あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

うらめしや~、冥土のみやげ ・東京藝術大学美術館

2015-07-27 00:35:29 | 日本美術
 

 夏といえば、怪談、お化けのシーズン到来です。
 私がお化けを最初に見たのはいつだったことでしょう。
 北海道の田舎町にサーカスが回ってきました。
 その時に公園の広場にいかがわしい見世物小屋が立って、
 その中にろくろっ首があったように思います。
 実際は見る機会はなかったのですが、
 今にして思えば残念なことです。
 幼稚園児には刺激が強すぎて親が連れて行ってくれなかったのだと思います。
 では、どこか。
 遊園地のお化け屋敷、でしょうか。
 私は端っから仕掛け物だからと高をくくって
 いそいそゴールを目指したのではないかと
 可愛げのなさを今更ながらに反省します(笑)

 東京、谷中全生庵に怪談の噺家、三遊亭圓朝ゆかりの
 幽霊画が50幅所蔵されているそうです。
 夏になればコレクションされた幽霊画を公開していて
 いずれ、と思いつつ日が経ってしまい、
 悔しい思いを持ち続けていましたが、
 今夏、芸大美術館でその機会がめぐってきました。
 大変喜びつつ、勇んでいってきました。

 フライヤーの表を飾るのは
 上村松園の「焔」
 女性の怨念が般若に変わる寸前のような鬼気迫るものがあります。
 情念に狂う女の着物は蜘蛛の巣に藤の花房がかかります。
 近代日本絵画の中でおどろおどろしさ満載の作品として有名ですが、
 会場のお披露目は9月1日から13日までとのこと。
 引っ張ります。

 会場は全生庵コレクション中心の展示、
 幽霊縁の絵を遠方からも集合しての展示に分かれています。
 先ずは、三遊亭圓朝を紹介するコーナー。
 肖像は河鍋暁斎、鏑木清方。
 伊勢辰貼込帖より圓朝辞世の色紙、扇面何というものもありました。
 高座用の湯呑、パイプや湯たんぽまでも。
 実際どんな怪談を名調子で語ったのでしょう。
 今や人間国宝となられた講談師、一龍斎貞水さんの
 野太い声で四谷怪談を聞いたことがありますが、
 小道具なども登場したりして、ちょっとしたエンターテイメントで
 大変面白く、思わずのめり込んでしまいました。
 
 会場の狭い廊下のようなところをぐるりすると
 照明は薄暗く、天井から蚊帳が宙づりされていて、
 部屋の隅には雪洞がぼんやり灯り、
 幽霊が壁面にぞろり張り付いて、こちらを見つめてきます。
 ひゅ~という風も聞こえてきそうです。
 壁に張り付いたお化け、幽霊たちは全生庵のコレクションでうまりました。
 伝 応挙から、谷文一、谷文中、中村芳中、広重、
 河鍋暁斎、芳年、是真、鰭崎英朋、などなど極上の絵師が並びます。
 驚いたのは今村紫紅が幽霊ではなく、「月に鵜図」で参加していたこと。
 鰭崎英朋はお化けでも色っぽく、あの世にはまだまだ行かないだろうと
 美人図に見惚れました。
 圓朝の髑髏図自画賛をみて、何でも器用な方なのだなぁと感心しました。
 芳中はお化けを描いてもどこかコケティッシュです。
 
 次の展示室に移動すると、
 錦絵によるうらみの系譜として、浮世絵師たちの力作が並びます。
 浮世絵でもずいぶんと幽霊お化けが描かれていたことを再発見します。
 牡丹灯籠のお露、皿屋敷のお菊、四谷怪談のお岩、累ヶ淵の累が代表で
 そのキャストが登場しますが、
 まぁ、お岩さんの悲惨な姿に、伊右衛門は本当にひどい男の代表で、
 どうしようもないのだから、こてんぱんにしてやって欲しいと
 願掛けをするのです。
 その怨念を国芳、北斎、芳年、等々が競演します。
 「偽紫田舎源氏」月岡芳年 
 この詰め込み過多の圧倒的画面に息をのみました。
 
 次に うらみが美に変わるときとして、肉筆画が展示されます。
 なんと関西の絵師、祇園井特の作品が紹介されて喜びました。
 こちらにも暁斎、伝応挙、芦雪の作品があり、
 曽我蕭白の「柳下鬼女図屏風」が現れ、おうっとなりました。
 
 会期は9月13日までと長そうですが、
 8月18日以降、展示替えがあり、相当数入れ替えがあるようです。
 後期の展示もぜひとも確認して実見したいと思います。
 芸大美術館の特設サイトはこちら。
 
 会場の片隅から一龍斎貞水さんのおどろおどろしい声が漏れ聞こえると思ったら
 怪談のビデオが放映されていました。
 ビデオは半ばでしたし、時間が足りなかったので、
 諦めて通り過ぎましたが、次回はしっかり時間を確保して
 鑑賞したいと思いました。

 
 幽霊とは案外身近な存在なのかも知れません。
 悲しませた人、いませんか?

 東博で開催されたプライスコレクションに美しい幽霊画があったことを
 思い出しましたので、ご紹介します。



 左は「柳下幽霊図」幽霊を呉春、描表装の柳を松村景文が描きました。 
 右は「幽霊図」芦雪の筆です。
 呉春の幽霊は背中に冷たいものを感じます。


 あなたの右肩を見て下さい。
 じっとあなたを見ていた人がいたように感じました・・・・・

 うらめしや~~~

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