阿部ブログ

日々思うこと

Energy Harbesting Technology

2011年06月30日 | 日記
慶応大学(藤沢キャンパス)の武藤教授は、温度差や振動を利用したパワー・ハーベスティング技術の開発に邁進されている 。この事は、当ブログの一番最初に掲載したが、これを再掲しつつ最新の状況を確認したい。

慶応義塾大学・武藤佳恭教授の求めに応じて当時の浜田防衛大臣が、2009年6月8日(月)10時~藤沢キャンパスで 1時間程講演を行った。この講演前に武藤教授の研究室を大臣が訪れ、武藤教授が研究しているペルチェ素子を使った温度差発電装置、床発電、超指向性音源などの説明を受けていた。

この様子はTBS「夢の扉」のスタッフが撮影していたが、この無駄に捨てられているエネルギーに着目して研究を続けている武藤教授の研究室にTBSのスタッフが張り付いて取材をしてた。
この様々な場所に存在しながらも有効活用されていないエネルギーを電気エネルギーに変換する技術を「パワー・ハーベスト 技術」(power harvesting technology)、または「エネルギー・ハーベスティング」(Energy Harbesting technology)と 言う。

床発電について武藤教授は、現在JR東日本と共同で2006年から東京駅丸の内駅北口のSuicaゲートを使って床発電の実証実験を行なってきた。これは、武藤教授がJR東日本の大塚会長(当時社長)に提案して実現したもの。

この床発電は圧電素子(ピエゾ素子)をSuicaゲートの床下に敷詰め、床を歩く人の振動エネルギーを電気に変え蓄電池に貯 めると言うもので、1人当たり0.07W~0.7Wの発電量があることが実験の結果明らかになっている。2008年には、Suicaゲ ートだけでなくコンコースも含めた90平方メートルに拡大してNEDOの支援を受け実験を行い500kWの発電量を得たと言う。

また床発電の他、ペルチェ素子という熱電素子2枚を使い、この素子間の温度差で発電する装置を武藤研究室で実際に見る事 ができる。改良が続けられてきた二代目の発電装置は、パソコンのCPUクーラーの上にペルチェ素子をおき、保冷剤で冷や して温度差を生じさせて発電し、モーターを回すという仕組み。
さらには和歌山県・白浜の有名温泉旅館で実験する予定の温度差発電がある。

温泉と気温の温度差で発電するもので、これは24時間365日発電が可能。発電条件が限定されている太陽電池、風力発電、床発電などと違い、火山国日本において温泉と言う地熱エネルギーを有効活用する将来有望なパワー・ハーベスト技術である。

さて武藤教授が研究している「エネルギー・ハーベスティング技術」が扱うエネルギーは非常に微弱であり、これをエネルギ ーとして活用するには新たな技術開発が必要である。例えば、人間の歩行に起因する振動のエネルギー密度は10の-4乗ワ ット/cm2程度であり、1メートル四方からえら得る電力は約1W。この微弱なエネルギーをかき集めて蓄電し、様々なデバ イスで利活用できるエネルギー密度を得る事が必須であるが、最新のデバイスは低電力化が進んでおり、かつエネルギー・ハ ーベスティングの発電量がデバイスの消費電力を上回りつつある事が、エネルギー・ハーベスティングを巡る状況を大きく変 えている。

『Energy Harbesting and Storage for Electronic Devices 2010-2020』(Harrop:Jul.2010)によればエネルギー・ハーベスティングに係わる関連機器の市場規模は、2010年時点で6億500万ドル。これが2020年には44億ドルまで拡大すると予測している。省エネ分野では世界一と言われる日本ではあるが、このハーベスティング技術開発については、欧米の1周遅れと言われており、311を経験した我が国においては、今後の研究開発の促進が強く望まれる。

そんな中、2010年5月に、NTTデータ経営研究所が事務局を務める『エネルギー・ハーベスティング・コンソーシ アム』が立ち上がった。
同社の発表によると、参加企業は、アダマンド工業、シチズン時計、豊田中央研究所、日本電気、パナソニック・エレクトロニックデバイス、富士通研究所、富士フイルム、ブラザー工業、村田製作所、山武、ルネサス エレクトロニクス、ロームなど12社。

具体的な活動としては「欧米における最先端情報の収集・分析、コンソーシアムメンバー間の連携によるパイロット・プロジェクトの創出、市場創造に向けた政策提言や情報発信、国内外の優れた技術を有する企業との連携、標準化の検討等を想定し、初年度においては、関連最新情報の収集・分析、メンバー間の情報交流、市場創造に向けた情報発信を中心に活動を展開する」としている。

当該コンソーシアムの継続的な活動に期待したい。


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