玉川上水の木漏れ日の下

 ワヤン・トゥンジュク梅田一座のメンバー katakura のブログ  since 2013

「チュパラ」-2

2013-12-16 | ワヤンのお話

右足の指の間に挟んだ「チュパラ」と、左手の「チュパラ」で同時に人形箱を叩きます。
「バシッ!・バシッ!!」と強烈なアタック音がします。
強烈な音の時は、叩くというよりもむしろ人形箱を足で「蹴り込む!」感じかな?
場面が白熱してくると「蹴り込み!」も強烈になってきます、
木箱の横に座っているクテンコン(ダラン補佐)は、箱が動かない様に懸命に押さえます。

(前回のつづき)
ここからは妄想です、実話ではありません・・たぶん?(実話にならない事を祈ります。)
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 ワヤン公演の帰り道、「チュパラ」を入れた巾着袋を首からぶら下げ、大きなカバンをガラガラ引きずり、帰宅のため自宅近くの繁華街をトボトボ歩いている疲れきったダラン。警ら中のおまわりさんに呼び止められます。深夜の繁華街でよくある職務質問です。きちんと敬礼をしてから丁寧に話しかけるおまわりさん。
警「お急ぎの所申し訳ありませんが、すこし質問させていただいてよろしいでしょうか?」
ダ「・・?・・まあ少しなら」
警「その首から下げておられる袋の中には何が入っているのでしょうか?ちょっと拝見させていただいてよろしいでしょうか?」
ダ「・・?・・まあいいですよ」
 ダランはめんどくさそうにチュパラを首の袋から取り出して見せる。
警「いったいこれは何でしょうか?」
 不思議そうにチュパラを見つめるおまわりさん。
ダ「チュパラです」
警「・・チュ、チュパラ??・・なににお使いになりますか?」
ダ「足の指の間に挟んで箱を叩きます。」
警「そうですか・・えッ?・・ええッ!?何ですか?・・足の指の間に挟む?・・箱を叩く?」
 おまわりさんの顔には明らかに動揺の表情が浮かんでいます。
ダ「そうです足の指です。だって両手はパンダワのアルジュナとインドラ神でふさがっているので足の指しか使えないじゃないですか、あたりまえですよそんなこと~。」
警「えッ?!いったい何のことですか?・・パンダとアルジェリアとインドがどうかしましたか?」
ダ「だから~両手ではね、パンダワ一族とコラワ一族が戦っているのわけですよ~、足で箱を蹴るしかないでしょ。」
警「えッ~?パンダと・・コワラもですか?イチゾク?・・足で箱を蹴る?」
 おまわりさんはついに何かを決意したようです。同行のもう一人のおまわりさんに目で合図を送ります。そしてダランに向かってやさしく言います。
警「あの~、さきほどからお伺いしていると、とても面白いお話なので、署のほうでもう少し詳しくお話をお聞きしたいのですが、ご同行願えるでしょうか?」
 少し離れたところで同行の別のおまわりさんが、制服の肩につけた無線機に向かってなにか淡々と話しています。
警2「ハイ、ハイ、そうです、ハイ、先ほどから意味不明の発言を繰り返している50歳代の男性を保護しました。本官もはじめて見る奇妙な形の物を所持しておりまして、ハイ、そうなんです、アルジェリアとインドとパンダとコワラがどうしたとか?足で箱を蹴るしかない、とか言っておりまして・・至急パトカーを回してください。現場は田町の交差点から南に100メートルほど入った・・」
 深夜の浜松の街、遠くサイレンの音が聞こえて来ます。(か)

  こう離して。

  こう叩く。「トン!」

上演ではほとんどの間「両手」は人形でふさがっています。
たいていはこのように「足」を使って、効果音をだし続けます。
上演は二時間を超える事もあります。
ごくろうさんです。
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