阿部ブログ

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イギリスが国防力再編を進めている ~ドイツから駐留軍が引き上げ~

2013年06月21日 | 雑感
過去ブログ「イギリス 財政難から核保有を放棄するか」や「イギリスの国防力見直し~ドラスチックな兵力削減と核戦力の抜本的見直し~」でも書いた通り、イギリスは国防費削減を実施中で国防力再編を進めている。

イギリス陸軍は、6月18日付で人員削減の第三段として4,480名を退役させた。陸軍当局によると84%は自発的な退職だとしている。最終的に陸軍の人員は、2018年までに8万2000名程度まで縮小される。
また当初計画より1年前倒しして、2019年までにドイツ駐留軍を完全撤収する。現在のドイツ駐留軍の兵力は1万5500人、この他、軍属・家族が1万8500人がドイツ国内に所在している。修正された計画では、第1機甲師団を中核とする部隊兵力1万1000人を2016年までに帰還させ、最終的に2019年に完全撤収となる。軍人・軍属・家族をあわせて3万4000人が本国に戻ることになる。ドイツ以外では、キプロスのトロードス空軍基地を閉鎖する方針だが、レーダーサイト以外に、政府通信本部(GCHQ)の傍聴サイトがある。これが撤収するかは???

イギリスは、ドイツ駐留軍を撤収させる事により、年間2億4000万ポンドの駐留経費を削減出来る。当然ながらイギリス国内に戻ってくる部隊用の駐屯地整備、住宅建設などが必要で、約18億ポンドを投じて環境整備を行う。部隊配備先はイングランド・コテスモア、スコットランド・キンロスの旧空軍基地などが挙げられている。因みに移転先の地元に政府試算によれば6億5000万ポンド程度、貢献すると言う。

軍事基地は環境破壊の最たるもので、ドイツからの撤収にともなって基地内の環境保全問題が顕現化するだろう。
「ドイツ駐留NATO軍地位補足協定」、正式名称「ドイツ連邦共和国に駐留する外国軍隊に関して北大西洋条約当事国間の軍隊の地位に関する協定を補足する協定」が、1959年8月3日に当時の西ドイツ政府と、NATO加盟国のうちドイツに駐留する米国や、イギリスとの間で締結されているが、1993年3月18日の協定改訂時に、環境保全原則(第54a条)が導入された。環境意識の高いドイツ国民の要請を受け、環境保全についての責務を駐留外国軍隊にも負わせるべきであるという事。

イギリスは、駐留イギリス軍および軍属機関がドイツ内でのあらゆる軍事活動計画の環境との適合性について調査する責任を負うものとされ、人間、動物、植物、土壌、水、空気、気候および景観に与える可能性のある環境上重要な意味を有する影響について、監視・分析・評価を行なう事となっている。とりわけ、基地内での環境汚染、基地内での活動による都市計画・地方計画、記念物および自然保護区への影響を調査するためのドイツ政府機関の立入りが 明示されている。

この環境保全原則により、イギリスは撤収する基地内の有害物除去に対しては適切な措置を講する必要がある。このコストがどの程度になるのか、イギリス政府も試算が出来ていない。侵攻するよりも撤退が難しい典型となりそうだ。

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