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映画『マンデラの名もなき看守』

2015-01-11 23:14:06 | 人間学
コーサ語ができたばっかりにマンデラの看守になった白人のグレゴリーの悲劇であり感動の物語である。
マンデラは周りの者を感化する力があるんだろう。
黒人をテロリストだと思っていたグレゴリーが最後にはアパルトヘイト廃止支持者になっている。

息子を交通事故で失ったグレゴリーが、自分は仕事でマンデラの息子の情報を売り、マンデラの仲間の情報を売ったことを嘆く。
マンデラもまた息子を交通事故で失ったことがあるのだ。
マンデラはグレゴリーに「それが君の仕事だったんだ。仕方ない」と言う。
「過去を悔やむより、未来を見つめろ」と。

この映画を見て、ダライ・ラマ14世を描いた『セブンイヤーズ・イン・チベット』を思い出した。
西洋人から見たアジアの聖人。
この映画もまた白人から見た黒い聖人を描いている。
マンデラ自身は自分が聖人ではないと言っている。
映画『マンデラ』を見れば確かにそうだ。不倫、暴力、武装闘争。聖人がやることではない。
しかし、マンデラはそれでも聖人に見える。
彼の信念と行動が聖人の証しに思える。

邦訳のタイトルはよくない。
「グッバイ、マンデラ」でいい。

原題:GOODBYE BAFANA
製作年度:2007年
上映時間:117分
製作国:フランス,ドイツ,ベルギー,南アフリカ
監督:ビレ・アウグスト


渡辺明『勝負心』 文春新書

2015-01-11 15:46:19 | 人間学
羽生善治を「生きた教材」と言う渡辺明竜王。
現在30歳の彼は羽生氏と14歳の年齢差がある。
これまで将棋界は大山康晴、中原誠、谷川浩司という天才を生み出してきた。
羽生善治の登場によって、それまでの歴史が塗り替えられた。
羽生の登場は、コンピュータソフトを使いこなす世代の代表のようにも言われたが、この世代の層の厚さが羽生を生んだとも思える。
羽生世代は定跡の体系化をはかり、将棋をシステマティックにした。島朗九段がデータベースをつくり、『羽生の頭脳』が画期的な定跡書になった。
その次の世代の代表が渡辺明竜王。
将棋界に限らず、常に新たな世代が前の世代を乗り越える。
羽生の新しさは既存概念にとらわれない戦術とともに休みの日に水泳などスポーツを楽しむ姿だった。
渡辺は競馬が趣味で、対局の直前まで競馬中継や競馬新聞を見ているらしい。
大胆な発想の反面、対局中にお菓子を食べるのは、自分の手番というように対局者に対して細かな神経も持ち合わせている。

熱意こそ才能。
渡辺はそう言う。
渡辺の強さは、将棋への熱意を研究に注ぎ、熱意を持ち続けられるところだろう。

映画『チェ 39歳 別れの手紙』

2015-01-03 23:29:37 | 人間学
なんとも退屈な映画。
チェ・ゲバラがボリビアで死ぬまでのドキュメンタリーだが、盛り上がりも何もない。
しかし、映画を作ったのは、『オーシャンズ』シリーズのスティーヴン・ソダーバーグ。
チェを純粋な姿で描いている。
人間にはこういう死に方もあるんだろう、
ということを教えている。
死に方は、そのまま生き方なんだと思う。

原題:CHE  PART TWO/GUERRILLA
製作年度:2008年
上映時間:133分
製作国:フランス,スペイン
監督:スティーヴン・ソダーバーグ


映画『チェ 28歳の革命 』

2015-01-01 18:46:11 | 人間学
チェ・ゲバラの日記とニューヨークでのインタビュー、国連での演説を再構成しているシンプルな映画。
低予算のためか、わざとかわからないが、雑な編集がかえってドキュメンタリーのようなリアリティを与えている。

革命家にとって一番大事なものは? 
と問われて、ゲバラは「愛」だと答える。
祖国への愛、家族への愛、仲間への愛、それが一番大切だと。
農民を尊敬する、民衆から物を盗むことを禁じる。
窃盗したり、裏切ったり、強姦したりした者は処刑した。
ぜんそく持ちで医者のゲバラは、アルゼンチンの国籍でありながらキューバの革命戦争に深く関わるようになり、戦士になった。
ハバナ侵攻の前日に街からスポーツカーを盗んできた兵士に「返してこい」と命じるところで映画が終わる。

先日、アメリカがキューバと国交を回復するというニュースがあった。
解放後、経済は停滞したままなので社会主義がダメだという人たちもいる。
一方でキューバの医療を高く評価する人たちもいる。
キューバが魅力的なのは、経済封鎖されても、ラテン系に明るく生き延びているところだろう。

この映画に出てくるフィデロ・カストロはまだ生きているし、ラウル・カストロは国を率いている。
ゲバラは遙か昔になくなったのにまだ人々の心に残っている。
圧政から人々を解放するのが革命だとしたら、もうその情熱が通用する国は少なくなったのかもしれない。

1959年に革命を成し遂げた時にゲバラは30歳だった。
ゲバラの魂の熱さが伝わってくる映画だ。
その熱さはいまだに世界のあちこちで冷えていないように感じる。

原題:CHE  PART ONE/THE ARGENTINE
製作年度:2008年
上映時間:132分
製作国:アメリカ,フランス,スペイン
監督:スティーヴン・ソダーバーグ


映画『マンデラ 自由への長い道』

2014-12-29 12:03:13 | 人間学
27年間投獄されたあとその国のリーダーになる体験をした人は後にも先にもこの人しかいない。
27年というのは想像するのも難しい。
子どもが生まれ、結婚するくらいの年月だ。
英雄として、家に戻ってきたら、妻の心はすでに離れていた。
解放運動で妻も英雄になっていた。お互いの孤独の時間。
マンデラはそれでもすべてを赦し、白人との共存の道をつくる。
この人の人生の前ではどんな問題もとても小さく見える。


原題:MANDELA: LONG WALK TO FREEDOM
製作年度:2013年
上映時間:146分
製作国:イギリス,南アフリカ
監督:ジャスティン・チャドウィック




『強豪セールスの秘密』奥城良治(サンマーク文庫)

2014-11-24 23:13:18 | 人間学
1993年に出版された本。
著者は日産で16年間連続トップのセールス記録を持つ奥城良治。
一昔前に流行ったモーレツ・サラリーマンの啓蒙書である。

「奥城・鬼十則」の第十条にこうある。
トップ・セールスマンとは、最も多くの侮辱と屈辱を受けた男である。
トップ・セールスマンとは、最も多くの断りを受けた男である。
トップ・セールスマンとは、最も多くの失敗と敗北を喫した男である。
しかし、トップ・セールスマンとは、この侮辱と敗北の苦しみを、敢然と乗り越えた勇者である。
(p.190)

先輩の技を盗み、他業種のトップセールスマンに同行させてもらい秘中の秘を学ぶ。
やがて、ただ売り込むだけの限界を感じて、客の喜ぶ話題を提供することを覚える。
学歴のない著者は、客との話題作りのため、がむしゃらに教養知識を吸収し、客との話題を豊富にした。
ラジオの教養講座を録音し、興味のある本はバイトを雇ってテープに吹き込み、車での移動中に聴いた。
休みの日も散歩には広告と名刺を持参して、あちこちの車のフロントガラスにはさんだ。
売るために、一分一秒を無駄にせず、ひたすら目標に邁進した。

今となっては時代遅れのやり方かもしれない。

しかし、不思議に心を打つ。

侮辱と敗北の苦しみからしか成功は生まれない。
30年前も今も同じなのだ。

何度かの引越しでも捨てられずに、何度も繰り返し読む本になった
哲学、宗教、歴史の本より低俗なのは否定できないが、僕にとっては一番心に響くことが書かれている。

映画『リンカーン』

2013-12-31 17:00:40 | 人間学
監督:スティーヴン・スピルバーグ
主演:ダニエル・デイ=ルイス、サリー・フィールド
2012年アメリカ

リンカーンはどんな人物だったのか。
奴隷解放、人民の人民による人民のための政治。
南北戦争を終結させ、奴隷解放の憲法修正条項を成立させた。
そして暗殺された。

リンカーンはときに黒人兵士とも直接話し、戦地に赴き、兵士を慰め、あるいは鼓舞する。
野党議員と一対一で魂の話しをする。
一方で議論に終始する閣僚には、権力者として命令し、実行させる。
そういう人物に描かれている。
大統領なので独裁者のようになるときもあるだろう。
でなきゃ切り開けない局面もある。

この映画で印象に残ったセリフがひとつだけある。

リンカーンは戦争で長男を亡くしている。次は次男が軍隊に志願するという。
リンカーンも反対だったが、半狂乱になって、リンカーンを責める妻。
次男を愛していない、長男のときもそうだったとわめく。
リンカーンは「長男が亡くなった時に、お前を精神病院に入れるべきだった」と怒鳴る。
ひとしきり怒鳴りあった後、感情を抑えて、リンカーンは妻に
「自分も毎日嘆いている。一日中嘆きたいときもある。君と同じだ」と言う。

「われわれは重荷を背負いながら、決断しなければならない。そして、耐えなければならない。
我々は自分の重荷を軽くしていかねばならない。或いは、それに押し潰されるか。君次第だ」

われわれは歳を取れば取るほど、いつのまにか重荷を背負っている。
しかし、そのなかで決断しなければならない。
そしてどんな結果になろうとも耐えなければならない。
重荷は自分で軽くしていくしかない。
そうでなければ押しつぶされるだけだ。
誰も助けてはくれない。
自分の重荷なのだから。
たとえ夫婦であっても。

スピルバーグらしいドラマだと思う。
皮肉ではないが、道徳の授業にも使えそうな映画だ。
誰でも一度は見る価値がある。

内村鑑三『代表的日本人』岩波文庫

2009-12-28 22:51:56 | 人間学
 これは内村鑑三が職を失い文筆業で生活している時期に内村の理想とするキリスト教的世界と共通した倫理観をもって生きた日本人の伝記を解説した英書の日本語訳である。
 この本の解説にもあるが、もし内村の晩年にこの人々のことを書いていたらもう少し批判的な書き方になっていたのかもしれない。
 この本に登場する5人の日本人、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人に共通するのはその道徳観と行動である。自分の利益よりも社会の利益を優先し、質素を好み、自分の死後に残る世界の繁栄と平和までを考えて行動する。
 ビル・クリントンが日本人で最も尊敬するのは上杉鷹山だと言ったのは、この本を読んだかららしい。 
 『代表的日本人』ではどれも内村鑑三的なキリスト教世界観と合致するように日本の徳のある偉人たちが描かれている。そういう意味では誰もしっくりこないのだが、中江藤樹の記述には教育の原点を考えさせられる。
 母親を養うために養子に出されていた四国での武士の身分を捨て、近江(高島郡小川)に戻り、金貸しなどをした後、生活のために私塾を開く。ここで読み書きや朱子学、陽明学を教えるのだが、人の道を説くその名声がやがて全国に広まる。
 学識があるのが学者でなく、徳がなければ学者でない。人生の目的は学者になることでなく聖人になることである。日々善を積み重ねることで徳を得られる。
 では善とは何なのか? 徳とは何なのか?が疑問になるが、この先は陽明学を学ぶことで少しは解決するのかと思う。
 有名になるつもりはさらさらないのに、中江藤樹を全国的に知らしめたのは偶然だけでなく時代が中江藤樹の道徳を求めていたのだろう。

長尾剛『話し言葉で読める「西郷南洲翁遺訓」』PHP文庫

2009-12-28 22:39:16 | 人間学
 西郷隆盛の遺訓が現代語の解説で読める本。サブタイトルは、無事は有事のごとく、有事は無事のごとく。
 西郷隆盛がどうして時代を超えて支持されるのかがわかるような気がする。

 西郷隆盛と大久保利通の違いは、西郷がかつて僧・月照と心中して命を失いかけたこと、大久保が欧米視察に行っている間、日本にいて欧米の都市や生活を実際に見ていないことの2つが大きいように思う。
 命を人に与えても良いという西郷の思い。大久保が西欧を理想としたのに対して、西郷は自らの理想の中に西欧の良いところを取り入れるというビジョンの描き方の差があるのだろう。
 しかし遺訓を読むとどうして西郷が征韓論に破れて下野したのか、どうして西南戦争に参加したのかがわかるような気がする。
 徳川幕府に失望して、明治維新により新政府をつくったまではよいが、かつての薩長の志士たちが西欧の贅沢な生活にふけり、手にした権力を振りかざし、旧階級を貧困に陥れている。こういう事態の推移に我慢できなかったのだろう。

 私の尊敬する人は大久保利通だが、大久保にとって、親友の西郷が西南戦争で命を落としたことは、歴史の逆回転に映ったのだろうか、それともこれを機に堕落した新政府が反省することを期待したのだろうか。

 そんなことも考えさせられる西郷どんの遺訓である。

『ウェブ人間論』梅田・平野(新潮新書)

2007-01-17 00:14:41 | 人間学
ウェブ進化論の続編として読むと面白い。羽生善治のいう情報ハイウェイの先の渋滞を抜け出すのに必要なのは「構造化能力」などだそうだ。若い小説家と中年のITコンサルタントの16時間に及んだ対談はすべてが刺激的だ。この本を電車で読んでいる時、となりにすわっていた二人の学生がこんな会話をしていた。
「最近ネットにつなぐのを遠ざけようと思ってるんです」
「どうして?」
「ネットはただ時間を消費しているだけでしょう。それより筋トレしたほうがいいでしょ。動いているだけで筋肉が貯まる感じがするじゃないですか」

ネットの世界の情報は玉石混淆といわれているが、石がほとんどで玉はほんの数パーセントだろう。梅田氏はネットの向こうに良質な情報を提供してくれる人々がいるようだ。玉を抽出できる数少ないネットワーカーといえる。しかしそうでない大多数の人々にとってリアルの世界のほうが生産的に感じるのかもしれない。