goo blog サービス終了のお知らせ 

お気楽ビジネス・モード

ビジネスライフを楽しくする知恵や方法を紹介する

本多勝一『事実とは何か』朝日文庫

2015-11-09 08:26:22 | 広報・ジャーナリズム
たぶん、30年ぶりくらいに読んだ。
いつも気になっていたテーマ。
文庫になったのは1984年だ。
このなかの「事実とは何か」というエッセイが書かれたのは1968年となっている。
50年も前の文章なんだ。
でも書かれていることは今読んでも頷ける。

絶対的事実というものは存在しない。
主観的事実こそ本当の事実である。

私たちは表現するときにすべての事実から選択する。
E=H=カーの言った「歴史的意味という点から見た選択の過程」
ここで「歴史的意味」を「報道」に変えてもよい。
報道という点から見た意味ある事実の選択をする。
その事実により読者に筆者の主張を伝える。
このときに「米帝国主義者どもは・・・」という表現を使うと説得力は逆に弱まる。
主観的事実を選ぶ目を支えるものは記者の世界観。

「ジャーナリストは、支配される側に立つ主観的事実をえぐり出すこと、極論すれば、
ほとんどそれのみが本来の仕事だといえるかもしれません」

報道における事実と表現とは

表現の目標を「正確な全体的事実」としての本質におくと、次の式になる。

部分的事実 + 想像 = 本質

報道は、部分的事実と想像がはっきり分けられる。
小説はこれらが混然一体となっている。

しかし、表現の手法に進化はあったとしても、客観的事実などないというのは、今も昔も、これからも同じだろう。

本多氏はベトナム戦争に従軍し、アメリカ側、解放戦線側のどちらも取材した。
「ジャーナリストは支配される側に立つ」というのは、そこから得た事実に対する考えなのだろう。
旧日本軍に従軍した記者に会うと、「戦場の村」について「戦争とはそんなものだ」という感想を述べる人が多かったとか。
最前線で兵士が殺し合う戦争の場面を見たとしても、アメリカ軍の従軍記者としての視点でその場面を見るのと、解放戦線の側で取材するのでは違う。侵略戦争には侵略する側とされる側しかしない。その取材をするということは、自ずからどちらかの視点になるという。
ジャーナリストの本来の仕事について、本多氏が支配される側に立つ主観的事実をえぐり出すこと、と言い切るのはそういう時代的な背景もあるのだろう。
ハルバースタムの著書をアメリカ側としての限界を指摘しながら、アメリカの権力を批判するジャーナリズムとしてもその姿勢を高く評価する。
おそらくこれは第4の権力としてのメディアの役割を自覚しているからだろう。

橋本保雄『ホテルオークラ橋本流クレーム対応術』

2007-04-01 18:44:19 | 広報・ジャーナリズム
ずいぶん前に買っていたものだが今回初めて読んだ。
ホテルのクレーム処理というのは奥が深い。
サービスと言っても値下げ要求には応じるわけではない。値下げ要求には、ホテルの値段設定のしくみや割引の合理性の説明をするらしい。キャンセル料を払わないという客から料金をもらうのには日本ホテル協会の協定で説明する。顧客のクレームに耳を傾けながらもホテル事業として譲れない線は守るという。悪質なクレーマーには毅然と応対する。別の証人になる者といっしょに注文を聞いたりする。悪質なクレーマーのブラックリストはホテル間で共有されているので、出入り禁止になると他のホテルも入れなくなるのだそうだ。顧客と親しくなっても個人的に食事に行ったりゴルフに行ったりすることは避け、客との一線は画する。これは一線を越えると多大な要求が出てきたり、トラブルのもとだからだそうだ。クレーム処理が業務改善だけでなく新商品開発に結びつくこともある。「時差ぼけの客にも同じサービスしかないのか」という客の声からからジェット・ラグ・プランが生まれた。これは時差ぼけの客をリラクゼーションで癒しながら、ホテルで眠る時間なども他の客と別にするというもの。クレーム処理は客の立場になって、どうしてこういう不満を言うのかということの背景まで考えることが大切。しかし、顧客主義とは顧客のわがままにふりまわされることではなく、ホテルの事業としてのサービスを向上させることなのだ。基本をしっかりもった上で、マニュアルを越えたおもてなしをするのがホテルのクレーム処理だ。


佐々木俊尚『グーグル』(文春新書)

2006-08-18 20:42:53 | 広報・ジャーナリズム
今朝のニュースによるとグーグルのアメリカ本社は無料の無線LAN接続サービスに乗り出すらしい。とうとうそこまで来たか、という感じだ。この本はグーグルという検索サイト運営会社が既成の媒体や業界をことごとく壊していった様子が描かれている。たとえば、既存の広告やインターネットのバナー広告でさえ、グーグルの検索結果が提供する広告のような広告でないものにとって代わられた。インターネットが拡大し、ポータルサイトである検索サイトビジネスが大きな影響力をもってきた。グーグル、ヤフー、MSNが覇権を争うために様々なサービスを始め、様々な会社が吸収されている。無線LANというハードな部分まで吸収してもなおかつネット検索が利益を上げるということなのだろう。Web2.0が何なんかよくわからないが、ポータルがただのポータルでなく、目に見えない巨大な玄関になるのだろう。

世耕弘成「プロフェッショナル広報戦略」(ゴマブックス)

2005-12-30 18:58:18 | 広報・ジャーナリズム
自民党圧勝で終わった今年の総選挙の広報責任者が書いた本ということで今しか読まないだろうと思って買った。読んでみると案外まじめな本である。NTTの広報担当課長であった経験やボストン大学大学院にで広報を専門的に学んだ背景があるからなのだろう。小泉首相に対して、官邸はデータ重視の広報本部を設けるべきと進言したのを首相が「世論調査の結果だけなら田中真紀子外相は更迭できない」とデータだけじゃ政治はダメなのだと評価したエピソードも面白い。NTTの新人時代にやった11紙の新聞の切り抜き作業や論説比較をした作業の経験が現在も活かされているということも広報を考える上でとても参考になる。