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韓国、露呈した「匠」軽視の弊害 ⇒持ちつ持たれつの経済関係を外交で支え、互いに構造改革の時間を稼ぐ再構築だ

2019-11-10 16:06:38 | 意見発表

 

韓国、儒教資本主義のワナ 露呈した「匠」軽視の弊害
本社コメンテーター 梶原誠

2019/9/19 2:00
情報元
日本経済新聞 電子版

 

韓国市場に静かな不安が広がっている。きっかけは7月以来止まらない日本との貿易戦争だ。

「韓国は、政策の行方が見通せる数少ないアジアの国だった。今のままでは韓国への信頼を考え直さざるをえない」。9月、ソウルで開いた投資家の討論会で、日韓対立の影響を問われた欧州の投資会社の幹部が心配顔で語った。

 

 

 

韓国の株価は世界の主要市場同様、8月半ばから回復している。だが、よく見ると戻りが鈍い。日本と比べても、近年連動性を強めている中国と比べてもだ。通貨ウォンも8月に、対ドルで年初来10%安まで売られた。「ミニ韓国売り」が起きている。

日本の輸出管理の厳格化で火を噴いた攻防はその後、韓国によるまさかの日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄決定や、世界貿易機関(WTO)への提訴へと飛び火した。スキャンダルが飛び出した大統領側近の曺国(チョ・グク)氏の法相起用も内政の混乱に拍車をかけている。

「予見可能性」は投資家や企業がその国に投資をするかどうかを決める際、最も重視する要素だ。シナリオが描けないとリスクは取れない。韓国の予見可能性は3カ月前と比べて確実に低下した。

韓国で一体何が起きているのか。人々の行動の根底にある風土に着目すると、理解が一気に深まるだろう。「儒教資本主義」の限界が露呈している――と

儒教は中国の孔子の教えを起源とする思想だ。14世紀ごろから朝鮮半島で独自の進化を遂げ、今も人々の生活に根強く残っている。

今こそ注目すべきなのは、儒教を普及させてきた特権階級「両班(ヤンバン)」の間で、「匠(たくみ)」が軽視されていた事実だ。農工業から料理まで、物作りは使用人の仕事で尊敬されなかった。

そんな風土が部品産業、特に同産業を支える中小企業の弱さを招いた。1950年代の朝鮮戦争の荒廃から製造業を立て直す際、部品や素材は技術を持つ日本に頼った。その後も「産業の両班」である財閥は、製品の納入を渇望する下請けに低価格を求め、技術革新への資金的な余力を削った。

韓国は半導体や自動車などで輸出立国として成長したが、裏では技術面で頼りにする日本向けの貿易赤字が拡大していった。日本の輸出管理の厳格化は、韓国の「不都合な真実」を露呈させた。

曺法相の疑惑も、儒教全盛期の暗部と重なる。エリート官僚への登竜門となる試験「科挙」は事実上、両班しか受けられなかった。持てる者がもっと持ち、持たざる者は取り残された。

格差の構図は今も変わらない。金持ちが、有力塾のあるソウルの高級住宅地に住み、子弟が有名大に入り、財閥に就職していく。曺法相が人々の怒りを買ったのも、同氏が立場を悪用して娘を進学させた疑惑が浮上したからだ。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は今回、儒教資本主義のワナに気付いたかのようだ。日本からの輸入製品を内製化するため、産業支援策を続々と打ち出した。看板政策の「所得主導成長」は低所得者に報い、格差を縮小する形で成長する構想でもある。

だが専門家の見方は厳しい。例えば90年代に技術者としてサムスン電子の成長を支え、「ミスター半導体」と呼ばれた陳大済氏。7月、韓国紙の取材に応じ、日本製の半導体素材を国産化する展望について、文大統領が耳を塞ぎそうなひと言を残した。「永遠に代替できないかもしれない」。すでに追い付けないほどの技術格差があるとの見方だ。

所得主導の成長も株式市場の評判が悪い。政策の目玉である最低賃金の引き上げが、企業から稼ぐ力を奪っているからだ。

もともとの賃金水準が低く、最低賃金の引き上げが人件費の増加につながりやすい中小企業は特につらい。売上高100億円以下の企業を対象に調べると、人件費を柱とする販売管理費の売上高に対する比率は、最低賃金を前年比16%引き上げた18年に急増した。営業利益も全体で赤字に陥った

売上高が100億円を超える大企業の同比率は抑制されていたが、19年1~6月にはついに上昇に転じた。営業利益率も18年の7.8%から6.2%に低下した。

韓国の潜在成長率は2%台と、約20年で半分になった。出生率は1を下回り、労働人口の減少が見込まれる。生産性まで落ちると潜在成長率が徐々にゼロに向かうという懸念がくすぶっている。

市場が「静かな不安」にとどまっているのは、韓国には蓄積があるからだ。サムスン電子の株式時価総額は、トヨタ自動車を上回るアジア3位。同社ほど流動性が高い銘柄を他国で見つけるのは難しい。だが冒頭で紹介したように、投資家もしびれを切らし始めた。

韓国経済が深手を負うと、輸出の7%を韓国に頼る日本もただでは済まない。衝撃を吸収できればまだしも、米中摩擦を筆頭に景気悪化の種は他にも多く、逆風下で初めてとなる消費増税も間近だ。

韓国も日本も、市場が深刻な反乱を起こす前に選択する必要がある。一つは、留飲を下げながら互いに傷つけあう「ルーズ・ルーズ」の消耗戦。もう一つは、持ちつ持たれつの経済関係を外交で支え、互いに構造改革の時間を稼ぐ「ウィン・ウィン」の再構築だ。

マネーは国のメンツなど気にしない。成長をやめた国を去り、成長する国に向かうだけだ。今まさに、政治の決断を凝視している。

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梶原 誠

本社コメンテーター

グローバル市場

東京、ニューヨーク、ソウル、香港を拠点に市場を通して世界を見てきた。アジア通貨危機、日本の金融危機、リーマン危機も取材。編集委員、論説委員、英文コラムニストを経て2017年2月より現職。市場に映る全てを追う。


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