阿部ブログ

日々思うこと

アルミナ(酸化アルミニウム)製造における技術革新

2013年03月13日 | 日記

アルミナ(酸化アルミニウム)は、電気絶縁性が高く、耐摩耗性、化学的安定性があり、しかも安価であることから工業用セラミックスとして各方面で多用されている。しかしその製造過程からは「赤泥」と呼ばれる廃棄物が発生し既に世界で約30億トンが未処理のまま放置されており、重大な環境リスクを抱えている。
例えば、2010年10月4日ハンガリーにおいて堤防が決壊し「赤泥」を多量に含む洪水が市街地を襲い、大きな環境被害をもたらしましており、同様の環境被害は、中国、カナダ、インド、ブラジルなどアルミナ生産国で発生している。

「ボーキサイト・アルミナ・アルミニウム国際研究委員会」(ICSOBA)によると、今後も年間1億トンの割合で「赤泥」は増加し続けるとしている事から「赤泥」を生まないアルミナ製造の技術革新が希求されていた。

このアルミナ製造に関してカナダのORBITE社が「赤泥」などの廃棄物を出さずにアルミナを製造する革新的な新技術を開発した。ORBITE社は、高純度アルミナ生産に塩酸を使用するが、この生産工程には Cockerill Maintenance & Ingénierie社の技術を採用している。しかしながら、この技術で注目すべきは、アルミナの製造過程で出る残留物が環境的に無害となり、その容量がもとの状態の90%以下になる点。更には、残留粘土質の中から副産物として、ガリウム、スカンジウムなどのレアメタルやディスプロシウムなどレアアースなどの抽出も可能であり、同社はこの功績により2012年、カナダ国内新技術の最優秀賞を受賞した。

ORBITE社は、既にカナダに高純度アルミナ工場を完成させており、その製造コストは、オーストラリアのアルミナ製造会社が、320US$/tなのに対し、同社は210$/tであり価格優位性がある。この工場ではアルミニウム含有粘土鉱床を主要原材料として純度5N(純度99.999 %) のアルミナを生産しているが、このような高純度アルミナは、LED照明やリチウムイオン電池の普及により、今後世界的な需要が高まる事が予想されており、現在の高純度アルミナの供給不足の打開に一役買うと期待されている。

ORBITE社の研究所(ケベック州ラバル)にあるパイロット・プラントでは、更に高純度のアルミナ6N(純度99.9999 %)の生産に目途をつけるべく研究開発を続けている。この高純度アルミナ市場に関する資料としては「High-Purity Alumina (HPA) ― Market Potential and Orbite’s Competitive advantages」が参考となる。

最後に、埋蔵量10億トンともいわれるアルミナ粘土が埋蔵されているとされるカナダ・ケベック州グランドバレー(60,984ヘクタール)の独占的鉱山採掘権をもっており、ORBITE社は、今や堂々たる世界最大の高純度アルミナ生産企業である。

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