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『もしトラ』で安保どうなる? 思考停止という日本の病:  核武装を米軍撤退の交換条件にせよ

2024-04-17 09:12:58 | トーク・ネットTalk Net
AERA Dot ▼△『もしトラ』で安保どうなる? 思考停止という日本の病:内田樹
* 先日、左派のビジネスパーソンたちの集まりに呼ばれて講演をすることがあった。「左翼の資本家」というものがいるのである。世間は広い。そこでトランプが2期目の大統領になったら日本の安全保障はどうなるかという話をした。
  可能性は非常に低いが、日米安保条約を米国が廃棄して在日米軍基地がなくなるというシナリオもあり得る。私の貧しい想像力を駆使して想定し得る「最悪のシナリオ」がこれである。
   そうなると、日本の安全保障は以後日本人が自分の頭で考えなければならなくなる。でも、日本の政治家も官僚も戦後80年「日米同盟基軸」という話しかしてこなかったので、日米安保がなくなった場合の安全保障については、
  文字通り「何も考えていない」。だから、米国から「あとはよろしく。自分の国は自分で守ってね」と通告されたら、政治家も官僚も腰を抜かすだろう。そして、仕方なく自衛隊にすがりつく。国防について「実際的に」考えている機関は
  そこしかないからである。

  国防構想を丸投げされた自衛隊はとりあえず、憲法9条2項の廃棄と国家予算の半分ほどを国防費に計上することを要求するだろう。恒常的な定員割れを補うためには徴兵制の復活も当然議論の俎上に上る。主を失った米軍基地はすべて
  自衛隊基地になる。こうして「もう誰も信じない非同盟武装国家」という目つきの悪いハリネズミのような国が出来上がる。どこか既視感を覚える国家像であるが、そういう体制を歓呼の声で迎えそうな国民は今の日本に少なからず存在する。
  それというのも安全保障のシナリオとして「日米同盟基軸」以外に何も考えてこなかった日本人の思考停止のせいである。 ← リスクを考えない 愚かでおめでたい国民!

* 以前、ある政治学者に「日米安保以外に日本にはどんな安全保障戦略があり得るでしょうか?」と訊いたら化け物でも見るような顔をされたことがある。その問いを自分に向けたことが一度もなかったのだろう。
  でも、米国の政治学者に「日米安保以外に西太平洋の安全保障戦略にはどんなものがありますか?」と尋ねたらいくつかのシナリオをすぐ語り出すはずである。日本の病は深い。
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 内田氏のいう最悪シナリオとなった場合の『非同盟武装国家』が自分だけの力で身を守るには、核武装が<最小限のお守り>として必要だ。それを米軍撤退の交換条件として要求せねばならない。
  何故なら【1】米軍の後ろ盾をもたない自衛隊の通常兵器だけでは、ロシア・中国の恫喝を跳ね返せない。【2】被爆体験国家であるとの訴えが中露に核恫喝をためらわせる理由には全くならない。
    拒否されたら? 自力開発しかない。

  このリスク対処ナリオで普段から日本政府は米国政府を牽制しておかねばトランプ当選後の混乱に対処できないし、米国のアジア安保政策を自国本位だけに終わらせてしまう。
 いくらトランプがNATOを冷たくあしらおうが、アメリカは所詮同じ西欧文明圏。欧米人にとりアジア安保の優先順位は低いことを忘れたら、日本は墓穴を掘るだけだ。
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選挙運動中のトランプ氏の公訴をも陪審員裁判で裁くアメリカ

2024-04-17 06:59:19 | 時評
【毎日】◆ トランプ氏公判、陪審員選ぶ42の質問 半数以上が辞退 【ニューヨーク中村聡也】  抜粋
* 「トランプ被告は業務記録を改ざんしたことで起訴された。有罪か無罪かを決める責任があるのは、あなたたちだけだ」――。ニューヨーク市中心部マンハッタン地区の裁判所。訴訟を指揮するマーチャン判事は初日に呼び出された96人の
  陪審員候補に向かってそう強調した。トランプ氏に評決を下すのは住民から選ばれる12人の陪審員だ。その資格があるのはマンハッタン地区在住の18歳以上の米国市民で、無作為に抽出された約500人の中から連日行われる選任手続きで
  絞り込む。検察側と弁護側はそれぞれ質問をしながら、自分たちに不利な判断をしそうな候補を排除していく。

* 陪審員候補への質問は、米国社会の分断ぶりを反映したものになった。「トランプ氏や反トランプ派の集会に参加したことがあるか」「参考にしているメディアは何か」「(極右陰謀論)『Qアノン』を支持するか」。用意された42問は、
  党派性を尋ねるものが目立った。
   マーチャン氏は、陪審員候補への賄賂や脅迫を防ぐため匿名にすると決めた。検察側、弁護側双方にリストは渡したものの、複写や撮影は禁止した。ただ、初日は96人の候補のうち半数以上が「公平に判断できない」などとして辞退。
  選定には数日かかる見込みで、この日は一人も決まらなかった。手続きの難航は必至だ。
   陪審員の評決は全員一致で、有罪になれば判事が量刑を言い渡す。一方、11人が評議で有罪としても、1人が無罪を主張すれば、審理は無効になる。

* 刑事事件の陪審員選任手続きに詳しいニューヨーク・ロースクールのアンナ・コミンスキー教授は「そもそも『中立』の立場の陪審員を探すのはいつも難しい」と指摘。
  「政治や事件自体に全く興味がない人を見つけることが、公正な公判を成立させる上で重要だ」と述べつつ「今回は特に困難な作業になる」と指摘した。
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 ここで根本的な疑問。それは、訴訟になった行為「業務記録の改竄」それ自体は単純な事実認定の当否を判断するだけの筈が、何故、トランプ氏をめぐる党派性・政党支持にまつわる質問が必要なのか?
それと、何故、被告である人物(=トランプ氏)が陪審員選出のプロセスについて異議申し立てを許されるのか?
  https://www.saibanin.courts.go.jp/introduction/how_to_choose/index.html

 日本で「裁判員裁判制度」が始まったのは平成21(2009)年だから、今年で15年になる。上に引いたURLをご覧になればわかるとおり、米国の陪審員制度とは選任方法から大きく違う。
最も大きな違いは全ての公訴案件を「裁判員裁判制度」にかけないし、政治的言動に関わる人物の行為を日本の場合「裁判員裁判制度」の対象とはしないだろう。
そして、裁判官は米国のように市民の評決に拘束されない。これらの差異を考えると、裁判や司法制度における「個と公」「民主」概念に日米で大きな違いのあることが浮かび上がる。

 更に言えば<人を裁くこと>は「真・善・美」「罪と罰」「死刑の受容」など、より根源的な問いと当然ながら結びついており、トランプ氏をめぐる争いを対岸の火事ではなく、日本人が此の事例を機に
「個と公」「民主」概念を考える良い機会となればと願う。
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