練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

『20世紀音楽 クラシックの運命』 宮下誠

2009-04-29 | 読書
筆者はまず大前提として、「20世紀音楽はおもしろい」としている。
「20世紀音楽」の定義をどこにおくか、というのも様々な解釈があると思うが、筆者は「20世紀音楽」≠「現代音楽」との立場で本書を記している。
本書で紹介されている20世紀音楽はおそらく次の3つのポイントによって分類されると思われる。
1. 純粋に1901年以降に作曲された音楽
2. 十二平均律に基づいた機能和声の法則を用いていない音楽。つまり無調、純粋な音の羅列による音楽。
3. 20世紀という時代背景を反映した思想が理解できる音楽。

特に筆者による20世紀音楽の分析が面白いと思ったのは、筆者自身の本来の専門が20世紀の絵画である、という点から、20世紀の音楽と20世紀の絵画、カンディンスキー、クレー、モンドリアンなどと対比して考えると非常に分かりやすいということだ。
何が描かれているのかは一見分かりにくいが、実はとても綿密、緻密にある規則にのっとって描かれた20世紀絵画、そしてそれは2つの大戦その他の戦争によって崩壊してしまった世界を、そこから平和を取り戻そうとする人間の営みを描いている。
音楽と絵画、表現方法は異なるが、20世紀音楽もまた、同じ思想のもとに創造されてきた芸術だ、というのが筆者の考えである。

そう考えると、やはり「わかりにくい」と思われがちな20世紀音楽もなかなか「おもしろい」と感じることができそうだ。

それにしても筆者の紹介してくれている膨大な20世紀音楽のリストは想像以上である。おそらく取り上げられている全ての音源を聞いた後で本書を読むとさらにおもしろいのであろうが、いかんせん私はその半分も聞いたことがないのが残念だ。
本書を保存版にして、1枚ずつCDを入手しつつ筆者の分析を読み解いていくのが楽しみだ。