阿部ブログ

日々思うこと

バーゼルⅢと金融機関への影響

2011年06月27日 | 日記

昨年10月にバーゼルⅢが「バーゼル銀行監督委員会」から発表された。

これは銀行の健全性を維持するための自己資本規制を言うが、1988年のバーゼル合意(BIS規制)、2004年のバーゼルⅡ(新BIS規制)に続く新たな規制強化策である。このバーゼルⅢは、サブプライムローンに起因した金融危機後の本格的な規制強化であり、日本の金融機関、特に中小の銀行などに重大な影響を与える。
顕在化していないが、今後問題になりそうな不良債権とも言うべき国債・地方債の存在が大きく影響しそうだ。

我が国における財政赤字、即ち公債残高が1300兆円とも言われる国民の総資産を超えるのも、時間の問題である。
(特に311の震災からの復興がこれを加速する。)

こうなると国債の消化を国内だけでははききれず、海外の投資家などに頼らなければならないとすれば、当然ながら長期金利は上がり、銀行の多くは多額の含み損を抱えることとなる。

2004年のバーゼルⅡでは、金利変動2%上下するストレステストでの損失額が、自己資本に対して20%を超える金融機関に対しては、自己資本の積み増しやリスクの削減等の是正措置を求めているが、既に昨年から地銀・第二地銀などでこれに抵触する銀行が出始めており、現在も増加の傾向にある。

また、日銀の金融システムレポートによると、金利が1%上昇した場合の金利リスク量は大手銀で約4兆円、地方銀で約5兆円とされており、全銀行の純利益が3兆円程度であるといわれる中、国債や地方債を中心とする公債の保有によるリスクストレスへの脆弱性を裏付けている。

大手メガバンクはさておき、自行の資産に内在するリスクが高くては、特に地銀・第二地銀など地域金融機関が採りうる選択肢は非常に限られたものとなる。新たなバーゼルⅢに対応するためには、高収益体質への転換が必須であるが、口で言うのは容易いが現実問題、体質転換出来ない金融機関が大勢を占めるだろう。

今後予測される、長期金利上昇に起因する資産の劣化リスクに対応するには、単純ではあるがROA(総資産利益率)を大きくすれば良く、リスク耐性の無い金融機関は、合併により規模の拡大を図るしかないだろうし、金融当局がこれを主導する事は大いに考えられる。

特に震災で深い痛手を負った東北太平洋地域の金融機関の再編は、地域再生と復興の観点から急務である。

ミャンマーから中国への石油・ガスパイプライン敷設

2011年06月27日 | 日記

~新援蒋ルートの構築と日本軍の勇戦とインド~

昨日、3箇所で同時爆破テロがあったと報じられている政情不安なミャンマーだが、中国との蜜月が続いている。
特に石油・ガスなどエネルギー関係での動向には注目。

2010年6月、中国の昆明に向けた石油と天然ガスパイプライン(中緬原油和天然気管道)の建設がスタート。
石油と天然ガスの両パイプラインほぼ平行に敷設するもので、総延長2,806km。
石油パイプラインのルートは、ミャンマー西海岸のRakhine 州Maday島(Kyaukpyu)から今後建設する原油埠頭を起点として 、雲南省瑞麗から中国に入り、貴州省安順までは天然ガスパイプラインと並行する。

天然ガスパイプラインは安順から貴州を経て広西に向かうが、石油パイプラインの方は、安順から貴州を経由して終着・重慶 に達する。製油所は、安寧と重慶に建設予定で、両製油所も20万b/d 規模とされる。

ミャンマーから中国への石油&ガスパイプラインは、2013年完成予定で工事が進められており、この石油&ガスパイプラ インで、石油を年間2200万トン(約44万b/d)、天然ガスを年間120億立法メートル相当を中国に輸送する。
パイプラインの建設は「東南亜天然気管道有限公司」と「東南亜原油管道有限公司」が、石油パイプラインだけでもミャンマ ー国内771km、中国国内1,631kmの総延長2,402kmを敷設する事となる。

中国の狙いは、マラッカ海峡を経ずして国内へ石油&天然ガスを輸入できないか?と言う課題解決の方法として検討されてき た。つまり、中東やアフリカの石油を、前述のミャンマー西海岸Kyaukpyu に建設される60万立法メートルの原油埠頭を経 由して、ミャンマーを横断し中国に搬送する。見事にマラッカ海峡をカットできるエネルギー輸送ルートが完成する。
中国政府は、ミャンマー軍事政権に対して、首都移転や発電所、港湾など社会インフラの整備に積極的に資金を投下し、90 年代から政治・経済的関係を着々と構築してきた。これが実を結んだ。

ミャンマーが、ビルマと呼ばれ、先の戦争では日本軍がビルマを占領した時代もあった。

イギリス・ウィンゲート准将の「チンディット作戦」、インパール作戦での第15軍の崩壊、その後の連合軍の本格反攻によ り、戦力はボロボロ状態で敗戦を迎えたが、今回の中国国内に向けたパイプライン敷設は、蒋介石を援助する、所謂「援蒋ル ート」と重なるのは偶然ではない。

日本軍は、この「援蒋ルート」を断ち切る為、北部ビルマ(拉孟、ミートキーナ、フーコン、騰越-北ビルマ)で作戦を実施 し、勇戦敢闘している。これは広く知られて良い歴史的事実だ。
この地域で戦ったのは、第18師団(通称菊兵団)と第56師団(通称龍兵団)。
彼らは圧倒的戦力差のある状態で、かつ貧弱な装備と食糧も殆どない状態で戦った。フーコンでの戦闘は、1万2000対1 0万、拉孟では1290対4万、騰越2025対5万。

流石、尚武の地、九州の部隊だ。

今度は、インド軍が戦って欲しい所。中国は『真珠の糸』と呼ばれる対インド戦略を進めている。これはインド周辺国に拠点 を作り、インド包囲網を構築するもの。例えばスリランカ南部のハンバントータと、パキスタン南西部のグワーダルの港湾は 、中国の原子力潜水艦や空母など大型艦の利用が可能であり、ミャンマーにおいては近代的な海軍装備の供給を見返りに、ベ ンガル湾側のココ島、チャウッピュー、シットウェの港湾施設の利用権を得ている。

またヒマラヤを巡るマクマホンラインでは、今だ中国とインドとの国境は確定しておらず、今回またミャンマー経由での直接 中国国内へエネルギー供給を行なうと言う状況を、現状インドは静観しているが、何れ両軍が戦う事も無いともいえない。

インドも中国同様、国内経済の著しい成長に伴ってエネルギー輸入が増加している関係から、石油・天然ガスの輸入ルートの 安全確保は重要な課題である。
このような地政的状態を考えるとインド海軍を増強させる必要がある。特にアンダマン諸島の海軍基地を充実させ中国海軍を 排除し、ベンガル湾での制海権を確立する事でニコバル諸島からベンガル湾一帯に存在する石油・天然ガス資源へのアクセス を確実にする事が重要。

新たな「援蒋ルート」である石油・ガスパイプラインや、青海省西寧とチベット拉薩を結ぶ「青蔵鉄道」など中国周辺地域か ら中国国内へ至る交通、資源・エネルギーインフラの情報を様々収集し、いざと言う時にはそれなりの対応が出来る体制は必要と考える。