2012/7/2(月)
『鏡の国のアリス』が書かれたとき、アリス・プレザンス・リドルは十九歳だった。
ひたひたと霧の寄せれば姿見のおもてにひとつ投げられる駒
7/3(火)
冷房は、疲れる。
ゆるゆると藍の締め木にかけられて搾りとられる月の油は
7/4(水)
たぶてにも投げ越しつべき天の川隔てればかもあまたすべなき
(石を投げれば向こう岸に届きそうなのに、まったく……)
山上憶良
鉄橋のいくつも架かる川の面を風がみだらに塗りかえていく
7/5(木)
『鴎外・茂吉・杢太郎――「テエベス百門」の夕映え」(岡井隆)
文人と言われた人たちの織りなし。
積もるとも流れるのだというものもいずれは溶けて時の在処に
7/6(金)
ADSLが故障した。すごく不安に思った自分が、嫌だ。
電話機に張られる糸の片方をどうかささえてください 坂で
7/7(土)
「七月七日に降る雨は、二人の涙『催涙雨』と呼ばれます」
「こんな梅雨時に決めた天帝はいじわるですか」
「旧暦の七月七日は今の八月ごろだったので、いじわるではありません」
(『日本人の知らない日本語』(蛇蔵&海野凪子 メディアファクトリー)
河の面に砂州の産まれるようなきず一夜の雨と風のなかから
7/8(日)
化繊の浴衣、というのも暑そうに見えるが。
左掌に ぱしん ぱしん と水は揺れヨーヨーのゴムよじれるばかり