阿部ブログ

日々思うこと

「海洋立国シンポジウム2013」でノーチラス・ミネラル社(Nautilus Minerals Inc)が講演

2013年12月16日 | 雑感

今日、新丸ビル9階で一般財団法人キャノングローバル戦略研究所(CIGS)主催の『海洋立国シンポジウム2013』が開催された。先週は、同じ会場で地球温暖化シンポジウムが開催され、中国から能源研究所(エネルギー研究所)の元所長であられる周大地先生が講演されていた。なんとまあ幅広い活動だと感心しきりだ。

さて、海洋シンポジウムのメインは、ノーチラス・ミネラル社の講演で、調査・開発戦略担当副社長のジョナサン・ロウ氏が軽妙な語り口で1時間に渡り動画などを交え話をした。ロウ氏の話を聞いて印象に残った点は、盛んにポリシーを連発していたこと。パプアニューギニア政府との関係がうまく行かない事が余程骨身に滲みているのだろう。早々にパプアニューギニア政府とのトラブルが解決しプロジェクトが本格始動する事に期待したい。

それとイスラエルが地中海沖で天然ガス田の開発を行って成功しているが、海洋資源開発は、内海の方が圧倒的に開発し易く、資源ポテンシャルも高いと思っている。日本の場合、海底エネルギー開発は日本海に重点を移すべき。海底鉱物資源開発は太平洋で問題なしと考える。日本海においてはロシア、北朝鮮関係も勘案すると環日本海諸国共同での開発可能性もありうる。日本の開発優位性を担保する為にも、韓国が占領している竹島を軍事的に奪還する事は必要になるだろう。例えば、北朝鮮軍が38度線を越えて攻撃した場合の緊急事態を適切に捉えて、韓国守備隊を殲滅/無力化する事など。中国も見過ごせない。北朝鮮の羅津港と清津港に中国企業が進出しているし、北朝鮮の情勢によっては中国海軍艦艇が常駐する状況も想定する必要がある。その意味からも竹島は奪還せねばならない。

※過去ブログ:
イスラエル=レバノン沖の天然ガス資源
イスラエルの排他的経済水域防衛力の強化に見る、日本海の海底資源開発における長期的取り組み
石油無機起源説と日本海海底油田開発

余談が長くなってしまった~ジョナサン・ロウ氏の話はの概要は以下。但し内容は正確では無い。英語でベラベラ喋られてもついて行けない・・・

・地上における金属資源採掘は、著しく効率が落ちており、総採掘量の95%は捨てている状況にある。それに比べ海底資源は、例えば銅の場合含有量が12%と陸上鉱山とは比較にならないほど高品位である。陸上の銅鉱山の品位は0.5%を下回るとの数字もある。つまり今後は、海底資源分野が有望であると言いたい。

・当社の資本構成は、イエメンのMB社28%、ロシアのMETALLOINVEST社20.75%、アングロアメリカ5.95%の比率。イエメンのMBは陸上鉱山開発や海底資源開発の経験があるオーナーが投資をしており優良。ロシアの会社は純粋に財務的視点からの投資。アングロは保険を掛ける意味で余裕の投資?

・今でも金属資源開発は重要であり、最近の金属需要を増やしているのは、先進国の再生可能エネルギーブームかも知れない。先程風力発電について言及があったが、風力発電は銅の塊と言って良い。1基当たり約1トンの銅が使用されている。ニッケルにしても500kgである。電気自動車にしてもリチウムイオン電池や電装部品には大量の銅が使用されており、この需要は今後も増え続ける事はあっても減る事はない。しかし前述の通り陸上鉱山の品位低下と大深度掘削によりコスト高と低効率に直面している。
(※銅は今やレアメタルだとの意見も多い)

・海底熱水鉱床の場合、銅や亜鉛、金、鉛など金属成分が高濃度で噴出しており、日本が欲しているレアアースも豊富だ。またニッケル、モリブデンなどの塊であるマンガン団塊も太平洋・大西洋広く分布しており、有望な資源。
(※マンガン団塊の多くは公海に存在する。公海における開発は国際海底機構の定めるマイニング・コードや国際的レギュレーションが適用されるため事は簡単ではない。しかし、大陸棚であれば沿岸国の法律に従えば良く企業からみると対応し易い)

・当社の第一のプロジェクト「SOLWARA」はビスマルク海にあり、熱水鉱床やコバルト団塊などが確認されている。
確認されている鉱物資源量は87万トン。推定の鉱物資源量は130万トン。品位は、①銅6.8%、②亜鉛0.4%、③金4.8g/ton、④銀23g/ton。
SOLWARAの熱水鉱床から得られる鉱物の品位は非常に高い。陸上の銅鉱山の品位は平均0.5%程度。この海域は、ニューブリテン島が波を押さえる働きをするお蔭で極めて穏やか海で、モンスーンも来ない事から安全に操業する事が出来る。これは世界的にも極めて珍しい地域。次のプロジェクト対象域であるトンガの場合には、ビスマルク海とは違い、波やモンスーンの影響を考慮しなくてはならず、パイプの強化や操業方法に工夫が必要。しかし、トンガの資源埋蔵量は、SLOWARAを越えると推定している。

・SLOWARAのプロジェクトは、パプアニューギニア政府(以下、PNG)との資金面でのトラブルでストップしている。CEOが現地に張り付いて、政府との問題解決に努力している状況。PNGは、仲裁を手続きを行ったが、仲裁官は当社に有利な裁定を行い、1億8000万ドルの支払いをPNGに命じているが、当然支払う気は毛頭なく、SLOWARAプロジェクトは停止。やはり政策は重要だ。政府が関与して利益を得ようと考えると、資源開発は頓挫する良い事例だろう。政府は関与を最低にして企業が活動しやすい環境を作る事に専念するべき。これは私見。

・当社はPNGとは揉めているものの、有望なのはトンガである。トンガには自分も調査したが、19の有望な地点があり、早く採掘に取り掛かりたい。このトンガなどのプロジェクトで日本企業と連携出来ればいい。先程も三井住友などと昼食を共にしたが、前向きな意見があり、是非とも一緒にやりたい。

・海底資源採掘の機械も揃っている。実は資源業界では海底からの資源採掘は珍しいものではなく、南アフリカではダイヤモンドの原石を海底から採掘しているし、セメントの原材料も地上の資源が枯渇しつつあることから、海底から採取している。この為の機械も開発されており、当社はそれを利用するだけ。

・海底資源探査や掘削用のRiser PipeやRiser Pumpなどはヒューストンなどで購入も可能な汎用品であるが、当社はGEと海底掘削用に強化したものを開発している。また当社はトレンチングなどの技術提供も可能である。

・明日(12/17)の投資家向け説明会では実際の海底掘削機械の工場の内部を撮影した動画を見せる予定。あらゆる海底面での掘削が可能なマシンが既に用意されている事が分かるだろう。Riser and Lifting Systemについは、既に100万回のテストが終了しており、極めて信頼性の高い技術に仕上がっている。

・当社ではProduction Supoort Vessel(PSV)と呼ばれる洋上掘削船の調達する。現在中国で建造中で、海底掘削と資源採取に必要な全ての装備を巨大な船に搭載するもの。この投資は巨額と考える向きもあるが、海洋資源開発のコストは、陸上資源開発の1/2~1/3である事を考えると短期で回収可能である。鉱山と違ってこれは船なので次のサイトに移動して採掘出来るメリットもある。運用コストを考えても陸上鉱山開発より投資面からしても優位にあると言える。

・PNGとの交渉は粘り強く続けて行くが、当社は現地の人々の採用を積極的におこなっているし、資源探査以前の環境影響度調査も慎重に、かつ確りと実施している。

・当社は、ベンチャー企業である故、他社とのコラボレーションが欠かせない。Ocean Floor Geophysics社とは海底地図の面で協力関係にある。同社は電磁海底マッピング技術を有しており、超精密な3D海底地図を提供している。Automous Underwater Vehicles社は、日本もこれから多用するだろう無人潜水艦を開発している。Seafloor Drilling Technology社は海底掘削分野で特に優れた技術と製品は持っている。

・熱水鉱床の開発においては、2つの問題がある。一つはテストにコストがかかる点。もう一つは地球物理的にはOKなんだが、実際の採掘となるとリモートで行う事から上手くいかない事が多々ある点。これは何とかクリアしなくてもリスクや困難性を低減させる事が出来なくてはならない。

・日本とは2018年まではモラトリアム状態だが、当社は決して競争相手ではない。共に協調して行けると考えているし、是非日本から資金を調達してプロジェクトを成功させたいと切に願っている。

■質疑応答:
◎Q:日本の海洋技術力をどう見ているのか?(大島造船所)

○A:70年代80年代の日本の研究に当社は乗っかっているだけで、その点で運が良いと言える。海洋調査と海底探査のフロンティアは日本の偉大なる功績であり、感謝している。資源以外の分野での知見なくお答えできる事が少ないが、日本側の動きに関しては噂の域を超える情報が公開されていないから、自分が知っている事は少ない。
BHPに在籍していた時には、日本の住友と連携していた。資金や技術などの提供など多面的な協力関係にあり、得難いパートナーだった。
最近は、日本企業、特に自動車会社の進出目覚ましく、GMはオーストラリアでは工場閉鎖する騒ぎ。自分の子供もスポッタ・ホールデンと言うGMの車を探すゲームをしているが、現実に道路を走っているのは車の2台に1台は日本車と言う状況。GMはゲームの世界で走っている。すっかりオーストラリアでもGMの車は見かけなくなった。それだけ日本企業の技術力は凄い。当社も是非日本企業と一緒にやりたい。それと我々は1隻の船を買う。しかし価格の問題があって日本は入札に参加しない。ノルウェーは参加するが。船は別にしても、日本のEEZ領域は非常に良い。ビスマルク海と違って天候の問題があるが、克服できると考えている。
日本と違い、パプアニューギニアは政治リスクが大きい。ソブリンリスクも懸念事項で夜寝れない原因となっている。日本国内に全てが揃っておりEEZ内に世界有数の資源が存在するので極めて有利である。ドイツは技術力とリソース力はあるが政府が動いていないので微妙。

◎Q:ニュージーランドでは何が問題で撤退したのか? 環境対策? 水の問題?

○A:ニュージーランドの場合、政府が法律を微に入り細に入り細かく規定した為、開発が全く進まない状況に陥ったと言う事。それに環境保護団体の力が強すぎた。水は、スラリーと一緒に水を洋上に上げる。こうして揚水した水は濾過して600m位に戻す事を検討した。しかし海水との密度が違うのでダメで、同僚のサバンナ・スミスの意見で海底50mに戻すのが最適と分かった。この水深では揚水と海水の元素組成が同じになるので、環境に影響がない。関係者の意見をよく聞く事がプロジェクトの成功に繋がるとの教訓を得た。

◎Q:私は、1970年代にシアトルの海洋管理所に勤務していた者。質問は2点。ブレーク・イーブン・ポイントは何処にあると考えているか?
それとあなたは探査の専門家で、プロセッシングは素人だと思うが、御社のビジネスモデルの全体は誰が把握しているのか?

○A:設備コストは地上鉱山開発の1/2から1/3以下で2年で回収されるので、当社のビジネスに問題なし。洋上掘削船や機材は次のサイトで使えるので更にメリット有。
当社は、ベンチャーで小さい会社で、先程のように全員で知恵を出して問題解決にあたっている。

◎Q:海底資源は、資料によると1年から1年半でマイニングアウトするとあるがどうか?
御社の探査機材はマンガン団塊の開発にもつかえるのか?

○A:海底資源は、約2年で採掘終了。最長でも3年で枯渇する。当社の計画では年間300万から600万を掘る計画なので、SLOWARAが一段落したらトンガで掘る事になる。しかしトンガはSLOWARAより深いのとモンスーンの襲来を勘案してパイプの強化など対策が必要である。
当社の掘削機械は、マンガン団塊採取には直接には使えないだろう。熱水鉱床は50cm単位で採掘するが、クラリオンクリッパーゾーンの広さは北京からパースに相当する広がりで散らばっており、この採掘は深度の問題もあるが熱水鉱床とは異なる難しさがある。
両方に共通する点として、採掘・採取したものを海上に引き上げるのにエネルギーが必要でこれを効率的に行う方法はないか探している。

■ノーチラス社の動画は見てて面白いと思うので是非ご覧ください。
(1)煙突サンプリング
(2)ROVドリル
(3)海底生産ビデオアニメーション

因みにYouTubeにも動画がUPされている。→ Nautilus Animated Industrial.mp4