財務・会計
1年ほど前に読んで記録するのを忘れていた。
内容はほとんど忘れていまい、確かマルチプルに詳しかったなあ、という印象しか残っていなかった。

あらためて折ったページを読み返すと薄い本なのに内容が深い。

実際にデューデリジェンスの実務に携わっている人の本だけあって、ファイナンスのテキストの常識とは違う視点を感じる。

企業価値評価について4つのステップの解説がある。

ステップ1:向こう5年間の事業計画が基本
ステップ2:最終年度における企業価値は類似会社から
ステップ3:類似取引事例で評価額を検証
ステップ4:企業価値を会社価値に修正

ステップ1:向こう5年間の事業計画が基本

「事業計画は3年でも10年でも構わないが、M&Aの場合、当初2年ほどは新体制の整備期間、3年目から買収効果が数字に表れ始め、5年くらいで安定軌道に乗るというのがイメージしやすい計画なので私は5年を好んでいる」
「経営陣の作成した事業計画は・・・前提の甘いところ、厚化粧をしている部分は厳しく質問して確認した上で、無理のないものに修正する。売り手と買い手が共通の土俵を持つことができればDCF方式は合意点を見いだしやすい」

ステップ2:最終年度における企業価値は類似会社から

「ターミナル・バリューの算定には類似会社比準方式(EBITA倍率ないしEBIT倍率)を用いる。収支予想期間が5年なら5年後に株式公開または会社売却をして投資回収すると想定して、5年後のその会社の類似会社のものを使う」
「永久還元の定義式は成長率gをどう置くべきかで価値が振れるし、売り手と買い手で水掛け論になる可能性が高い」

ステップ3:類似取引事例で評価額を検証

「先の2つのステップのキャッシュフローとターミナルバリューの現在価値が企業価値となるが、この評価額をもとに足元の実績・予測数字を使ってEBIT倍率やEBITADA倍率を逆算してみる。・・・類似会社と比較し、プレミアムの水準を検討する。高いプレミアムの場合、収支予想の前提に問題があるか、類似会社の選び方に問題がある可能性が高い」

ステップ4:企業価値を会社価値に修正

「こうして算定された企業価値は裸の企業総価値なのでネットデット分を調整する。ネットデットを差し引いて余剰のキャッシュがBSにのっていればその分価値が上がり、逆に借入金を引き継ぐならその分を差し引く」

実際の手順の過程では、売掛金に回収不能、販売不能分がないか、有形資産・無形資産の簿価と時価の差、繰延資産に含まれる本来の費用、貸倒引当金や退職給与引当金の適正な積み上げ、BSにのっていないリース債務などを調査することなどが書かれている。実務では参考になるのだろう。

後半にはM&Aをめぐる国民性問題やM&Aの歴史な問題の考察もあってバリュエーションの奥の深さを感じる。

ブリーリー、マイヤーズ『コーポレート・ファイナンス〈上〉 (第8版)』日系BP社

2010-04-18 23:35:10 | 財務・会計
なんとか読んだ。あまり覚えていないが...。

こういう本を読むと人類はとんでもなく複雑な世界を作り出してしまったのだと感じる。これはファイナンスの世界が複雑というより、コントロール対象の資本主義の世界が複雑なだけだ。

リーマンショック以降、MBAのファインナンス教育が批判されたり、逆にMBAでファイナンスを真剣に学ぼうとする人が増えたりしていると聞く。

『コーポレート・ファナンス』は上巻だけで725ページもある。本当にアメリカ人は長編が好きなんだと思う。これが標準テキストなので、ファイナンスを身につけている人の頭脳の優秀さは想像を超えている。

まあ、それでもファイナンスを簡単にしようとする足跡も見られる。たとえば、WACC法とAPV法。

・WACC法は分母のrDに(1-t)をかけることによって節税効果が反映する。

・APV法:APV=PV(FCF)+PV(TS)
 APV法ではCFごとにリスクを計算する。
 節税効果の現在価値:PV(TS)=Σ(Dn×rD×t)/(1+rD)n乗
 
*前提条件が同じならWACC法もAPV法も同じ値になるが、WACC法はD/E比率を一定としている ので、Dが変化すれば値は変わる。
*扱いやすいのはAPV法。WACC法ではβをアンレバードし、リレバードしWACCを計算する手 間が必要だが、APV法ではアンレバードを一回するだけでよい。ただし、ハードルレートを考えるときにはWACC法も重要。

この本はテキストだが、今後は辞書代わりに使いそうだ。

野間幹晴・本多俊毅『コーポレートファイナンス入門』共立出版

2010-04-06 23:10:25 | 財務・会計
一橋大学の大学院国際企業経営戦略研究科のファイナンスクラスの実践に基づくテキスト。
ファイナンスのテキストにしてはすごく薄いのが何よりのメリット。
ファイナンス基礎の復習に向いている。
学生の質問に教員が答えるという授業のライブ形式で書かれているが、学生の質問が鋭い。この大学院には実際に投資銀行やコンサルタント会社で働く社会人が通学しているので、実務の問題意識が反映されているようだ。
最後に倍率法(マルチプル法)での企業評価の章がある。DCF法とのつながりがよくわかるように書かれている。