はいほー通信 短歌編

主に「題詠100首」参加を中心に、管理人中村が詠んだ短歌を掲載していきます。

鑑賞サイト 048:アイドル

2006年12月03日 09時39分28秒 | 題詠100首 鑑賞サイト
休日のアイドル 不動の点となりよく笑うけれど動かざる点
                    (わかば) (わかばのうた)

 はじめ、アイドルのポスターのことを歌っているのかと思いました。
 でも、そうすると「休日の」がしっくりこない。「なり」もそう。
 一字あけがあるので、そこから二つに分けて考えてみます。
 前半。休日のみのアイドル。すなわち平日には会えない。つまり遠距離恋愛の恋人?
 後半。「不動の点」が繰り返されている。動かないまま笑っている。やっぱり写真か絵の類か。
 「恋人の写真が飾ってある場所に、休日になると行く」…なんか、意味わからないし不自然だ。
 あ、「絵の中の女性に一目惚れしてしまい、休日ごとに美術館(か画廊など)に通い詰めている」
 こっちの方がまだわかる読みだけど、やっぱり何か陳腐だなあ。「なり」も説明できてないし。
 残念ながら、ここでギブアップ。うーん、くやしい。

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アイドルは残陽の下で足をふる影を棄てようと激しくふる
                    (やすまる) (やすまる)

 もうすぐ暮れる空の下、真っ赤に染まったアイドルが足を激しく振っている。
 鬼気迫る光景です。
 多分、野外コンサートの風景を歌っているのでしょうが、上記の光景が真っ先に頭に浮かんだまま、どうしても離れません。
 放っておけば闇に紛れて、間もなく消えていくはずの影から逃れようと、必死にもがくアイドル。
 女性アイドルならもっと恐ろしい場面でしょうが、頭に浮かんだのは、なぜか男性アイドルでした。
 「影」を「過去」と取っても、「しがらみ」「ダークサイド」と取ってもいいのでしょうが、文字通り〈自分の影〉を足から引きはがそうとしている、と読んだ方が、この歌にふさわしいように思います。

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愛されることしか許されない夜に生まれたばかりのアイドルがいた
                     (内田誠) (その言葉の行方)

 こ、これも難しい歌だ…。
 「アイドル」=「愛されることしか許されない」という図式は、ある意味当たり前なのですが、この歌はそういうことを言っているのではありませんよね。
 誰も彼もが「愛されること」を強要される世界の夜。見方を換えれば、一億総アイドル状態。
 この「アイドル」は、その「夜」に「生まれたばかり」。
 ならば、その子はさらにみんなから愛される〈アイドルの中のアイドル〉か。
 しかし、〈アイドル〉が〈特別な存在〉の別称なら、この世界ではむしろ、誰にも愛されない、愛することしか許されない存在こそが、〈真のアイドル〉と呼ぶにふさわしいのではないか。
 かなり無理な読みだいう自覚はありますが、何度も読み返しているうちに、こんな情景に到達しました。間違っていたら、どうぞご容赦を…。