阿部ブログ

日々思うこと

アルジェリアでのテロ事件とマリへの軍事介入

2013年01月20日 | 日記

ブログでも書いたが、今回のマリへの軍事介入に長い内戦を経験したアルジェリアは参加していないが、「マグレブ・イスラム=アルカイダ」の活動が激化する背景にはリビアからの大量の武器流出がある。これは一時期のロシアと同じ状況であり、特にマリへのフランス軍を中心とする軍事介入と共に、チュニジアのメドニン地方では、国境警備隊が警戒態勢におかれ、武器密輸への対処警戒を厳としているが、広大な国境線を監視するのは非常に難しい。

アルジェリアでのテロ事件発生前にも、チュニジアでは、AK-47やAK-74、AKMなどの銃器、RPGや地雷、迫撃砲と砲弾、無線機材などが押収さえている。これは全部旧リビア軍の軍事資産である。これが大量にマグレブ・イスラム圏に流れ込んでおり、情勢の不安定さを増長する要因となっている。

今回襲撃されたのは、アルジェリアの南部イリズィー県アイン・アミナースのティクナトゥーリーナにあるガス精製施設。
テロ部隊の指揮官は、アブ・アル・バラア。彼はミスター・マルボロとか、ドイツのロンメル元帥のあだ名でもあった「砂漠の狐」とも呼ばれていた。タバコの密輸や様々なテロ活動をマグレブ・イスラムの砂漠地帯で神出鬼没な作戦を展開してきた。

彼は、イスラエルのダヤンと同じ隻眼の41歳。ムフタール・ベルムフタール(隻眼)のアルジェリア人。
パキスタンからアフガニスタン、そして中東域を超えてマグレブ・イスラム圏に至る武器密輸網が構築されており、これは国家の枠を超えた、将に裏のイスラム経済圏だが、彼はこの世界で生きてきた。今回のガス施設に対する攻撃は、アルジェリア政府が、自身は軍隊を派遣しないものの、フランス、イギリス、ドイツの軍事輸送機がアルジェリア領空を通過する事を許した事にあると言うが、武装組織の維持の為に、資金が必要だったのだし、箔をつける為の実績も必要で、仮にこれが成功すれば裕福なアラブ諸国からの支援が期待できる。いい宣伝になると言う訳だ。

しかし、アルジェリア軍の「速戦即決」により部隊は壊滅した。民間人の犠牲が伴ったが、個人的にはアルジェリア政府の決断は正しかったと思っている。ティクナトゥーリーナを浅間山荘にしては断じてならない。

もし長期化すれば、サハラ砂漠の地勢を巧みに利用し、豊富な密輸武器で武装したイスラム武装勢力の活動が活発化し、マリだけでなく、アルジェリア、チュニジア、リビア、ニジェール、モロッコなど、それこそマグレブ・イスラム圏でのテロ活動が一斉に蜂起状態になること。これは是非とも避ける事が必要だった。今回のガス精製施設など重要な資源生産施設は、辺鄙な辺境にあり、警備・防衛がそもそも難しい。サハラに生きる砂漠の民であれば、最新鋭の警備システムを欺瞞するのも訳ないだろう。実際に襲撃部隊は、ガス精製プラントのゲートに突如現れたと報道されているが、それはそうだろうと言う感じ。不思議はない。

さて、マリのフランス軍は増強され、外人部隊第2空挺部隊を含む1800名が投入されている。しかし、西アフリカ共同体ECOWASの部隊投入が迅速でない。最大の部隊はチャドだが、この他ナイジェリアなどの多国籍軍であり、統合的な部隊運用は難しいだろう。
米軍とドイツ軍もイギリスと共にフランス軍の兵站支援作戦を展開している。

フランス軍のマリへの軍事介入の背景』の通り、マグレブ・イスラム武装勢力は、リビアなどの密輸武器で武装し、指揮官や兵もイラクやアフガニスタンなどで実戦経験のある強者であり、フランス軍とは雖も彼らを侮ってはならない。多分に西アフリカ共同体軍は、彼らに効果的に対抗できないだろう。

最後に、今後もこの手の辺境の資源関連施設に対する襲撃は、繰り返される可能性が高いので要注意。しかしイスラム武装勢力も精鋭化しており、彼らに対応する為には、こちらも特殊部隊など精鋭部隊の迅速な部隊投入が必要だ。
日本は? 他人任せ??

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