まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

二つの公共空間

2021-06-08 23:09:43 | 建築・都市・あれこれ  Essay

東京都の閉鎖要請が解除になったので、映画を見ようと立川に出かけました。久しぶりの立川駅前の賑わいに驚きました。大都会のような店と人の多さです。映画は満席で見られませんでしたが、そのおかげ?で二つの全く違う質の公共空間を体験することができました。

ひとつは昭和記念公園の入り口ゾーン。ここは無料。大勢の人たちが緩やかな階段状の斜面に腰かけています。いい勾配と平面の曲線です。ゆったり感と、場を共有している感覚がうまくバランスしています。

隣には伊藤豊雄さん設計の花みどり文化センターがありました。建築的、構築的な要素と、緑の自然的要素のバランスがいいところに来ているように思えます。円筒形の柱やエレベーターは決して緑と「なじむ」ことはないでしょうが、独立してお互い邪魔しない「共存感」がありました。

 

中のゆったり加減もいいです。贅沢に空間を使う公共建築の良さだと思います。

二つ目の公共空間は、正確に言うと「公共」ではなく民間のショッピングセンターということになるのでしょうか。しかしここでも、ゆったり感と、場の共有感がうまく作られています。もちろん本家の公共空間のような低密度ではありませんが、それでもゆとりを感じさせるだけのいい意味の「無駄なスペース」が十分取られています。

この緑のスペースが、駐車場の上に載っているため、階段で1層分登らないと到達できないので既存のまちから切り取られているという感じはあります。とはいえ、ショッピングセンターのアトリウムやモールとは違う、開放感や自由さのありそうな(実際にあるかどうかはわかりませんが)雰囲気を感じさせます。大変巧みなデザインだと思います。

自然発生的な商店街や時間とともに発生する縁日の賑わいにある自由さ、開放性と、ショッピングセンターの賑わいとは違うということはよく言われますが、ここまでくるとどうなんでしょうか。公の公園などの民間活用などが推奨されていますが、民間の側ではもうここまで来ているんですね。勉強になりました。

映画はつぎの楽しみにします。