静 夜 思

挙頭望西峰 傾杯忘憂酒

不老不死を夢見るあなたへ: 老いなき人生は公私ともに世代交代なき社会をもたらし 倫理壊滅あるのみ?

2024-04-04 15:47:06 | 時評
【毎日】神への挑戦―人知の向かう先は? ずっと生きられれば子孫は「邪魔」になる 元京大総長/霊長類学者・山極寿一さん <抜粋>
 「老い・死」が持つ意味を考えよう。これが山極氏のポイントだ。”不老不死”の実現に向けた遺伝子&細胞操作技術の驚異的発展が倫理的側面を置き去りのまま進むなか、氏の論点を整理しておく。

* 一番重要なことは、利他という倫理観なんですね。親は子どもに、見返りを求めずに投資します。自分が死んでいくからです。自分が果たせなかったこと、自分がしていたことを継いでやっていってくれるだろうという期待を未来に残します。
  寿命がどんどん延びていけば、利他という精神を失い、子どもに見返りを求めない投資ができなくなる。死なないのだから、自分に投資したらいいわけでしょう。生物は子孫をたくさん残すことで、種の中でも種の間でも、ある程度の競争をし、
  その競争によって形質を獲得してきました。それが進化です。ずっと生きられるのなら、子孫を残すということに意味が見つけられず、むしろ子孫が邪魔になってしまう。生物界の論理がひっくり返り、利他という倫理が失われてしまいます。

* 抗老化技術にも、寿命を延ばすことだけに注力するような技術と、今を健康であるがために使える技術があるわけです。僕だって健康のまま死にたいので、そのためにこの技術を使うのは悪いことではないと思います。
  ただ、健康であるということは、若いままであるということとは違います。老化というのは、いままで過剰に使っていた身体を大事に使い、人々の付き合い方を変え、時間を大切に生きていく、楽しい現象だと思わないといけません。
   しょうもないことにこだわらなくて済む「老人力」もつきます。体が思うように動かないからこそ、周りから慕われ、いたわってもらえます。時間を楽しんで生き、そして消滅していくというのは、うれしいことだと思います。
  人というのはやっぱり一人では生きられないもので、周囲があってこその存在です。自分の体や精神が変わっていく老化とともに、周囲と影響を及ぼし合うことが、生物としての、社会動物としての人間です。それを失ってはいけないと思います。

―なぜ人間は老いや死を恐れ、不老不死を昔から目指してきたのでしょうか。
 ◆ 言葉を持ったからです。言葉によって作られた物語の中で生きることになってしまったので、人は死を前提にして、その期間をどう生きるかが問題になりました。人間以外の動物はそんなことこだわっていませんよ。
   現実をあるがままに生きていて、未来の自分がどうなっているかなんて考えたことはないと思います。


―技術の発展は止まりません。どうすれば良いでしょうか。
 ◆ 生命倫理の規定をどんどん出さなければいけないと思います。急速に進展する技術は、社会に大きな衝撃を与えます。先を読んで倫理規定を作っておかないと、とんでもない適用事例が出てきます。例えば、私が日本学術会議の会長をしていた
   ときに、倫理的に禁じられている、遺伝子操作を施された赤ちゃんの誕生が中国で明らかになりました。技術自体の発展は抑えられなくても、技術を応用することに対する倫理を作らなければいけません
    そのためには、「人間とは何か」という哲学が必要です。生物学者、歴史学者、哲学者、社会学者、芸術家などが集まり、分野を超えて未来を語り合うべきです。
   日本は世界一の長寿社会で、高齢化問題に関しては先進国です。技術を発展させて老化を食い止めるという話ではなく、老いとは、死とは何か。それがなぜ人間の社会にあるのか。その意義を日本で改めて議論しないといけないと思います。
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 同じ<神への挑戦―人知の向かう先は?>シリーズには次の記事も。投資ビジネスとして不老技術が注目されている現実にゾッとするのは私だけじゃあるまい?と期待するが・・・・。
不老不死に投資が過熱
 人類が夢見てきた「不老不死」が、現実に近づいている。この技術を確立させ、世に送り出そうと、米国では多くのベンチャー企業が登場。投資が過熱している。例えば、人間の健康寿命を10年延ばすことを掲げるレトロ・バイオサイエンシズは、
 対話型AI「チャットGPT」を開発した米オープンAIのサム・アルトマンCEOらから、1億8000万ドル(約270億円)を調達した。

 ベンチャーキャピタルファンドを運営するファストトラックイニシアティブ社の安西智宏代表パートナーは「米国では投資市場が悪くなる中で、老化研究では1社当たり1億ドル単位の投資が散発的にある。米国の西海岸では、ITで当てた次の投資先
 として、老化が注目されている」と見る。特にアルトス社は、巨額の資金と一流の研究者を多数集めていて、従来のアカデミアではできなかった研究体制ができているという。
   投資家の本心について、ある老化研究者は「彼らに今の高齢者のためという感覚はないと思う。将来的に抗老化技術を享受できる裕福で元気な高齢者が増えることで、そこに新しいビジネスが生まれると見ているのだろう」と明かす
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春めいて 詩を想う

2024-04-04 11:52:28 | トーク・ネットTalk Net
* 三寒四温を繰り返しながら春に移るパターンは気候変動が進む中でも同じようで、ホッとする。桜の開花や満開予想をこぞって伝える気持ちは分からなくもないが、正直シラケもする。

* 短歌教室に参加し始め、書架にある限りの歌集を机上に並べてみると、自分の好みがハッキリする。万葉集・山家集・新古今・和漢朗詠集・斎藤茂吉・若山牧水・寺山修司・永田和宏・河野裕子。
  万葉集に関しては「萬葉百歌(山本健吉/池田弥三郎)」並びに「英語で読む万葉集(リービ英雄)」両書の秘める含蓄に唸っている。 
   また、<萬葉・古今・六代・新古今>から恋愛名歌を選び、歌集ごとに自論を述べた『恋愛名歌集(萩原朔太郎)』も素晴らしい。

  俳句は短歌ほど関心が無いのだが、ドナルド・キーン氏著「英文収録:おくのほそ道」は、上記リービ英雄氏の著作と合わせ読めば、英語ネイティブスピーカーの日本語音感がわかり面白い。
  同時に英語の語彙を豊かにしてくれるので貴重だ。
   明治以降の詩人で好きなのは、島崎藤村・萩原朔太郎・高村光太郎・谷川俊太郎。こうして短歌の好みと並べてみれば、好きな詩の言葉に自分の傾向があるのだろう。

* これまでに創った短歌を眺めていると、(抒情)(叙景)(羇旅)(挽歌)が多く、相聞歌めいたものは皆無。若い頃の作は、明らかに生活ストレスに発したモノばかりなのに苦笑するしかない。
  歌作を再開した最近の傾向は、諸行無常、人生回顧や黄泉の世界を想うもの、先に逝去した友を想うものが多くなっている。それは年齢相応なのだろう。
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