礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

『防空壕構築指導要領』について・その二

2012-08-02 06:02:39 | 日記

◎『防空壕構築指導要領』について・その二

 前回の続きである。『防空壕構築指導要領』(一九四〇年制定)から、「第一 総則」、「第三 形式及規模」の部分を引用してみよう。原文はカタカナ文だが、ひらがな文に直した。

      第一 総  則
一、防空壕は投下弾の破裂に基く弾片、破片、爆風等に因る〈ヨル〉危害更に〈サラニ〉出来得れば〈デキウレバ〉毒瓦斯〈ドクガス〉に因る危害を防止することに留意して構築すること
二、防空壕は応急的退避施設なるも防護活動に便なる如く其の位置、規模、構造等を決定すること
三、防空壕は成るべく各戸に其の敷地内に設くるを原則とすること、但し敷地の状況に依りては近隣共同して設くるも妨げなきこと
 敷地内空地に防空壕を構築し得ざる〈エザル〉ときは管理者の承認を受け公共用地其の他に之〈コレ〉を設くるを得る〈ウル〉こと
四、防空壕は成るべく小規模のものを分散して設くること、大規模のものに在りても二十人程度を限度とすること
五、本書に於て小型防空壕と称するは一般家庭の用に供すべき収容人員五人程度のものを、大型防空壕と称するは作業場集合住宅等の用に供すべき収容人員二十人程度のものを謂ふ〈イウ〉。
      第二 位  置【略】
      第三 形式及規模
一、防空壕は成るべく掩蔽型〈エンペイガタ〉と為し、已む〈ヤム〉を得ざる場合には開放型と為すを妨げざること
二、防空壕は地下式を原則とすること、湧水〈ユウスイ〉其の他特別の事情ある場合に於ても成るべく半地下式と為し已むを得ざる場合に限り地上式と為すこと
三、大型防空壕は成るべく両側席と為すこと
四、収容室の内法〈ウチノリ〉寸法は左の標準に依ること【標準略】
五、腰掛は奥行〈オクユキ〉三〇糎〈センチ〉(約一尺)高〈タカサ〉三六糎(約一尺二寸)を標準と為すこと
六、出入口の幅は六〇糎(約二尺)を標準と為すこと
七、防空壕の敷地面積は概ね〈オオムネ〉一人当〈アタリ〉一・五平方米〈メートル〉を標準とし、決定すること
 例【略】


 本当は、図や表も示すとよいのだが、割愛した。関心を持たれた方は、影印でご確認いただきたい(日本空襲デジタルアーカイブ)。
 さて、この『防空壕構築指導要領』による限り、防空壕というのは、主に一般家庭を想定した小規模の「応急的」退避施設であり、「大型防空壕」でも収容人員二〇名を限度としていた。これでは、ビル・学校・工場などにいる数百人・数千人規模の人を退避させることなどできるはずがない。
 戦前の日本は、「恒久的」にして大規模な退避施設を構築するという発想なしに、日米戦に突入した。その結果、膨大な数の「空襲犠牲者」、「原爆犠牲者」を出すことになったと言えるのではないか。

本日の名言 2012・8・2

◎格差の放置は経済を弱くする

 ノーベル賞経済学者・ジョセフ・スティグリッチ教授の言葉。今のアメリカ経済についてのコメント。本日の日本経済新聞のインタビュー記事より。聞き手は、同紙米州総局編集委員の藤田和明氏。

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