2012/8/6(月)
跳躍の選手高飛ぶつかのまを炎天の影いきなりさみし
(『空には本』 寺山修司)
ランナーをくるむがごとく紫のゆらめきがあり、また通り雨
8/7(火)
娘のような年の子でも、けっこう話題は見つかるものだ。
貨物車の架車きしみつつ機動車の背を越す勢いぞ、夏薊
8/8(水)
大家さんが、繁茂する蔦を根こそぎ刈り取ってくれた。
無くなったら無くなったで、ちょっと……と言うのは贅沢。
ベースボールキャップの鍔を南西にぐいと向け直せば銀の海
8/9(木)
オリンピックは、なぜ真夏にやるのだろう。
蝉しぐれ葛のごとく四肢へ巻きつけば捻れてそこここにバグ
(葛=かずら)
8/10(金)
食欲もそこそこ、眠りもそこそこなのだが。
歩一歩ごとのめまいはさなきだに震えひろがる夜の夏のなか
8/11(土)
日本のインテリは「荒野」「曠野」などの言葉を好んで使い、
これを口にする時、涙を流して喜ぶ癖があるが、
現実の「荒野」とは、まず第一に大変カユい所である。
(『日本の川を旅する』 野田知佑 新潮文庫)
ページ繰る歌集に縷々と挿まれてゆく蝉時雨 羽虫 木漏れ日
8/12(日)
「人生において大事なことは、勝利ではなく、競うことである。
人生に必須なのは、勝つことではなく、悔いなく戦ったということだ」
(ピエール・ド・クーベルタン男爵)
参加することに意義がある、と言ったのではなく。
払暁の六畳の辺にござを敷き膝抱くあれは船ではないか