礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

カワウソは、かつて「駆除」の対象だった

2012-08-29 04:51:30 | 日記

◎カワウソは、かつて「駆除」の対象だった

 昨二八日のテレビニュースで、環境省が、それまで「絶滅危惧種」に指定されていた日本カワウソを、「絶滅種」としたことが報じられていた。
 それにしてもなぜ、日本カワウソは絶滅してしまったのか。これを考えるときに参考になると思うので、『社会新辞典』(一九〇六、郁文館)の「かはをそ」の項を引用してみたい。同辞典は、明治後期(明治三六年)に出た一冊物の百科辞典である。

かわをそ 水獺 水獺〈カワオソ〉は体細長くして、イタチに似、頭部やや扁平にして、眼大きく、耳短く、四肢短く、五趾にして蹼〈ミズカキ〉あり、蹠〈アシウラ〉は裸出す。皮膚には、短毛密生す。体色は背部〈ハイブ〉暗褐色にして、腹部淡鼠色なり。頬〈ホホ〉及上唇に白き斑紋あり。身長は尾を除き、二尺〔六〇センチ強〕内外にして、尾は尺余あり。河川湖沼または海辺に棲息し、よく水中を潜行し、魚類を捕ふ。食餌〈ショクジ〉を獲たる時は、必ず岸に持ち来り、掌〈タナゴコロ〉にて圧へ〈オサエ〉、頭部より食ふ。樹根もしくは洞穴に巣を営み、数頭の児を産す。その肉は、美味にて、毛皮は襟袖口〈エリ・ソデグチ〉等に用ひられ、価〈アタイ〉高し。養魚の盛んなる地方にては、水獺を駆除し、もしくはその襲来を予防する方法を講ぜざるべからず。

 非常に観察が細かい。この当時においては、ありふれた野外動物のひとつだったのであろう。
 この記述で重要なのは、カワオソ(カワウソ)が、「駆除」の対象となっているということである。人間に害を与える害獣であるが、肉は美味で、毛皮は高く売れる。ということであれば、人々は争って、このカワウソを殺したことであろう。
 カワウソが絶滅した理由としては、ほかにも自然環境の変化などが指摘される。もちろん、そうした要因も否定できないが、基本的には、明治以降の乱獲によって、個体数が激減し、これによって絶滅に追い込まれたということであろう。あえて言えば、カワウソは、明治以降の日本人の「意思」によって絶滅させられたのである。
 なお、インターネット情報によれば、一九二八年(昭和三)に、カワウソの捕獲が禁止されたというが未確認。この禁令は、徹底しなかったか、もしくはすでに「手遅れ」だったのではないだろうか。

今日の名言 2012・8・29

◎昭和まで生息していた哺乳類が絶滅種に指定されたのは初めてです

 日本カワウソの「絶滅種」指定を伝えた昨28日のNHKテレビのニュースより。上記コラム参照。

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