阿部ブログ

日々思うこと

NBC(核・バイオ・ケミカル)への準備 ①生物兵器 ~炭疽菌~

2011年12月04日 | 日記
我々は自分の身は自分達で守る、その気構えと準備が必要。

個人的な見解だが、NBC(核兵器・生物兵器、化学兵器)への対応が急務だと考えている。既に関東を含む東日本ではある種、放射能汚染地帯と化しているが、生物兵器とそれに準ずるモノ、化学兵器とそれに準ずるモノへの集団としての物質的な準備が急務。
これから何回かに分けて何らかの対応が必要と思われるテーマを書こうかと考えている。

最初は、911の時にも登場した「炭疽菌」。(炭疽はギリシャ語で石炭という意味らしい)
2001年9月11日の同時多発テロ後に炭疽菌郵送事件が発生した。テロとして炭疽菌を手紙に封入するのは今までにはない方法。後述するように炭疽菌を用いた生物兵器の場合、呼吸器感染による肺炭疽を狙うのだ。

さてこの炭疽菌は北朝鮮や中国を含む、主要な軍事優先の国家においてはポピュラーな生物兵器で、旧ソ連では大規模な事故まで起こしている。
事故が起こったのは、スヴェルドロフスク生物兵器施設。この第19区の炭素乾燥プラントから炭疽菌が1979年に飛散した。当時のソ連政府の公式発表では、96人が発病、66人死亡としているが、西側の情報機関などのによると被害は甚大で、20世紀最悪の肺炭疽飛散事故であることは確実である。この手の事故は、チェルノブイリや原子力発電所と同様避けがたいヒューマンな要素が絡んでいるものの、炭疽菌の飛散事故は文字通り悲惨である。つまり炭疽菌の芽胞は極めて安定で何年にもわたって土壌や水中で感染性を保ち続ける。これが兵器として、また兵器もどきの使われ方を人口が密集する地域で使用されると極めて深刻な状況が現出するだろう。

炭疽菌はグラム陽性有芽胞桿菌で、牛、羊、山羊、馬等の家畜の病気でもあり、たまに野生動物の間でも発生することが知られている。人間の場合んは炭疽菌で汚染された毛、毛皮、革、肉、血液、分泌液から感染し、擦り傷、掻き傷、傷口、それと炭疽菌の芽胞吸入、不完全な肉料理の摂取でも起こる。炭疽菌が兵器としては使用される時は、炭疽芽胞のエアロゾル散布により呼吸器からの体内吸入となる。

有力な生物兵器たる炭疽菌の産生する毒素には3つある。即ち、
(1)浮腫因子(edema factor ; EF)
(2)防御抗原(protectiveantigen; PA)
(3)致死因子(lethal factor; LE)である。
この3つの毒素は細胞の受容体に結合して致死的な作用を人体に及ぼすが、炭疽菌が産生する毒素と細胞受容体との結合を阻害する薬剤の開発は未だになされていないが、生物兵器であるため、対炭疽菌薬剤に関する研究開発の情報は秘匿され、一般に隠されてはいるが対炭疽菌薬剤は既に存在するのかも知れない。

前述の通り炭疽菌は芽胞を形成するので、熱、乾燥、アルコールなど消毒薬に対する抵抗性が強く、しかも培養が容易であることから資金などあまり必要とせずに細菌兵器の保有が可能である。

さて炭疽菌は感染部位によって①皮膚炭疽、②肺炭疽、③腸炭疽に分類される。
①の皮膚炭疽は皮膚への感染であり、一般的な生物兵器の本にも写真で掲載されており、意外と観たことのある人は多いのではないか。
②の肺炭疽は、典型的な呼吸器感染で、一番症状が激烈であり致死率が高い。この為、細菌兵器としての有用性も呼吸器からの感染にあり、炭疽菌のエアゾルの空中散布が選択されるのはこのため。
③の腸炭疽は経口感染で起こる。

①の皮膚炭疽は別名“悪性膿疱”ともいわれ昔の牧畜や家畜に携わる人達の手や前腕にはこの悪性膿疱が見られたと言う。皮膚炭疽は、丘疹と言う症状から始まり、後に水泡となる。この水泡が乾燥して黒色の痂皮となる。皮膚炭疽は、前述の腕などの局所的感染から全身感染で致死的状況に陥る事もあるので注意が必要。皮膚炭疽の死亡率は25%程度。
②の肺炭疽の発現は、意図的にエアゾルなどの散布以外では「まれ」である。たまに毛皮、皮革、羊毛など獣皮毛を取り扱う工場などで従業員に発生する。肺炭疽の死亡率は100%。
③の腸炭疽は経口からの感染である為、これも肺炭疽同様に致死率100%である。

さて、炭疽菌が生物兵器として用いられる「最適なときは何時」だろうか? 戦時であれば使用の判断時期云々は、全く別のベクトルで動くのだろうが、テロでしかも大量死を狙うとしたら、それは風邪やインフルエンザが流行する時期を選択する公算が大である。何故なら肺炭疽の発病初期は風邪様の症状であり、感染症に十分な経験や過去の経験・知見が蓄積・継承がなされない今の「痴呆状態&マニュアル医療」が蔓延る本邦医学界では簡単に見落とされるからだ。

しかし炭疽菌感染者の生存率をおおいに上げる為には、炭疽毒素が標的細胞に到る前に、治療はできるだけ早期に始めなければならないので、早期診断は極めて重要でありブロイラー医療では対応できないのは論議の必要がない。また困った事にグラム陽性桿菌の検出が炭疽菌感染では難しいのだ。通常の喀痰中には検出できないだろうから、確実に検出するため常日頃からギムザ染色、芽胞染色を行う事がポイント。しかし医療従事者のスキルが足りない場合、大抵の場合判定は困難だと思われる。それと感染初期はまだしも、後述する後期のプロセスに至ると正視にた堪えない症状・状態となるので、特に近親者のショックはいかほどか。。。

炭疽菌に感染するとその症状はいかに進行するのだろうか。
旧ソ連のスヴェルドロフスク生物兵器施設・第19区炭素乾燥プラントから炭疽菌が飛散した事故では、1~6日の潜伏期の後に発症。特筆すべきは炭疽菌エアロゾルが放出された後、6週間を経過した後発症した例もあるので、未だに発症のメカニズムには謎が多い。
致死率100%である肺炭疽の場合、発熱、倦怠、疲労感があり、症状は数時間から約2~3日の間、改善の方向に向かうかと思いきや、発汗、喘鳴、チアノーゼを伴う重篤な呼吸困難が突然始まると言う特異な経過を辿る(この可能性が高い)。この後は、呼吸困難が継続し24時間から36時間を経て菌血症、ショック。そして死に至るプロセスが生起する。

炭疽菌に感染しても症状は一般な風邪など見られるように異変を感じさせる点はない。炭疽菌感染では肺炎は起こらないので、喀痰中には菌は通常見つからないし、見逃される。仮に胸部X線を撮っても縦隔の拡大、肺滲出液貯留が後期には50%から60%に見られものの肺浸潤がないので、前述の通りこれが炭疽菌感染によるものとは診断されない。
ただ炭疽菌は血液や血液培養のグラム染色で検出できるのだが、これは症状が進行した後期まで検出できないだろう。

多分半分の患者さんからは出血性髄膜炎が散見されるだろうし、もしかすると炭疽菌が脳脊髄液中で検出できる可能性もあるが、重ねて言うが今のマニュアル医師では無理だ。これは炭疽菌に感染した莢膜をもった増殖中の炭疽菌のみが検出され事が最大の原因であろう。炭疽菌の芽胞は空気に曝される事が無ければ人体では検出され得ない。
米国での非ヒト霊長類による炭疽菌感染実験でも、菌と毒素は暴露後2日の終りから3日の始めには血中に検出されている。しかし血中で検出されると言うことは炭疽菌の毒素産生力が最大化してい時期と一致する。それと悪い事に炭疽菌感染と同時に白血球数は劇的に増加し、死に到るまで高いレベルが続くが、個人的には細胞レベルでの自然自死に近いと思う。
申し訳無し。

肺炭疽や腸炭疽は症状が重くなってから治療を開始しても治癒の見込みは無いので、可能な限り患者が感ずるであろう苦痛を和らげ安息なる最期を迎える事が出来るような環境を作為することが医療従事者のミッションとなる。
幸いな事に炭疽菌はヒトからヒトへの感染は起こらないので、特別な医療施設や隔離病棟は必要ない。但し炭疽のヒトからヒトへの直接の感染の確実な証拠があるわけではなく、完全に安全とは言えないが、エボラウィルスのような完全隔離は不要だろう。

炭疽菌感染において米軍は、シプロフロキサシン400mgを12時間毎に静脈注射。若しかドキシサイクリン200mgを静脈注射した後100mgを12時間間隔での静脈注射を推奨するがペニシリンの静脈注射を4時間間隔でも良いとしている。
だだ、一般な初期治療としてはシプロフロキサシンを注射し、症状がもし改善すればシプロフロキサシンの経口投与に切り替える。
たまにペニシリンに対するアレルギーの場合には、テトラサイクリンやエリスロマイシンでほ治療を検討する。但し軍事用途に強化さた炭疽菌株では、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、シプロフロキサシンにの耐性を示すだろう事は十分に予想され、多分にあらゆる医療行為は無為に終始するだろう。

米軍の炭疽菌ワクチンは炭疽菌の培養上清を滅菌したものを利用している。つまり生菌は含まれない。このワクチンを0.5ml皮下に接種し、2週間間隔で2ヶ月、その後は半年毎に接種する。但、炭疽菌ワクチンは皮膚炭疽には有効であるが、肺炭疽では十分なデーターがなくワクチンの効用は不明。
ちなみに日本において家畜用のワクチンが生産されているが、ヒト用のワクチンは生産されていない。

炭疽菌のワクチンについては、イギリスでも開発が行われていた。
応用微生物学センター(CAMR)で開発されたワクチンは、1979年に認可され軍人をはじめウィルス研究者、外科医、獣医、公設の作業員などへ炭疽免疫目的で接種与されている。

上記、様々書いてきたが、日本でもイギリスのように感染する可能性の高い関係者へのワクチン接種が必要であり、ワクチンの生産バッチが国内にも必要であろう事は、テロや生物兵器を有する国家が近隣に存在すると言う環境からも必要であろう。

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