『ぼくの交友録』 岡井隆(ながらみ書房 2005年刊)から
こうした、次々におきる球つき現象というか、人と人との交遊(仲よしばかりではなく、相当にはげしい対立もする)の連鎖というか、それが、イベント(行事)の形をとったり、本の出版の形をとったりするのだが、その中に混って作品を作ったり議論をしていると、本の出版とかイベントはあくまで結果ということがわかってくる。
大事なのは、同時代の詩歌人(韻文家といってもいいが、現代詩人も含めての意味でつかう)と、そこで相見〔あいまみ〕えるということである。相手が、一首の歌、一句の俳句、一篇の漢詩について、どんな眼をして、どんな挙措と共に、どんな言葉で、それを批評するか。その批評について、ほかのメンバーがどう絡んでいくのか。それが大事なのである。そこで自分が、どんな作品をつくって提出したのかということさえ、忘れ去られてしまう。対立し、妥協し、また反転して自説に立てこもったりするさまは、その場にいたものだけが知っている。その中から、自分の現代の文学状況についての漠然とした印象や感想がうまれ、それが自分の作る作品や書く批評に影響して来る。
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さまざまな会や集いを主催し、参加してきた、岡井隆の言葉。
会とは、批評の内容だけがすべてではない、ということ。
むしろ、その過程に参加することこそが、自分の血肉になるのだということ。
当たり前なのだが、正直、見過ごしていた。
結社、同人等に悩む人へ、鍵の一つがここにある。
無論、自分に対して言っている。