はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト 050:萌

2006年12月17日 14時02分17秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
 投稿歌に良く出てくる「萌え~!」というのが、正直よく分かりませんでした。
 で、職場で聞いてみました。
 同僚「ほら、最近言うじゃないですか。アニメの主人公だとか、かわいい女の子見て『萌え~!』って」
 私 「ああ、ロ○コンのことか」
…瞬間、職場が凍りつきました。
 どうやら、ロ○コンをソフトに言うと「萌え~!」であることと、「ロ○コン」はまだまだ準発声禁止用語であるらしいことが判りました。恥かいた。
 そんなことはともかく。

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春だから(そんな理由でいいのなら)手足の爪を萌葱に染める
                         (暮夜 宴) (青い蝶)

 萌葱色のマニキュアというのがあるのかは知りませんが、あってもいいですよね。楽しそう。
 あるいは、春の草原で手も足も草の色に染まりたい、ということかもしれません。二句、三句を外して読めば。
 問題は、「(そんな理由でいいのなら)」。これが入ることで、歌のイメージががらりと変わります。
 ( )付きで言われると、これは二義的な問題であるという印象を与えますが、それがかえってこの「理由」をクローズアップさせています。
 「理由」というのは「春」のことのように読めますが、むしろ歌の中には明示されていない事柄のことを指しているのかもしれません。
 それはなんなのか。なんでしょう?これからゆっくりと考えてみます。

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アスパラのひどく困った緑色ワインなくても萌えてあげるよ
                     (ハナ) (象の求愛ダンス)

 アスパラガスの緑を「ひどく困った」と形容したのは、ハナさんがおそらく初めてではないでしょうか。
 うーんでも、困ってるかなあ?このへんは、純粋に読み手の受け取り方の問題ですね。
 あるいは「困っ」ているのは、主体の相手かもしれないですね。
 で、主体は
「いいよ。ワインなんか無くても、盛り上がって(あるいは華やかにきれいになって)あげるよ」と。
 それとも、「困った緑色」のアスパラガスだけで充分「萌え」られるので、ワインなんかいらないよ、と若干偉そうに(冗談ぽく)言っているのでしょうか。
 アスパラガスたべたい。

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花ひらく萌しを摘んで雨を待つ(死ねない高さのベランダにいる)
                  (ひぐらしひなつ) (エデンの廃園)

 これも、( )のある歌です。
 ネガティブな状況を歌っているはずなのに、不思議と非常に静かで明るい光景という印象を受けます。しかも、通底音としての緊張感。
 ( )の中の語が、主体が考えたことではなく、どこか別の場所から響いてくる別のなにかが発した言葉のようにも思えます。
 「死ねない高さ」というのは初め、飛び降りても死ねない、と読みました。
 でも、だんだん
「花を植えた植木鉢を落として、(それが下の人に当たっても)死なない程度の高さだ」
 という風にも読めてきました。
 あ、いやそれだと「死ねない」にはならないか。下の人=主体と読むと、無理読みになるし。
 もしかして、「死ねない」のは「花」なのでしょうか。
 「花」と「萌」、「摘」と「雨」の印象がそれぞれ呼応し、「ベランダ」がそれをまとめ上げています。