ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

孤立感だけでも

2020-11-06 08:38:12 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「認めるだけでは」11月4日
 『声上げぬ子 どう把握』という見出しの記事が掲載されました。ヤングケアラーについての特集記事です。その中に、教員の意識の差についての記述がありました。『教員の間の意識差が「支援の壁」担っていると指摘する。祖母の介護が理由で遅刻してしまう生徒に「介護は遅刻の理由にならない」と指導する教員もいるのが現実だ』というものです。
 たしかにその無理解さは、腹立たしい限りです。では、どうすればよいのかと尋ねられたとき、きちんと答えられるでしょうか。誰でも考えつくのは、「大変だね」などのいたわりの声を掛け、責めないことです。しかし、そんな声掛けだけでは、遅刻は続き、その生徒の学習は遅れるばかりです。それでもよいとするのでは、学校は生徒の学びを保証するという責任を果たせていないことになります。
 いたわりの声掛けに加え、家庭学習の課題を与えて学習の遅れを補うという考え方もあります。しかし、介護に追われている生徒が、他の生徒よりも多く家庭学習の時間をとることができると考えることは現実から遊離しています。また、一人の生徒のために休み時間等を利用して補修を行うというのも、一時的には可能でも長期的にそのための体制を組むとなると、多くの問題が発生しそうです。
 そもそも、休み時間等に他の生徒と切り離して指導を行うということ自体に、その生徒の人間関係や学校生活の質の低下をもたらす危険があります。ヤングケアラーの生徒にとっては、学校での仲間と過ごす時間や人間関係が、数少ない楽しみや生きる力を充足できる時間であることを考えると、学習補償だけの視点から補習を行うことには慎重であるべきです。
 おそらく、正解は一律にこうであると決めつけることはできず、一人一人のヤングケアラーが置かれている状況に応じて、手探りで創り上げていくしかないのでしょう。そしてそれを可能にするために、教委はSSWの配置や勤務時間の拡充を図ることと教員のこの問題に対する認識の深化と意識改革のための研修を充実させることに注力し、学校は状況把握のための校内システム構築と対応マニュアルの整備を進めつつ、全ての子供や保護者に対してヤングケアラー問題についての指導・啓発のための取り組みを全教育課程を通じて位置付けることに努力するしかないような気がします。
 上記のような取り組みでは実効性が薄いと思われるかもしれませんが、そうした取り組みがもたらす「みんな君のことを気にかけているんだよ、君のことを忘れてはいないよ、困っていることがあったらまず話してみて」という雰囲気は、ヤングケアラーの孤独感、絶望感を減らす効果があることは間違いないと考えます。

 

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