はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

一日一首

2012年09月05日 18時22分51秒 | 日詠短歌

2012/8/6(月)
   跳躍の選手高飛ぶつかのまを炎天の影いきなりさみし
     (『空には本』 寺山修司)

 ランナーをくるむがごとく紫のゆらめきがあり、また通り雨


8/7(火)
   娘のような年の子でも、けっこう話題は見つかるものだ。

 貨物車の架車きしみつつ機動車の背を越す勢いぞ、夏薊


8/8(水)
   大家さんが、繁茂する蔦を根こそぎ刈り取ってくれた。
   無くなったら無くなったで、ちょっと……と言うのは贅沢。

 ベースボールキャップの鍔を南西にぐいと向け直せば銀の海


8/9(木)
   オリンピックは、なぜ真夏にやるのだろう。

 蝉しぐれ葛のごとく四肢へ巻きつけば捻れてそこここにバグ
 (葛=かずら)


8/10(金)
   食欲もそこそこ、眠りもそこそこなのだが。

 歩一歩ごとのめまいはさなきだに震えひろがる夜の夏のなか


8/11(土)
   日本のインテリは「荒野」「曠野」などの言葉を好んで使い、
   これを口にする時、涙を流して喜ぶ癖があるが、
   現実の「荒野」とは、まず第一に大変カユい所である。
          (『日本の川を旅する』 野田知佑 新潮文庫)

 ページ繰る歌集に縷々と挿まれてゆく蝉時雨 羽虫 木漏れ日


8/12(日)
   「人生において大事なことは、勝利ではなく、競うことである。
    人生に必須なのは、勝つことではなく、悔いなく戦ったということだ」
    (ピエール・ド・クーベルタン男爵)
   参加することに意義がある、と言ったのではなく。

 払暁の六畳の辺にござを敷き膝抱くあれは船ではないか