練習オタクの日々

3日ぼうずにはしたくありません!この日記とピアノのお稽古。練習記録とその他読書などの記録をつけておきます。

『告白』 町田康

2006-07-18 | 読書
なんというか・・・えらくけったいな小説を読んでしまった。
今までこんなの読んだ事ないし、今から感想みたいなものを書こうにもうまく書けるかどうか自信がない・・・。
で、面白かったのか面白くなかったのか、と聞かれたら、これは間違いなく面白い!!!

話自体は要するに「河内の十人斬り」とか言われて英雄視され、河内音頭の題目にもなっている熊太郎と弥五郎のお話なわけである。
熊五郎は小さい時からちょっとかわった子どもで、子どもらしい屈託のなさとかが全くなくて、いやに内省的で、頭の中で考えていることが素直に口から言えたためしがない。いっつも頭の中でぐじぐじ、ぐじぐじ考えていて、考えすぎてうまく発言も行動もできなくて変わり者扱いされている。でも人一倍プライドも高いので虚勢をはって紛い物の技で相撲をとって相手を倒し番長ズラをしている。
成長してからも素直な好青年に育つわけがなく、変わり者としてみんなから疎んじられ、博打などに手を出してどうしようもない大人になってゆく。
ある日熊太郎はヘンな兄弟にからまれ、なりゆきでその兄貴の方を殴り殺してしまい、現場からはほうほうのていで逃げ出すが、このことがふか~~~い心の闇となって、「どうせ人ひとり殺してしまったんだからろくな人生を遅れるはずがない」とますます因業な人生を送るようになってしまう。
惚れた女は他のヤツと結婚してしまう、要領のいい村の権力者にだまされる、やっと自分を分かってくれる女と結ばれたかと思ったら弟分に寝取られる・・・と転落の人生を歩み、ついに恨みつらみを晴らすために皆殺し・・・・・みたいな話。

そのストーリーは壮絶なのだが、それとは全く別のところで話に引き込まれてしまったのは、内省的でず~~~~っと頭のなかでうじうじ考えている熊太郎の脳内演説、それがこのぶあつ~い本の半分以上を占めていて、やけにそれが可笑しいのだ。いや、考えていることはふざけたことではなく(たまにはそんなこともあるけど)いたって悩み多い思考なんだけど、舞台は明治の河内のはずなのにその脳内は現代にトリップしたりしなかったり・・・。
熊太郎の思考なんじゃなくて作家が考えていることだったりしてわけがわからない。でもそのわけのわからなさが妙に可笑しいの。

その可笑しさも吹き飛ばしてしまうような壮絶なラスト。十人も殺して英雄はないでしょう、と思っていたけど、それでも熊太郎の悲壮感にみちた人生を思うとなにかもの悲しい気持ちになってしまうような物語だった。