守礼の邦

　この邦へ来て一年が経過した・・・

　この邦の民は、男女ともに背が低い。私も１６０ｃｍ未満で大きくはないのだが、周りの人々から見るとここへ来て急に背が伸びたような錯覚に陥る。それはきっと、この邦の民が縄文人である証なのかもしれない。我々大和民族は、後に大陸から渡って来た弥生人なんだろう。果たして縄文人は弥生人より背が低かったのか・・・？と追求されると困るのだが。

　この邦の民は、争いごとが嫌いである。特に、他人と比較することを好まない。そのためか、競争心が無い。それはそれで良いことなのかもしれないが、シゴトにおいては、内地の人間からすると、さぼっている、やる気が無い・・・遅い、いい加減・・・とマイナスイメージで取られてしまう。特に、県外に出たことの無い民は、このことに気づいていない。

　この邦の民は、運転がお世辞にも上手いとは言い難い。結論を言えば、運転の仕方を知らない。特にルールを守らないバイクが多すぎる。ようやく、８月１９日、バイクの日にあわせて県警が取り締まりに乗り出したが、あいかわらず、信号待ちをしている私のクルマの前に昨日も４台のバイクが並んだ・・・・

　この邦の民は、意外にも恥ずかしがり屋である。それは男女を問わない。でも、本当は情熱的・・・いや、熱狂的、と言った方がマッチする。先日、甲子園でこの邦の代表校が逆転劇を演じた。平日金曜日の真っ昼間であるが、誰しもシゴトをそっちのけでテレビに釘付け・・・この時間帯は高校野球オンリー。当然、電話もかかってこないし、平和な時が流れていた。聞こえてくるのは、テレビの前の大歓声・・・今日は決勝、また、サウナでオバサマの裸踊りを見なければならないのか・・・と思うと苦痛である。

　この邦の民は日本の暦ではなく、中国の暦を使っている。その証拠に、お盆と言えば内地は８月の１５日、その前後１日はふるさとへ帰省するが、この邦では、お店は休まない、というか、会社そのものが休まない。お盆は旧盆と言って、旧暦を使用する。旧暦だから、毎年変わる。ちなみに昨年は９月２日であった。今年は、ちょうど今日から３日間・・・ふるさとに帰って高校野球決勝戦を見る人は多いだろう。

　この邦には四季が無い。あるのは二季だけ・・・だが、ここ最近の異常気象で年がら年中同じような気候になってしまった。ちなみに、「今、何月だっけ・・・？」ってホンキで考えてしまう今日この頃である・・・

　四季が無いのは、四季のある邦に育った者として寂しいことである。ことであった・・・
だが、考えてみれば、こんな過ごしやすい邦は無い。一年を通じて、一日を通じてほとんど気温の変動が無い邦・・・思えば、我々は今までなんて過酷な気象条件下で暮らしてきたのだろう・・・特に気象条件が厳しいのは九州である。九州の冬があんなに厳しいものだとは北海道生まれの私には想像がつかなかった。暑くて寒い邦・九州・・・

　この温暖な気候に慣れ、特に二回目の夏をこの邦で迎え、吹く風のあまりの心地よさに朝からこの風の下でビールを飲む喜びに思いをはせる時・・・この邦で余生を迎えよう、そう思っている自分がいた・・・