フクロウは夕暮れに

接触場面研究の個人備忘録です

大学院授業ーコードスイッチングの論文を読む

2010-06-02 21:43:19 | today's seminar
梅雨前のすがすがしい天気。

今週の大学院はコードスイッチングについての日本語の論文を読む。最後のものは来週に回したので実際は2本のみだったが、少しだけ覚え書き。

朴良順(2006)「日本語・韓国語間のバイリンガルとコードスイッチング」(真田信二監修任栄哲編『韓国人による日本社会言語学研究』おうふう)
服部圭子(2001)「接触場面における日本語非母語話者のコードスイッチングー機能を中心にー」(大阪大学留学生センター研究論集第5号)
高民定・村岡英裕 (2009) 「日本に住む中国朝鮮族の多言語使用の管理―コードスイッチングにおける留意された逸脱の分析―」(『言語政策』5号 日本言語政策学会)

日本社会を舞台にしたコードスイッチングの研究となるとやはり在日韓国・朝鮮人の研究が中心になる。朴(2006)は先行研究をさぐりながら、植民地時代、在日1世以降の在日コリアン、韓国人留学生、そしてニューカマーの韓国人の子供たちという時代背景も言語環境も異なる4つのグループに分けてそれぞれのバイリンガルの状況を跡付け、さらに研究の中から言語データをとり出してコードスイッチングの特徴を概観している。在日コリアンに見られる同胞コミュニティと日本社会からの分離傾向とが、かれらのバイリンガルの特徴を作り出しているところなどわかりやすい。前回のハワイ・クリオールにおける移民の言語環境とも通底している。バイリンガルの記述はおそらく言語バイオグラフィーでも可能だろう。

服部(2001)は、ニューカマーあるいは留学生を対象にして、従来から日本語学習者のコミュニケーション・ストラテジーの一部として扱われてきたコードスイッチングをもっと広いコミュニケーションの枠組みで眺め、そこにどのような機能が見られるかをさぐったもの。その手法自体は10年前によく行われた機能分類という方法だけれども、その分類自体は参考になる。いわく補償的機能(いわゆるコミュニケーション・ストラテジー)、伝達機能(自己伝達と相互作用)、談話調整機能(談話構成上の文脈化の合図)というもの。これを見ると、現在、ほそぼそとやっている教室のfootingの分類とも共通する部分があることがわかる。たしかにfootingは機能的にはコードスイッチングと重なってくる。ただ、リソースが言語コードだけではないということなのだ。


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