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お気楽ビジネス・モード

ビジネスライフを楽しくする知恵や方法を紹介する

池田純『常識の超え方』文藝春秋

2019-12-22 22:39:26 | 経営戦略
常識の超え方というタイトルだけど、著者はスポーツ経営の教科書的な本を書きたかったのだとか。
企業を経営するように当たり前の経営をすることが、日本のスポーツ経営の常識では常識はずれになるらしい。
試合が終わったあと、負けたときには「気持ちを切り換えていこう」というのが一般的なプロ野球チーム。そこに具体的に悪かったところを反省をすることを導入したりした。適当に売っていたグッズ販売にマーケティング手法を取り入れたり、そんな当たり前のことをやるのが難しい。
経営とスポーツ現場の距離感も難しいらしい。素人があれこれ言っても逆効果。そこは監督にまかせ、その人事を考えるだけでいいとか。
ベイスターズを25億円の赤字から6年で5億円の黒字にした著者の興味は野球だけではない。
日本版NCAAにも関わるはずだったが、自ら降りた。
まだまだ日本には壁があるようだ。

糸井重里・川島蓉子『すいません、ほぼ日の経営。』日経BP社

2019-12-21 13:33:32 | 経営戦略
フツーの会社にあって、ほぼ日にないもの。
他社商品の研究とか、マーケティング調査。組織の部長、課長。
ほぼ日にあって、フツーの会社にないもの。
インディペンデント・デイ(一人で考える日)。
社員の間で大事にしている言葉は、「誠実」「貢献」とか。
ほぼ日手帳が売上の約6割。
やさしく、つよく、おもしろくがモットー。
つかみどころのない、おもしろそうな会社です。

ジェームズ『ビジョナリーカンパニー3 衰退の五段階』日経BP

2012-06-16 23:03:10 | 経営戦略
衰退の法則

第一段階:成功から生まれる傲慢
第二段階:規律なき拡大路線
第三段階:リスクと問題の否認
第四段階:一発逆転の追求
第五段階:屈服と凡庸な企業への転落か消滅

良好な企業から偉大な企業への飛躍の法則

第一段階:規律ある人材
第二段階:規律ある考え
第三段階:規律ある行動
第四段階:偉大さが永続する組織をつくる

印象的だったのは、ヒューレッド・パッカードのCEOになったフィオリーナの行動と、IBMのCEOになったガースナーの行動を比較して、hpの問題点をしているところだ。

「第4段階が始まるのは、後退に反応して、組織が特効薬に頼ろうとするようになったときだ。・・・・救世主になるCEOを探す、“革命”をいいつのるなど・・・。ここでカギになるのは、大規模で素早い解決策か大胆な方針によって一気に業績回復を達成しようとして、長期的な勢いを取り戻すために困難な道のりを着実に歩んでいこうとはしないことである」
コンパックの買収がその例にあげられている。


西浦裕二『企業再生プロフェッショナル』日本経済新聞出版社

2010-08-13 21:41:34 | 経営戦略
企業再生について、物語形式で書かれているので、とても面白い。
舞台は『ハゲタカ』より小さい会社で、外資ファンドも出てこない。それが『ハゲタカ』よりむしろリアルな感じもする。
粉飾決算、ターンアラウンド・マネジャーによる企業再生の実行、と思いきやまたも粉飾決算で民事再生の道へと。
ストーリーも工夫されていて一気に読んでしまった。
小説仕立てであることだけでなく、ところどころに解説が挟まれていて初心者にはわかりやすい。

例えば「経営不振企業の特徴」。
①見栄っ張り症候群。立派なオフィス、派手な社員旅行など。
②青い鳥症候群。自分のビジネスよりもっと魅力的なビジネスがあると信じて投資する。
③ゆでガエル症候群。昔の栄光に浸ってそこから出て行こうとしない。
④いつも他人のせい症候群。社長は部下が悪い、部下は社長が悪いという。

「コンサルティングの手法」。
「問題点の定義→原因の分析→仮説の構築→仮説の検証・修正→コスト・ベネフィット分析→インプリメンテーション・プランの作成」はコンサルティング会社でよく使われる手法。

また、この会社が、個人の売上業績をボーナスに極端に連動させる報酬制度をとったことが、法人営業部門の架空の売上計上の原因になったこともよくありそうな例で参考になった。

読みやすい本なので、ターンアラウンドを全く知らない身にはとても参考になったが、会社更生法のケースではどうなのかとか、もっと詳しく知るには専門書を読む必要がありそうだ。

長谷川洋三『カルロス・ゴーンが語る「5つの革命』講談社

2010-08-05 23:52:59 | 経営戦略
カルロス・ゴーンがCOOとして日産に来たとき、日産には2兆1000億円の借入があり、前年度連結決算で140億円の赤字を出していた。
それをルノーから30名程度の役員と管理職を連れてきて、日産の600人の社員と面接して優秀な人材を発掘し、クロスファンクショナルチーム(CFT)で日産リバイバルプラン(NRP)を作成する。NRPでは、3年間で20%のコスト削減、3工場を閉鎖して工場稼働率を53%から82%に上げるなどの目標を掲げ、社員にコミットメント(目標の達成)を求めた。

ゴーンが再生のために行ったことは実に単純だ。
コストを徹底的に削減し、コアではない事業はすべて売って、その資金をコア事業に投入する。
その結果、初年度からの黒字、NRPの前倒し達成などみるみるスモールヒットを重ねて、ついに再生させた。

ゴーンは最後のインタビューで5つの変化を述べている。

①『弱み』が変わり「利益志向」になった
②顧客中心の考えになった
③CFTによって横断的な活動領域が全社に広がった。
④従業員が危機感を持つようになった
⑤中期計画の重要性がわかるようになった

ゴーンは「外国人だから改革なのか、外国人なのにできた改革か?」と問われてこう言っている。

「外国人だったことはマイナス。日本語がわからないから。しかし日産にはアウトサイダーによる改革が必要だった。今から思えばグローバルな経営の経験のある外部の日本人がよかったかもしれない」

しかし日本人が受けたゴーン・ショックは大きかったと思う。
鉄鋼業界の再編を促し、ソニーも外国人社長を据えるようになった。

この本を読んで、ゴーンはただの黒船ではなく、改革のための文化的な障壁を理解し、緻密に計画を練ったことがわかる。優秀なCFTをつくる土壌が日産に残っていたことも再生の大きな要因だろう。
ゴーンの生い立ちからくるグローバルな視野、ミシュラン、ルノーでの経験がこのリーダーを生んだことも成功要因だろう。

ゴーンの日産再生にはいろいろな教訓が詰まっている

忽那憲治『中小企業が再生できる8つのノウハウ』朝日新聞出版

2010-07-19 18:04:47 | 経営戦略
本の帯で冨山和彦氏が「企業再生とは、自己変革への挑戦だ。この本には、どんな企業にも共通するノウハウが書かれている・・・」と語っていたので買ったが、期待はずれ。

確かにどんな企業にも共通するビジネスモデルや資金調達のためのノウハウが簡単に書かれている。事例もそれなりに紹介してある。

けれど紙幅のせいか、表面的な記述にとどまり、深みがない。

ここで紹介されている参考文献のほうがためになるのかもしれない。

この著者が開催している勉強会などはためになるそうだが...。

本を帯の広告文句だけで買ってはいけない、教訓的な本である。

桐山秀樹『ホテル戦争』角川書店

2010-04-18 23:33:19 | 経営戦略
ホテルの御三家と呼ばれている老舗ホテルのホテルニューオータニ、ホテルオークラ東京、帝国ホテル。バブル崩壊後の1990年代に生まれた新御三家と呼ばれている外資系ホテルのパークハイアット東京、フォーシーズンズホテル椿山荘東京、ウエスティンホテル東京。
そして、2000年代にできたスモール・ラグジュラリーのカテゴリーのホテル、マンダリンオリエンタル東京、ザ・リッツカールトン東京、ザ・ペニンシュラ東京が今は新々御三家と業界では呼ばれているらしい。

東京ではこれらのホテルが、ハード面での「広さ」や「快適さ」での客室、レストラン、宴会場などの最新設備での投資やリニューアルを行っている。経営では直営と運営受託の戦いもある。しかし、サービスを売っているホテルはソフト面つまりヒューマンウエアの開発が最後の決戦になるというのが著者の意見。従業員満足(ES)が顧客満足(CS)を生み、成功しているのがリッツカールトンである。①ホテルにあった人材を採用する、②従業員にホテルの哲学、理念を教育する、③各ポジションで必要なトレーニングをする、④毎日終業前にミーティングでサービス離縁の実践方法や情報を共有する。これを日々向上するように努めていく、これらを実践している。レクサスの幹部もリッツで研修したらしい。

ホテル業界の収支構造についてはこの本からはよくわからないが、ホテルのカテゴリーやそのサービスの特徴を鳥瞰図的に捉えるにはよい本である。

ヤン・カールソン『真実の瞬間―SASのサービス戦略はなぜ成功したか』ダイヤモンド社

2010-03-21 14:06:40 | 経営戦略
スカンジナビア航空を再生させたヤン・カールソンの事例はサービスマネジメントのどの本にも登場する。

1986年、1000万人の旅客がそれぞれほぼ5人のスカンジナビア航空(SAS)の従業員に接した。一回の応接時間が平均15秒だった。したがって、1年間に5000万回、顧客の脳裏にSASの印象が刻みつけられたことになる。その5000万回の“真実の瞬間”が、結局SASの成功を左右する。その瞬間こそ私たちがSASが最良の選択だったと顧客に納得させなければならないときなのだ。

という有名な記述がある。

小さな航空会社で成功していたとはいえ、40歳という若さのヤン・カールソンを社長に抜擢したSASの経営陣もすごい。

この15秒の「真実の瞬間」の積み重ねが顧客満足を生む。カールソンが考えた「Moments of Truth=真実の瞬間」という大げさな表現こそがサービス産業に働く者を動かす本質をつかんでいると思う。
製造業が生み出す製品と異なり、サービスは目に見えない、生産すればその場で消費される。しかし、顧客の記憶には印象としてブランド化される。航空機というサービス産業にとって15秒の接客が大きな価値を生むのだ。

しかし、これは大競争前の航空チケットが高価であった時代の話だ。
低価格航空会社の出現で、SASなどのサービスは接客だけでなく、乗り継ぎの利便性やホテル、レンタカーなどとの情報提携など付加されるサービスと一体でないと高い料金はとれなくなっている。

今はサービス戦略と一体となった「真実の瞬間」が求められているのだろう。

ヘスケット,サッサー,シュレシンジャー『バリュー・プロフィット・チェーン』日本経済新聞社

2010-03-14 22:55:25 | 経営戦略
『カスタマー・ロイヤルティの経営』の著者たちが、顧客と従業員との関係を中心にして企業の成長の鍵となる要素の分析をしたもの。

前著で従業員満足が顧客満足に結びつく事例や方法が解説されていた。しかし、肝心なのは企業トップの意思決定と組織作りだと思ったが、今回その成功の鍵は「リーダーシップとマネジメント」「文化と価値観」「ビジョンと戦略」が組み合わされた<三位一体の業績>に注目することだと言っている。
7Sでいうと3つのうち最初の2つがソフト、最後がハードな部分になる。ビジョンと戦略をいかにしてリーダーシップとマネジメント、文化と価値観の創造で実現できるか、ハードをいかにソフトによって実現するかが重要なのだ。
その価値ドライバーとして、テコ、焦点、適合、信頼、適応力があげられている。それらが生み出す価値は、価値レバーである情報技術、知識移転、サプライチェーン・マネジメント、価値交換、オペレーション戦略、EVAなどによって達成されるという。

今回は式が出てきたりして、やたらとややこしい。

顧客の価値を生む基本の式はこれである。

価値=(結果+過程品質)/(費用<価格>+顧客アクセス費用)

顧客は製品やサービスではなく「結果」を買っている。
「4分の1インチのドリルではなく、4分の1インチの穴を買うのだ」
つまり、4分の1インチのドリルをいかに売ろうかと考えている経営者は、4分の1インチの穴をいかに安く開けられるかを考えている経営者には勝てない。
事業を製品でなく、「結果」で再定義することが顧客の価値の視点から重要なのだ。
そして顧客は結果がもたらされる<過程品質>というものも購入する。
過程品質を考えるには事業を再定義することにより、共有された価値観、施策、訓練、手続きを見直すことになる。
これを分子にして、顧客が払う製品の値段とそれにいたる費用で割ったものが顧客価値にになるという解説だ。

 顧客満足を生む従業員満足の方程式もある。

(結果を提供する能力+職場の質)/((1/総所得)+アクセス費用)

これまた難しい式だ。式の要素に影響するものは次のものだという。

結果を提供する能力:顧客の問題を解決する機会、個人の能力開発の機会、仕事が認められる程度
職場の質: 仕事が認められる程度、上司の公平さ、勝利者と仕事をする
1/総所得:適当な報酬
アクセス費用:職務の継続性

要するに従業員満足のためには、以下が重要ということ。

①顧客の問題解決や本人の能力開発の機会が与えられている
②裁量権が与えられている
③公正に評価されること、好循環を生む同僚がいること
④報酬が十分なこと
⑤離職率が低いこと

この従業員満足によって、生涯価値を高める顧客満足を生むというのは、前著のサービス・プロフィット・チェーンの考え方と同じだ。

後半は、ハードをソフトで実現するためにBSCを用いることがよく出てくる。
サービス・マネジメントも手法はBSCが有効なのか...。

HBSらしいフレームワークと手法の構成ともいえる。

書いてあることがちょっと難しいが、サービス・マネジメントで成功するための仕掛けづくりを考える上では参考になる本である。

ヘスケット. シュレシンジャー,サッサー『カスタマー・ロイヤルティの経営』日本経済新聞社

2010-02-24 00:03:55 | 経営戦略
HBSでサービスマネジメント分野を担当する教授たちが書いた本。サービスマネジメントの基本的なフレームワークはすべて載っている。サービス・プロフィット・チェーン、4Pと3R、サービスマネジメントの好循環、悪循環など。

第2部の「カスタマー・ロイヤルティをつくれ」は興味深い。とくに縦軸にリピート率(ロイヤルティ)、横軸に顧客満足度をとり、「伝道者」「傭兵」「人質」「テロリスト」に分けマーケティングに対する資源配分を考え直せと説いている。伝道者は顧客維持への貢献が高いが、テロリストは顧客を失わせる。満足度調査も業種によって平均値は違うが、5段階の4では意味がなく、5でないと伝道者は生まれない。

第3部のサービス・プロフィット・チェーンの実行ではタコ・ベル、シアーズなどの営利企業だけでなくニューヨーク市警察の組織改革のケースも取り上げられている。ニューヨーク市警がどうやって犯罪の減少に取り組んだか。これはサービスマネジメントの実行そのものなのだ。

顧客満足のためにはまず、従業員満足が重要。従業員にはビジョンを示し、選考においては技能でなくサービス業に向いているかどうか(他人に奉仕することに喜びを感じるか)で選ぶ。顧客の最前にはアルバイトなどの低コスト従業員でなく、正社員を置く。サービスの評価は顧客に直接聞く方式(ホテルなら宿泊客への毎回のアンケート、BAは離れた顧客に電話でアプローチ)をとる。

エンパワメントを行い、現場での裁量権と自由度を与える。そうすれば、顧客の要望に迅速に応えることができる。一瞬で消え、取り替えがきかないのがサービスという商品だからだ。

サービス保証(満足しないと料金は返還するなど)はロイヤルティを高める。

サービスマネジメントで定式化されたことが次々と書かれている。しかし、実行するにはやはりリーダーの強い意思がないと難しいことばかりである。