あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

MOA美術館所蔵企画展 又兵衛 山中常盤物語 ・MOA美術館

2015-07-06 23:39:43 | 日本美術

 年明け早々からの懸案の色々がようやく山場越えしました。
 あっという間に今年半年が過ぎてしまっていて
 愕然とします。

 今年はなにか、ままならない事が押し寄せてくる一年となるのでしょう。
 それでもいつもステキな方の存在があって
 なんとかがんばれるのはそういった精神的バックアップのお陰だと
 しみじみ思い至り、ありがたく感謝するのです。

 そういった中、
 気心知れた友人と久しぶりに熱海、MOAの又兵衛見よう!
 と声を掛けてもらいました。
 丁度伊豆高原に住む両親が通う病院の日とも重なり、
 ランチは両親と、その後は友と美術館へ、という二度美味しい計画となりました。
 先月6月12日のことでした。
 
 そもそも辻惟雄先生著作の「奇想の系譜」「奇想の図譜」から
 相当影響を受けましたので、
 又兵衛を無視するわけにはいきません。
 MOA美術館にはその又兵衛の強烈な絵巻が三作品所蔵されています。
 「山中常盤物語」「浄瑠璃物語絵巻」「堀江物語絵巻」
 何年か前、「岩佐又兵衛作品集」矢代勝也著の本が発行され、勇んで手に入れて
 喜んでいました。
 極彩色にギラギラする絵巻が公開される度に、ぜひ行ってみたいと念願しましたが
 なかなかタイミングが合いませんでした。
 今回はその三作品の中の
 「山中常盤絵巻」全巻12巻が並ぶ展覧でした。
 新幹線車内で、辻惟雄先生著作の
 「岩佐又兵衛 浮世絵をつくった男の謎」文春文庫をお供に
 心躍らせて行ってきました。
 その中で、山中常盤物語にめぐるエピソードも面白く、
 よくぞ日本国内に留まってくれたものだと関わった
 長谷川巳之吉、そしてMOAの創始者岡田茂吉その二人に敬意を捧げます。
 もちろん、その後の研究第一人者である辻御大にも。

 さて、我ら二人連れ女史は雨そぼ降る熱海駅からバスに揺られ、
 緑深々としたMOA美術館に着き、延々と頂上へ導かれるエスタレーターを
 乗り継ぎ、受付を通りますが、同行する人がまばら。
 いよいよ看板の「山中常盤絵巻」12巻(全巻であっても公開部分は限りあり)
 との対面です。
 展示会場の薄暗いケースから色の洪水です。
 絵巻の様子は本の図からも想像はできますが、
 本体から溢れる絵の具の発色はあまりにも退色がなく、
 絢爛豪華、緻密細密!
 源氏の御曹司牛若丸と母常盤の物語。
 母常磐が侍従と連れだって牛若を訪ねる旅の途中
 盗賊に無残に着ぐるみはがされ襲われ殺されてしまう。
 山中の宿の主人が常磐と侍従の弔いをしたところに
 牛若丸が秀衡のもとから、夢に現れた母を訪ねてくる。
 宿の大夫と女房の協力を得て
 盗賊を見事打ち倒し、また秀衡のいる館に戻るが、
 三年三月後に平家打倒の大軍を引き連れ山中に立ち寄る。
 その時に母の墓前に冥福を捧げ、大夫と女房に山中の土地を与えて
 恩に報いた。情けは人のためならず。
 あらすじはざっとそんなお話なのだが、
 登場人物の表情、道具立ての細やかさ、
 微細な線描、絵の具の発色のすばらしさ、
 又兵衛独特のリアリティ。
 一場面どれもが手抜きのない、見る人を飽きさせない
 濃厚な絵巻きがずらずらと広がる姿は
 圧巻、としかいいようがなかったのでした。

 その他、MOAが誇る名品の数々も展示されていましたが、
 この「山中常盤絵巻」に力を吸い取られてしまって、
 洛中洛外図屏風や、仁清の色絵藤花文茶壺などさえ霞んでしまったのでした。
 その中では
 海北友松の「四季山水図屏風」が湿潤溢れるしっとりした
 水墨の世界観に惹かれました。

 雨が庭の木々に英気を注いだかのように
 緑が綺麗でした。
 その緑に誘われてお茶室でお抹茶を頂くことにしました。
 のど元から自然の英気が伝わり、質の良い休憩となりました。

 画像をご紹介します。
 慌ただしい中、ホッとできる小旅行気分を味わえる
 嬉しい一日となりました。





















 これが辻惟雄先生の著書と
 又兵衛MOA所蔵全作品集の本です。
 既に激しさが横溢しているとおわかり頂けるでしょう。


 これからも怪しげなパワフル又兵衛の作品を
 注目していきたいと思っています。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ken)
2015-07-08 23:19:25
こんばんは。MOA美術館所蔵企画展 又兵衛拝見いたしました。強烈なインパクトですね。正直に申しまして、岩佐又兵衛はあまり存じませんでした。紅梅白梅図で有名な美術館ですね。あべまつさまはご両親がご健在で幸せです。私も、妻の方も両親はもうおりません。親戚の主だった長老も亡くなり、自分たちがそう呼ばれるようになりました。掲載していただいた、緑あふれるお庭の写真がいいですね。苔の上のカエデの葉も心洗われる気がいたします。今日も有難うございました。
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ken さま (あべまつ  )
2015-07-13 22:17:47
こんばんは。
お返事遅くなりました。
MOAはその建物自体が浮き世離れしていて、旅した気分にさせてくれます。岩佐又兵衛の凄味ある作品は機会があればぜひご覧下さい。他、所蔵品の凄さは大変なものです。
80代の両親は病気と共生していますが、老夫婦何とかやってくれています。動けるうち、と思います。
急に暑くなりました。ご自愛下さいませ!
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