はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

発作的奈良京都紀行(1)

2011年04月11日 19時34分55秒 | たんたか雑記
 三月から四月にかけて、仕事や本来仕事でない仕事が見事に重なり、ろくに買い物すら出来ない日々が続き、ついに体内で何かが「ぶつん」と切れる音がしました。

「そうだ、京都と奈良行こう」

 で、奇跡的に丸一日時間が空いた(と言うより半ば無理矢理もぎ取った)四月九日土曜日、発作的に始発の新幹線に飛び乗りました。
 関西におられるお友達にも、そういった理由で連絡も出来ませんでした(すぎんさん、ワンコさん、ごめん)。
 京都、奈良に行くのはほぼ二十年ぶり。発作的なのでガイドブックのたぐいも一切持たずの旅立ちです。さて、どうなることやら。

 まず、お目当てのひとつ、奈良斑鳩、法隆寺の夢殿。
 JRと近鉄を見事に乗り違えつつ、やっとたどり着きました。
 あいにく小雨交じりですが、風は無し。かえって風情が増します。
 天候のせいか、宝物が公開時期でなかったためか、夢殿は人影もあまりありませんでした。
 ほぼ正方形の敷地の一隅にひっそりと立つ、満開の枝垂れ桜。
 振り仰ぐ、と言うほど大きくはありませんが、幹が苔生す、見事な古木。純白の花びらが、触れずとも落ちかけていました。
 ほとんど、これに会うために奈良に来たようなものです。

 さだまさしに『夢しだれ』(アルバム「あの頃について」所収)という曲があります。
 ライナーノーツによると、故 山本健吉が俳句仲間との花見の席で角川春樹に
「この花に名はありますか」
と問われ、ぽつりと答えられた、とのこと。
「夢枝垂」
 満開のこの木に、どうしても会ってみたかった。

 正方形のもう一方には、指が染まりそうな桃色の枝垂れ桃。
 挟まれるように、名を知らぬ白い花の桜木が、これも花をたたえています。
 これらの花に囲まれ、夢殿はあくまで静かにたたずんでいる。小糠雨に濡れながら。
 まさに夢のような風景。
 係の人に不審な目で見られるのもかまわず、数十分間見惚れていました。


   夢殿の花の枝垂れに掌をやれば付き来る弁の白さに詫びる
   (弁=ひら)