阿部ブログ

日々思うこと

イスラエルの核武装した潜水艦艦隊とエジプトのドイツ潜水艦購入

2012年09月19日 | 日記
沿岸警備隊から抑止戦略にシフトしつつあるイスラエル海軍は、ドイツからドルフィン級潜水艦を6隻購入する。既に3隻がイスラエルに引き渡しされ実戦配備に就いている。現状では4隻目は既に完成。2013年前半にイスラエルに到着する。この後、ドイツの造船所で建造中の5隻目は、2014年、6隻目も2017年にはイスラエル海軍に引き渡される。

財政規模が小さく、高価な最新鋭の潜水艦の購入のハードルは高いが、最初の2隻はドイツ連邦政府からの無償供与。3隻目はドイツ政府が半額を負担し、残りの3隻は費用の3分の1をドイツ連邦政府が負担する事となっており、未だホロコーストに起因する賠償対応措置が取られている。

最終的に、イスラエル海軍は最新鋭の潜水艦隊10隻体制を目指していると言われるが、静粛性に優れるドイツ製潜水艦に対抗するアラブ諸国海軍は、対潜水艦能力がそもそも無い為、このイスラエル潜水艦隊に太刀打ちが出来ない。
これら核武装したイスラエル潜水艦隊が地中海や紅海、及びペルシャ湾、インド洋などに展開するようになると本格的な核抑止能力を保有する事となり、イスラエルの安全保障に大きく貢献する枢要な戦力となる。

イスラエルの潜水艦隊に比較するとイランの潜水艦は老朽化しており、とても相手にはならないだろうが、近隣のアラブ諸国も対抗措置を講じつつある。
お隣のエジプトは、同じドイツから潜水艦製造ドックとドイツ製潜水艦2隻の完成売却について契約したと言われ、ことに対してイスラエル政府は強烈にドイツ政府に抗議している。

イスラエルの安全保障に関する事なので当然の事ながら批判し、契約解除を要求するだろうが、背景にはドイツと現イスラエル政府の関係が芳しくない事がありそうだ。
関係悪化のトリガーは、トルコのガザ向け非武装船舶をイスラエル海軍特殊部隊が攻撃・拘束したことによると言われるが本質では無い。ドイツは、様々な兵器をイスラエルだけに売却しているのではない。ビジネスだから当然の事ながらエジプトを始めとするアラブ諸国、サウジアラビア、カタール、アルジェリア輸出している。イスラエル駐独大使は、非公式ではあるが、強烈に批判的な発言を繰り返している。

ドイツは、アラブ諸国への武器輸出については、イスラエル軍の優位性を損なわないレベルの兵器提供にとどめているとの大人のコメント。エジプトへの潜水艦売却契約に関しても、ドイツ政府としては最終的な契約に調印した訳ではないと説明している。

最新鋭のドイツ潜水艦隊による核攻撃を抑止力する能力をイスラエルに付与するが、イスラエルの最大の脅威は、やはりアラブのミサイル/ロケット戦力の圧倒的な数の強化による潜在的脅威の増大だ。

イランの中距離戦術ミサイルについては、弾道弾迎撃ミサイル「アロー」で迎撃可能としているが、近隣諸国が配備する短距離ミサイルや10万発以上と推定されるロケット弾については、効果的な迎撃措置が難しい状況にある。特にレバノンのヒズボラは、6万発のミサイルとロケット弾を保有しているとしており、4000発がテルアビブなどイスラエルの人口密集地帯に到達可能であるとも。ガザ地区にも1万発を超えるミサイルが秘匿されており、これもテルアビブ郊外への到達する能力がある。

イスラエル国防軍は、イスラエル囲むアラブ諸国からの、協調連携して同時多発的にミサイル&ロケット攻撃をかける可能性に対する懸念を重大な脅威と受け止めている。アラブ諸国の18万発を超えると言われるミサイル&ロケット攻撃には、流石にイスラエルの潜水艦隊の抑止力も限定的だろう。