まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

広い多摩川、二ケ領用水取水堰のおかげ

2024-05-23 18:54:27 | 建築・都市・あれこれ  Essay

久々に夕方の多摩川散歩。川では大きな鯉を発見。子供が小さいころにはこの辺りに釣りに来たりしたのを思い出します。まさか自分の事務所がすぐ近くに引っ越すことになるとは思いもしませんでした。このあたりは水量が多く、川幅も広い!ちょうど二ケ領用水の取水堰があるおかげです。

下の写真のには取水堰の塔(と呼ぶのでしょうか?)も映っています。

もう20年近く前になりますが、二ケ領用水のあたりを見学したときの写真を引っ張り出します。こういう施設は実に美しいですね。「機能的なものは美しい」という教条!もこういうところでは、頷けるような気もします。

用水沿いは、遊歩道として整備されています。

おそらくこういう風景は今も変わっていないはずです。

 

農業用水としても使われているように思います。機能的なものでありながら、町に潤いを与えるものでもあるんですね。

そういえば思い出しました。京王多摩川駅前の開発計画では、府中用水に蓋をかけることになっていました。駅前の小広場で市が計画の説明会をしていたので、これだけ環境意識が高まり、SDG’sの時代に、用水を暗渠化するというのは、時代錯誤も甚だしいという意見を申し上げ、メモも残してきたのですが、まったくスルー。残念ながら、市民の意見を聞くための説明会ではなかったようです。熊本の方でも最近ありましたが・・・。

 

 


映画のまち調布: 模型展示

2024-01-29 20:06:52 | 建築・都市・あれこれ  Essay

「映画のまち調布」では、シネマフェスティバルが開催中。ということで、図書館のある建物の1階ロビーに大きな模型がありました。初代ゴジラ以来、円谷監督作品の模型を作っておられた井上泰幸さんという方をフィーチャーしての展示です。

私の世代には懐かしい「初代ゴジラがまちであばれて壊した建物」なんだろうと思われます・・・と一度書きましたが修正します。後日展示パネルをよく読むと「ラドンが壊した福岡岩田屋本店(福岡市天神)でした。

 

1/20スケールの模型だと思います。井上さんはもうお亡くなりになっているので、別の方の作品でしょう。よくできています。岩田屋本店は1936年竣工、当時はやったアールデコスタイルが基本でしょうが、軒の優しい曲線ラインは表現主義的な雰囲気もあります。基壇部のダブルコラムなど少し様式建築の面影もあり、ゴシックの香りもうまく取り入れているように思います。新宿伊勢丹を彷彿させます。

 

私の事務所にも模型づくりの達人が何人か、いました。私たちが、設計のデザイン検討のためにつくる1/20スケールの模型はほとんど部分模型です。したがってもう少し詳細な部分まで表現しますが、こんなに大きな模型はつくたことがありません。でもわが事務所の達人たちも、時間さえあればこれに迫った全体模型を作るだろうな・・・などと考えながら、横を通り過ぎました。

そうすると、なんと横にも模型がありました。撮影用のセットとして模型を作る前に、全体の確認のためにつくるとのことです。このスケールでカメラアングルなどを検討するのでしょうか。

 

岩田屋の建築もそうですが、この模型たちも素晴らしく手の込んだものです。思いが伝わってきます。いい展示だなあと思いました。ただ・・・・

残念なことに模型が置かれている建物は、正直言って、単純な箱としか呼びようのないものです。この模型の建築のようにきちんと丹精を込めてデザインされていれば、もっと親しみをもてるものになっていたでしょう。もちろん、アールデコでやれというのではありません。モダニズムで結構ですが、考え抜かれた空間構成や、こだわりのあるディテールが欲しいですね。自戒を込めて・・・。

高谷時彦

建築・都市デザイン

Tokihiko TAKATANI

architecture/urban design

設計計画高谷時彦事務所

 

 


超高密度都市空間に織り込まれた豊かな公共空間

2024-01-05 19:48:10 | 建築・都市・あれこれ  Essay

事務所を自宅から自転車でいける距離に移動して以来、都心に行く機会がめっきり減りました。以前は、事務所が文京区だったので、毎日新宿、市谷、神保町と、都心のど真ん中を通勤していたことになります・・・ということで昨年暮れに、久しぶりの有楽町。TDA(NPO景観デザイン機構)の忘年会です。会場が、東京国際フォーラムの隣だったので、少し早めに行って、例の大アトリウム見学。

なかなかの迫力です。

やっぱり、渡辺さんの構造はすごい。

昨年も多くの方々がなくなっていますが、この建物を設計したラファエル・ヴィニョーリも確かその一人です。

50代の作品です。大中小の巨大なホールを狭い敷地に詰め込むという、恐ろしく過密なプログラムでしたが、よくこれだけリッチな公共的な空間を提供できたものだと感心します。国際コンペで選ばれた案が実現したわけですが、選んだほう、審査員の槇さんの目の確かさにも、改めて感動です。

高谷時彦

建築・都市デザイン

Tokihiko TAKATANI

architecture/urbandesign

 


いけばな龍生展2023を楽しみました

2023-11-26 19:57:34 | 建築・都市・あれこれ  Essay

「いけばな龍生展 植物の貌2023」に行ってきました。ここ数年の会場は渋谷ストリームです。家元の壮大な作品を楽しみにしていますが、今年も期待を裏切ることはありませんでした。私は生け花には全くの素人ですが、一つのアート作品として楽しんでいます。作品の写真を載せたいところですが、まずいでしょうから、会場近辺の写真を数枚計上。

山手線と高速の交差するあたり。

ここ数年の渋谷の変貌ぶりは何とも形容のしようがありません。井の頭線渋谷駅にはかつての終着駅の雰囲気は残っていますが、そこから銀座線に向かうコンコースや、東急東横店、JR玉川口の改札など見慣れた風景は全くなくなってしまいました。

 

100年に一度の大規模再開発だそうです。そこには世界都市東京のエネルギーを感じる人もいるでしょうし、隘路に入った資本主義が新しい出口を求める、必死の形相を見る人もいるでしょう。

どちらも当たっているのでしょうが・・・。

帰りには、井の頭線と京王線の出会う明大前で途中下車。久しぶりに外に出てみました。ラーメンをいただいて、帰路につきました。

 

高谷時彦

建築・都市デザイン

Tokihiko TAKATANI

architecture/urban design

 

 

 

 

 

 


都市デザイン研究体『日本の広場』再読

2023-11-11 15:39:39 | 建築・都市・あれこれ  Essay

久しぶりに事務所(Studio TAK)をかたづけようとすると、いつものように本や雑誌に目が惹きつけられて、片付けの手が停まってしまう。私のサボリ癖ではなく、本や雑誌が私を呼ぶせいである。今回、片付けの邪魔をするのは『復刻版 日本の広場』(都市デザイン研究体 2009 彰国社)。

都市デザイン研究体は伊藤ていじのもとに集まる研究者たちのグループ。1960年代に3つの本(雑誌の特集号)を出している。

『日本の都市デザイン』1961、『日本の都市空間』1963、『日本の広場』1971。

どれをとってもエポックメイキングであり、またエキサイティングな都市デザイン論の展開がある。都市デザイン研究体のメンバーはその都度変わっているが、常にその中心にあるのが伊藤ていじ先生。民家研究の第一人者ということになるのだろうが、そこに収まらない建築評論、あるいは時代批評の鋭さが多くの人の耳目を集めるのだろう。

『日本の広場』では西欧の広場と違う、独自のコミュニティがときに顕在化する場所として日本の広場をとらえている。

そこでは「広場化という主体的な行動を通して、宗教的・社会的・経済的・政治的コミュニケーションの節点として利用される人工のオープンスペース」として日本の広場を定義する。その視点に基づいて、様々な場所縄文の空地からお寺の境内、そして銀座ソニービルのコーナープラザ迄がその広場化の過程とともに分析される。見事である。

一方、きちんと定義して、独自のものとして日本の広場を記述していこうという姿勢に貫かれているものの、例えば現代建築家の作った広場を分析する文章に「ほんとうの意味での広場」には成長していないという記述があるように、「西欧の広場」と比較する視点もまだ見え隠れする。ならば、素直に比較の視点をもう少し真正面に据えてもいいのではないか・・・などという思いもある。

しかし、いい本です。今これだけの質の高さを持つ本がどれだけあるのかなとも思う次第です。

高谷時彦

建築・都市デザイン

Tokihiko TAKATANI

architecture/urban design

設計計画高谷時彦事務所