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石平のChina Watch 中国共産党の強権的言論統制の終焉かーそれとも言論統制強化か

2013-01-31 19:41:38 | 意見発表

石平のChina Watch 中国共産党の強権的言論統制の終焉

2013.1.17 11:07 MSN産経ニュース
中国広東省の週刊紙「南方週末」の10日付紙面(河崎真澄撮影)

中国広東省の週刊紙「南方週末」の10日付紙面(河崎真澄撮影)

 今月初旬に中国紙・南方週末の紙面が地元の広東省共産党宣伝部の指示によって改竄(かいざん)された事件で、当事者の編集者や記者たちが当局の横暴に対して果敢な戦いを挑んだことが多くの報道によって知られた。本欄が「反旗を翻した中国メディア」と題して、中国の国内メディアが政府の言論統制に反抗し始めたことを報じたのは2011年8月のことだったが、それから1年数カ月がたった今、反乱はより本格的になってきている。

 事件が展開している中で、筆者の私が興味深く注目しているのはむしろ、反対の政権側の動き方である。紙面の改竄を主導したのは間違いなく広東省共産党宣伝部であったが、実は、改竄の対象となる文章の担当編集者や記者が休暇中という隙を利用して実行されたという。休暇が終わって職場に戻った編集者たちが異変に気がついて直ちに抗議行動を始めたのが事件の始まりである。

 共産党の絶対権力をバックにしてメディアに君臨しているはずの党宣伝部が、いつの間にか「コソ泥」のような風情で本来の職務である言論統制をこそこそと遂行している光景は滑稽にも見えるが、彼らはどうやら、自分たちの力と仕事の正当性に対して自信を失っているようである。

 さらに面白いことに、事件が発生して全国のネット世論が改竄行為を厳しく批判している中で、当事者の広東省党宣伝部の責任者が公の場に出て自分たちのやったことの正当性を主張することは一度もなかった。広東省党宣伝部の上位機関である共産党中央宣伝部にしても、全国で広がっている批判に対して反論したりすることは一度もない。

 中央宣伝部の行った最大の反撃はすなわち、環球時報という御用新聞紙が掲載した政権擁護の社説を、全国の新聞に転載を強いたことだ。

だが、政権側に立ったこの環球時報の社説には、「紙面の改竄は正しい」と正面から宣伝部を擁護するような文句は1行も書かれていない。社説が政権のために行った唯一の弁明はすなわち、「広東省の党宣伝部は実は、紙面差し替えに関与していない」ということである。

 つまり、中央宣伝部にしても御用新聞の環球時報にしてももはや、共産党による言論統制を「正しいこと」として堂々と主張できなくなっている。彼らはむしろ、全国からの批判にさらされている中で「自分たちはやっていない」と逃げ腰の弁明に躍起になっているありさまである。

 そこにはもはや、絶大な権威と権力を持って言論を完全に圧殺できた往時の党宣伝部の姿はない。彼らは依然、絶大な権力を持っているものの、人々から認められるところのイデオロギー的正当性や権威のかけらもない。今まで抑圧されてきたジャーナリストや一般民衆が声を上げて堂々と抗議活動を展開している中で、共産党の権力者たちはむしろ身を縮めて民衆からの批判をかわすのに精いっぱいという情けない立場に追い込まれている。

 ここまで来ると、共産党宣伝部による言論の統制はすでに破綻寸前の末期状態であるといえよう。やっている本人たちが「それが正しい」と主張できなくなるような仕事が、どうやって長続きするのだろうか。おそらく党宣伝部のみならず党の最高指導部も、このままでの言論統制はもはや無理であることを悟っているはずだ。そういう意味で南方週末改竄事件は、共産党政権による強権的言論統制が終焉(しゅうえん)を迎えようとしていることを告げた歴史的な事件であるかもしれない。言論の自由と民主化の流れはもはや誰も止められないのだ。

                ◇

【プロフィル】石平

 せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。

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2013年1月25日(金) NEW

南方週末・中国社会への波紋

 

新年早々、中国を揺るがした大論争。

「報道の自由を守れ!」

「新聞検閲反対!
南方週末を支持する!」

中国の新聞「南方週末」の記事が当局による検閲で書き換えられたとして、記者らが反発。
インターネットを通じ、ストライキを呼びかけるなど、抗議の声を上げたのです。
立ち上がった記者らを、多くの市民も支持し、言論の自由を求める声が広がりました。

デモ参加者
「多様な意見が許される平等な社会になって欲しい。」

ところが、問題の発覚から3週間。
南方週末の記者たちは、口をつぐんでいます。

南方週末 記者
「今はまだ表だって話せません。
皆、大きな圧力を感じています。」

言論のありかたをめぐり揺れる中国。
現場で何が起きているのか?
「南方週末」内部への独自取材から、今後のゆくえを読み解きます。

傍田
「習近平体制が発足した中国。
はびこる汚職や貧富の格差に加えて、言論の自由をめぐる問題にどう対応するかが新指導部にとっての重要な課題となっています。
『南方週末』の一件は、中国の言論をめぐる状況に大きな影響を与える可能性があるだけにその行方が引き続き関心を集めています。」

鎌倉
「中国の言論のありかたはどこまで変わりうるのか。
『南方週末』内部への独自取材を通じて読み解きます。
まずは、今回の問題の経緯について黒木さんからです。」

黒木
「問題の発端となったのは、1月3日付けの『南方週末』です。
こちらが掲載されるはずだったと言われている記事からの抜粋です。

『中国の夢 立憲政治の夢』と題された記事。
『中国ではまだ自由、民主、豊かで強い立憲政治が実現していない』などと訴えています。
これに対しまして、共産党宣伝部が、編集長などに書き換えを指示したとされています。
実際に掲載されたのはこちらです。

題名は、『我々はいつの時代よりも夢に近づいている。』
『中華民族の偉大な復興を実現することが、近代以来の最大の夢である』という習近平総書記の言葉を引用しています。
『民主』や『自由』という言葉はありません。
インターネットで書き換えを知った若者たちは、『南方週末』の本社前に集まり、4日間にわたって抗議しました。
一部の参加者が拘束されましたが、支援の動きは、他の新聞社や著名人にも広がりました。
これに対し当局は、このように『政府に公然と刃向かえば必ず敗者となる』とする社説を掲載するよう新聞各社に指示。
中国国内で、抗議の声が上がりました。」

鎌倉
「『南方週末』は、その後も毎週、発行されていますが、検閲制度に対する記者たちや市民の不満は、くすぶり続けています。
今、現場で何が起きているのか。
『南方週末』内部の関係者はどのような思いを抱いているのか。
取材しました。」

「南方週末」問題 関係者が語る内幕

報道が共産党によって、統制されている中国。
その中にあって、官僚の汚職や社会の不正などの独自取材で定評のある「南方週末」は、都市の若者を中心に人気を集め、毎週170万部以上を発行しています。
2009年に、オバマ大統領が中国を訪れた際には、アメリカ側が数ある新聞の中から、唯一、南方週末を選び、単独インタビューに応じました。
今回、なぜ、南方週末の記者たちは声を上げたのか。
私たちは、内部事情を良く知る人物に取材することができました。
「南方週末」の元デスク、鄢烈山さんです。
今でも編集部に出入りしているという鄢さんは去年(2012年)、広東省に新しい共産党の宣伝部長が来てから、編集部の様子が変わったと言います。

『南方週末元デスク 鄢烈山さん
「毎回のように取材内容を宣伝部に報告し、して良いこと、いけないことを指導され原稿も検閲を受けなければならなくなりました。
私が編集部に行くとこっそり不満を述べる人ばかりでしたよ。」

「報道の自由を守れ!」

「検閲反対!
南方週末を支持する!」

「南方週末」の本社前で連日行われた抗議活動。
ネットで事態を知った若者などが、言論のありかたや中国の政治体制について、公然と議論するようになりました。
24歳の李恵周さんもその一人です。

『南方週末記者らを支持する 李恵周さん
「共産党の1党支配をあなたがたは絶対だと言うんですか?」

李さんは、南方週末の本社がある広州から車で2時間離れた農村の出身です。
大学時代から欧米の民主主義に関心を持ってきた李さんは、インターネットで海外メディアの情報にも頻繁に接しています。
中国のメディアに変わって欲しいと思い、生まれて初めて抗議活動に参加しました。

『南方週末記者らを支持する 李恵周さん
「自由に意見を言い合うのは誰かを打倒するためではありません。
多様な意見が許される平等な社会になって欲しいのです。」

その後、当局は、騒動の拡大を避けるため、記事の事前の検閲をやめることで幕引きをはかったと言われています。
旧正月を控えた今月18日、「南方週末」の記者たちが集まり、この1年の仕事を振り返る、忘年会が開かれました。
この1年で、当局の圧力などによって掲載できなくなった記事は1034本。
この日、その中から優秀な記事が選ばれ、表彰されましたが、書き換え問題についての説明はありませんでした。
記者たちは、インターネットの書き込みを禁じられたり、事情を口外しないよう指示されるなど、厳しい統制を受けています。

「南方週末の記者ですよね。」

「みんな大きな圧力を感じています。
間もなく一段落しそうですが今は話せません。」

多くの人が口をつぐむ中、「南方週末」の記者が、名前を出さないことを条件に、私達の取材に応じました。

『南方週末記者の証言
「多くの記者たちは今回の結果に満足していません。
読者や支持者に何も説明できていませんから、我々は今回のことで何をすべきか、どう対処すべきかを学びました。
しかし中国メディアで働いている以上、不自由な環境はある程度受け入れなければなりません。
『言論活動は自由であるべきだ、政府の統制を受けるべきでない』
そう考えている人は中国のメディアで仕事を続けられません。
これが現実です。」

南方週末の元デスクの鄢さん。
記者たちの不満がくすぶりつづけているため、今後も当局との腹の探り合いが続くといいます。

『南方週末元デスク 鄢烈山さん
「当局から(記者への)報復はなく、執筆前の検閲はなくなりました。
しかし発行後の審査と処罰がなくなったわけではありません。
言論をめぐる状況の改革を焦らず一歩一歩進めるしかありません。」

中国 検閲めぐる問題 浮き彫りになったもの

傍田
「では、取材にあたった石部記者に聞きます。
関係者の本音に少しでも肉薄しようという取材だったと思いますけれども、今回の『南方週末』の問題で、中国メディアを取り巻くどのような問題が新たに見えてきたというふうに感じていますか。」

石部記者
「今回の問題が浮き彫りにしたのは、共産党の報道統制に対する記者たちの鬱積した不満が一般の人たちにも共有され、言論の自由を求める世論が少しずつ高まっているという現実です。
中国で当局とメディアとのせめぎ合いが明るみに出ること自体はこれまでもありました。
たとえば7年前には『氷点週刊』という新聞が、共産党が推し進める歴史教育を客観的に見つめる必要があると主張する論文を掲載したことで一時、発行停止の処分となり、編集長が解任されました。
4年前には北京の雑誌の記者らが編集部門に過剰な干渉があったとして、集団で辞職したこともあります。
これに対して今回の『南方週末』では北京から広東省に共産党の宣伝部長が送り込まれて以来、それまでなかった記事の執筆前の検閲まで始まり新指導部が発足した後も、報道統制が少しも緩和されない現状に記者たちが怒りを爆発させ、これに市民が共感を示した形です。
今回の問題は一応、鎮静化しましたが、記者だけでなく一般市民も中国当局の統制をかいくぐってインターネットなどで、自由に外国の情報にアクセスしています。
それだけに、同じような問題が他の場所の別のメディアでも起こる可能性は高いと思います。」

中国 厳しい言論状況 今後の行方は

鎌倉
「『南方週末』をめぐる問題では、執筆前の検閲がなくなるなど、当局側が譲歩したようにも見えますけれども、今回の問題は、中国の言論をめぐる厳しい状況に今後、どのような影響を及ぼすと見ていますか?」

石部記者
関係者によりますと、記事の執筆前の検閲はすでになくなり、記者たちも処分されないことになりました。
今後、問題を大きくした『南方週末』の編集長や党の宣伝部長を交代させるという情報も出ています。
しかし情報化が進み、多様化している中国社会では、従来の官製メディアでは真実は伝えられず、飽きたという意見があることも事実です。
日本や欧米のような報道の自由を掲げるメディアを求める声はますます強まっています。
習近平指導部のもとでも当局とメディアのせめぎ合いは続き、当局によるメディアに対する監視と統制が一段と厳しくなることも予想されます。」


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