ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

「レインツリーの国」(有川浩)を読む

2019-08-03 22:53:29 | 読む


有川浩の小説は、私にとって、どれも期待を裏切らない作品が多い。
結構ある程度の長さをもった小説が多いものだから、この文庫本を買ったのは、薄いので一気に読めそうな本だと思ったからだった。
そのとおり、一気に読み進んでいってしまった。
そうなったのは本の薄さもあるが、内容が読ませるものであったというのが、やはり最大の理由であった。

健常者と聴覚に障がいをもつ2人の出会いから恋愛の進行・深まりを描いているのだが、簡単に同情や思いやりで話が深まるのではない。
当然だが、障がい者が直面する様々な困難が描かれる。
また、健常者と障がい者ゆえのすれ違いも描かれる。
すれ違いを生むのは、健常者の障がいに対する理解不足、というだけではない。
健常者であっても、自分のことを分かってもらえないことは、つらい。
自分のことを分かってもらえない苦しみは、障がいの有無には関係ない。

相手のことをどう理解するか。
自分のつらさをどう伝えるか。
自分のことを分かってもらえない人ばかりのなかで生きていくことは苦しい。

話の中では、メールでのやりとり、チャットでの話し合いなど、私が若い頃にはなかった気持ちの伝え方も登場した。
大切なのは、伝え方の形態ではない。
相手にわかるようにどう言葉をつむぐかだ。

障がいのことについても、改めて学ぶことができた。
何よりも、最も大事なのは、人が人を理解しようとする心だ。
読み終えて、そう思った。

200ページ余りしかない本であったが、期待を裏切らない、さすが有川浩の1冊だった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする