ON  MY  WAY

60代になっても、迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされながら、生きている日々を綴ります。

「日本奥地紀行」(イザベラ・バード著;平凡社)を読む

2019-08-08 21:55:22 | 読む

明治になって10年余りしかたっていない時代に、たった一人で(といっても、日本人通訳等は同行したようだが)、新潟県や日本海側の東北地方、北海道などを旅して歩いたイギリス人女性がいたとは。

そんな人がいたと聞いたのは、10年余り前に県境の町に勤務していたときのことだ。
「ここは、イザベラ・バードが旅で通ったところなのだ。」
と聞いた。
イザベラ・バード?
…率直にその場で「知らない」とは言えなかった。

その後、イギリス人の女性旅行家であること。
明治以降初めて東北以北の日本を旅行し、その旅行記を残していた人であるということ
などを聞いた。
そのときは「へえ~」と思ったのだが、詳しいことは知らずにそのままになっていたのだった。


今年の春、亡くなった埼玉の義兄の蔵書に「日本奥地紀行」(イザベラ・バード著;平凡社)なるものを見つけた。
これは、明治11年の6月から9月の間に日本の東京から日光・南会津を経て、津川へ。
そこから川を船で新潟へ下り、再び陸路を山形、秋田、青森と行き、北海道へと渡って旅したことが細かく書いてある。

旅は、今の時代と違って道も整備されていない所を、乗り心地の悪い馬に乗ることを中心にして進んでいる。
天候や悪路との闘い、蚊などの虫さされ、さらには好奇心でのぞきに来る日本人の好奇の目などに苦しめられながらも、よくぞたくましく旅したものだと感心した。

通っていく地名には、よく知っているところが出てきた。
築地、中条、黒川などは自分にとってなじみのある所なので、そこも通って行ったのだな、とちょっとした感慨があった。

500ページ以上びっしりと綴られた本だったので、飽きやすい私には読破するには時間がかかってしまった。
まあ、イザベラ・バードがこの奥地を旅した期間までは多くはかからなかったが…。


イザベラ・バードは、本書の中で当時の日本人やアイヌ人について、率直な見方を披露している。
・どこに行っても、人々が親切なこと。
・礼儀正しいこと。
・勤勉で、ひどい罪悪を犯すことが全くないこと。
…など、よいこともたくさん書いてある。

だが、
・彼らの基本道徳の水準は非常に低いものであり、生活は誠実でもなければ清純でもない、と判断せざるをえない。
などと書いてあることもある。

ちなみに、私が勤務した地区の一部については、記述がさんざんであった。

・この地方の村落の汚さは、最低のどん底に到達しているという感じを受ける。
・彼らの家屋は汚かった。
・野蛮人と少しも変わらないように見える。
・彼らの風采や、彼らの生活習慣に慎みの欠けていることは、実にぞっとするほどである。

具体的な姿を詳しく述べながら、客観的なその見方・考え方が書かれた文章は、当時の日本を知るうえで、貴重な資料になると思えた。
また、150年も前の日本のことでありながら、現代の日本人にも共通している部分があるように感じたりもしたのであった。
コメント
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