ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

直接?

2020-11-23 08:51:15 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「聞き取り調査?」11月18日
 『ヤングケアラー「本人に聞き取り」 政府、初調査で方針転換』という見出しの記事が掲載されました。『「ヤングケアラー」をめぐり、萩生田光一文部科学相は17日、政府が今冬に行う初の全国調査では、児童・生徒から直接実態を聞き取ることになるとの見通しを示した』ことを報じる記事です。
 たしかにその方がより的確に実態を把握することができるでしょう。ですから、その方針自体に異議を唱えるつもりはありません。ところで、「直接実態を聞き取る」というとき、皆さんはどのような調査形態をイメージなさいますか。私は、調査員が面接して(コロナ禍ではリモート面接も可)やりとりをするというイメージが浮かびました。そして、相当多くの調査員を確保し、日程調整等の労力が必要だと考え、そんなことが可能なのかと危惧しました。
 ところが記事を読み進むと、『厚生労働省から、学校を通じて児童・生徒に直接アンケートをする方向で検討する』ということなのだそうです。それを本人から「直接実態を聞き取る」と表現するのは、羊頭狗肉、誤魔化しではないかと思うのです。
 学校は様々な調査を行います。子供のことを少なくとも厚労省の役人よりもはよく知っている教員が、調査票を読み、日ごろの言動と併せて、ときには行間まで読み取って、「調査票にはこう書かれているけれど、実際は~」などと良い意味で推理を働かせ、子供にもう一度確認するなどして、調査を進めているのです。いじめの実態調査などもそのようにして行われていますが、それでも多くの「漏れ」が生じているのです。
 学校を通じて、趣旨を説明し、記入の仕方を理解させ、そして回収させる、そんな調査では、見えにくいヤングケアラー問題の実態を把握することは難しいと思います。文科省と厚労省はもう少しこの調査に人手と予算をかけるべきです。具体的には、学校に対して、調査票や把握している家族構成、級友等からの情報などを基に、少しでもヤングケアラーではないかと思われる要素がある子供をすべて報告させ、その子供たちを対象とした聞き取り要員を揃え、聞き取り要員を各学校に派遣し、直接面談して詳細を聞き取る、というような体制を整えるべきだと考えます。
 聞き取り要員は、各自治体ごとに、対象となるのは小中校の児童生徒数の2割と想定し、一人の聞き取り要員が20人から聞き取ると仮定して、教員と教委、首長部局の職員から構成すればよいのです。私の住む区で計算すると、対象となる小中学生は約5000人、必要な聞き取り要員は250人、十分可能な人数です。要する時間も、一人30分とすれば、10時間、1週間で終了可能です。
 ヤングケアラー問題は、子供の学習権を保証するという、教育行政においてももっとも基本的な課題です。ぜひ、本当に役に立つ調査にしてほしいものです。

 

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