昨年10月にバーゼルⅢが「バーゼル銀行監督委員会」から発表された。
これは銀行の健全性を維持するための自己資本規制を言うが、1988年のバーゼル合意(BIS規制)、2004年のバーゼルⅡ(新BIS規制)に続く新たな規制強化策である。このバーゼルⅢは、サブプライムローンに起因した金融危機後の本格的な規制強化であり、日本の金融機関、特に中小の銀行などに重大な影響を与える。
顕在化していないが、今後問題になりそうな不良債権とも言うべき国債・地方債の存在が大きく影響しそうだ。
我が国における財政赤字、即ち公債残高が1300兆円とも言われる国民の総資産を超えるのも、時間の問題である。
(特に311の震災からの復興がこれを加速する。)
こうなると国債の消化を国内だけでははききれず、海外の投資家などに頼らなければならないとすれば、当然ながら長期金利は上がり、銀行の多くは多額の含み損を抱えることとなる。
2004年のバーゼルⅡでは、金利変動2%上下するストレステストでの損失額が、自己資本に対して20%を超える金融機関に対しては、自己資本の積み増しやリスクの削減等の是正措置を求めているが、既に昨年から地銀・第二地銀などでこれに抵触する銀行が出始めており、現在も増加の傾向にある。
また、日銀の金融システムレポートによると、金利が1%上昇した場合の金利リスク量は大手銀で約4兆円、地方銀で約5兆円とされており、全銀行の純利益が3兆円程度であるといわれる中、国債や地方債を中心とする公債の保有によるリスクストレスへの脆弱性を裏付けている。
大手メガバンクはさておき、自行の資産に内在するリスクが高くては、特に地銀・第二地銀など地域金融機関が採りうる選択肢は非常に限られたものとなる。新たなバーゼルⅢに対応するためには、高収益体質への転換が必須であるが、口で言うのは容易いが現実問題、体質転換出来ない金融機関が大勢を占めるだろう。
今後予測される、長期金利上昇に起因する資産の劣化リスクに対応するには、単純ではあるがROA(総資産利益率)を大きくすれば良く、リスク耐性の無い金融機関は、合併により規模の拡大を図るしかないだろうし、金融当局がこれを主導する事は大いに考えられる。
特に震災で深い痛手を負った東北太平洋地域の金融機関の再編は、地域再生と復興の観点から急務である。